コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

CEOと社長は違う人

2014-04-17 15:17:00 | 経済


怖ろしさに身の毛がよだち、グロテスクさに吐き気を催し、人によっては気分が悪くなる恐れがありますので、ここから先はR18の閲覧注意です。

日産自動車の命運 その1・その2
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1091.html
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1092.html

恐かったですねえ。でも、闇株新聞なんて、名前からしていかがわしそうな、という人向けに同様なのを。

ゴーン退任こそ日産飛躍のベストシナリオ
大前研一の日本のカラクリ
http://president.jp/articles/-/11546

血だらけで泣いていましたね。痛そうでしたね、可哀想でしたね。次は、きっとゴーンさんも高く評価するはずのおぞましい「成果主義」について。

STAP細胞会見のリアクションからわかる日本で成果主義がフツーにならない理由
http://wirelesswire.jp/london_wave/201404140650.html?utm_content=buffer6e738&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer

では、口直しに、ゴーンつながりで、お勧め映画を。

ゴーン・ベイビー・ゴーン
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id329920/

監督はベン・アフレック。アカデミー賞を受けた「アルゴ」よりずっといいです。主演は、弟のケイシー・アフレック。兄に負けず劣らぬ好俳優です。

(敬称略)

友だちのビットコインの話

2014-03-02 18:02:00 | 経済
ジェーン・フォンダとか中森明菜とか、含み綿をしたような口許に弱いのだが、同じように革命とか変革とかいう言葉にも弱いわけだ。誰がって? いや、友だちがさ、友だちの話だよ。

ビットコインは社会革命である
――どう評価するにせよ、まず正確に理解しよう

http://diamond.jp/articles/-/49033

ビットコイン会社が破綻したってんで、「それみろ!」とばかりの報道だが、「信用の裏づけがない」とか「犯罪の決済に悪用」とか「投機の対象に」って、ドル円ユーロだってずっとそうだろ! とTVに向かって毒づいていたので、「さすが、野口先生!」と少し胸が腫れた、いや晴れた。

以前、ビットコイン沸騰のときのニュースで、総合格闘技の先生が指導料の代わりに受け取ったビットコインが、一年経ったら「時価1千万円」にもなって、「どうしたものか」と困惑しているケースが紹介されていた。暴落したおかげで、先生、ホッとしているだろうな。

でも、ビットコインは夢のグローバル通貨なんだよね。ビットコインの原アイディアを提出した「ナカモト サトシ」は、「1つの電子コインは、連続するデジタル署名のチェーンと定義される」としたが、野口先生は、「これは約束手形の裏書譲渡と同じ」と身近な喩えを出した。

ビットコインとは、たとえばパチンコ屋で勝ち玉と交換に受け取るケースに入ったボールペンやライターのようなもので、それを現金に代える景品交換所みたいなものが、今回破綻した取引仲介会社の「 マウントゴックス」だろうと、より身近な喩えで理解していたが、遠からずといえども当たらずだったようだ。いや、友だちの話なんだがね。

(敬称略)

おもしろくってためになる話

2013-12-10 15:32:00 | 経済
青少年少女に拡散希望。とくに就活中の学生さんに。英語によるプレゼンに興味があるビジネスマンにも。そのスピード、すべらないジョーク、抑えた主張とひかえめな自分語り。どうしてそんな風に話せるかと考えていけば、結局、話すべき内容があるからなんだと思い至ります。

坂 茂: 紙で出来た避難所


(敬称略)

人の懐を勘定してみる

2013-11-23 04:07:00 | 経済
「なんと1億4千万円!」と巨額に驚く声もあるが、そうだろうかと首を捻りながら、ちょっと計算してみました。

テレ朝プロデューサー、1億4千万着服・解雇
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20131120-OYT1T00961.htm?from=main5

1億4千万円÷10年間÷12か月=約116万円

平均すると、月116万円の着服です。下請け会社5社程度を使っていたとして、一社あたり23万円くらい。それも一度の請求ではなく、数回に分散して請求させるのが普通ですから、一回当たりの着服金額は10万円を切るかもしれません。

「高額な服飾品」「旅行」など使途を供述しているようですが、それはつまり、家を建てたり、車を買うことはできなかったことを物語っているわけです。とはいえ、高級ブランドファッションを買い込み、海外へ家族旅行でもすれば、100万円などすぐに消えるでしょう。

TV局社員の高給は有名ですから、45歳のプロデューサーなら年収1000万円超のはず、その恵まれた待遇を棒に振るようなことをどうして? 誰しも抱くそんな疑問に答えて、着服横領なしの場合も計算してみましょう。

給与額面1200万円として、なんだかんだ天引かれて手取りは多めに見積もって900万円強くらいですか。その手取りから、住宅ローンや車の維持費、子どもの教育費など毎月の支払いのあれこれを引くと、手元に残るのは700、800万円ほどではないでしょうか。

月に使える金はおよそ60~70万円くらいです。奥さんが多少派手好きで、すき焼きなら牛肉に7、8千円、ワインがどうの、お友だちの誕生会にお呼ばれしているのと、2か月に1度くらい高めの衣服や宝石でもねだられたら、そうそう貯金できるような月収ではありません。

また、TV局のプロデューサーなら、「仕事のつきあい」で飲み食いの機会は当然あります。銀座・赤坂・六本木、一人で入っても万札で釣りが来る店などありません。5度はたかっても、1度くらいは払わなくちゃならない。部下に奢るときもあるでしょう。

ほかにも、こういう御仁なら、たいてい女と博打が得意な人が多いので、そっちも万や十万円単位で金が出ていくでしょう。もう金は出ていく一方、まわりは手を出すばかり。給料だけでは赤字です。どこかで何かで金をつくるほかありません。

月100万円程度の着服では、じつは「資金繰り」は苦しかったのではないか。露見して、これで「自転車操業」から抜けられると、案外、ほっとしているかもしれません。いったん上げた生活レベルは、じたんだ踏んでも下げられない。その過半が見栄消費によって構成されているからです。

TV朝日のアナウンサーが、「視聴者の信頼を裏切る結果となりお詫び申し上げます」と頭を下げていたが、会社の金を着服横領したのが、視聴者の信頼とどう関係するのか、よくわかりませんでした。

TV業界について多少知っていますが、昔からこの手の話はよく聞きました。というか、どの業界のどんな会社でもそれなりの地位の人には、大なり小なりこの手の話はつきまとうものです。また、多少なりともそれに手を染める人が多いのも事実です。

私利私欲だけでなく、会社のため、派閥のため、仕事のためという名分の下に、「裏金づくり」という公然たる着服も珍しくありません。「氷山の一角」とよくいわれますが、じつは金平糖のように角だらけ、たいてい見て見ぬ振りではないかと思えます。

「ならば俺も」となるのは人情ですが、このプロデューサー氏はやり方がまずかった。もっと構造的に着服している場合が、一般的ではないでしょうか。たとえば、パクッた金を上司や同僚にも回すのです。これなら、共犯なので露見しにくいものです。

その場合は、1億4千万円なんて端金では済まないが、上司への付け届けが効いて役員にでもなれば、もっとド~ンと抜ける機会はいくらでもあるわけです。間違って社長にでもなれば、新社屋建築の際には建設会社からのリベートなどが期待できます。



とまあ、ここまでが前置き。ここからが本論です。

このプロデューサー氏はたぶんやり手です。強気な態度と弱気な照れ笑いが同居する、ちょっととらえどころのない感じがあります。人の心の機微がわかり、何気ないひと言を漏らし、それが周囲の胸を打ったりします。

露見に怯えて会社にへばりつきますから、仕事は大車輪です。破滅の際を歩いていますから、多少の仕事の責任やリスクを負うのはさほど気にしません。そのくせ、気づかれてやしないかと他人の表情ばかり盗み見ていますから、当然、何を考えているのか観察には長けけいます。

快活を装って懊悩を秘し、全知全能を傾けて日々を過ごしていますが、それに満足感を覚えたり、誇ったりは爪の先ほどもありません。善悪や正邪を越えていますから、日常の思索は人生の意味や良心の有無にまで及ばざるを得ません。

小さな嘘と言い訳探しから、宗教的探求に近いところまで、その思考の幅は広いのですから、人には謙虚になり、ときに深く重い言葉が自然に口をついて出ます。はじめからそうなのではなく、悪事を働き続けることで、彼はそうなったのです。正気を失って悪事に走り、悪事を通してぎりぎりの正気を保っているのです。

そういう人物は、一種の妖気に包まれていて、けっこう魅力的に見えるものです。惜しむらくは、香川照之の大和田常務には、陽気で人情味のある悪人の魅力と妖気が不足していました。

じつは半沢直樹より、大和田常務の方が魅力的だし、たいていの男は密かに憧れているものです。また、会社や社会に貢献しているのも、じつは半沢直樹より大和田常務であることを知っています。大和田常務のような、「決断と実行」の人が上司だったら、どれほど業績も上向くかと思わぬ人はいないでしょう。

そしてプロデューサー氏のような、どこにもいる小和田たちは、溜め込んでいる莫大な会社の内部留保を、悪事を通じてとはいえ、せっせと社会に還元・還流させているのです。資本主義は金が滞留することを許しません。

年間1000万円×100万人=10兆円!

あるいはこの数倍以上の金額が着服横領されているかもしれません。こうした無税の巨額資金がどれほど日本経済を潤し、日本資本主義を活性化させているか、それを思えば、口惜しくて夜も寝られません。あっ、もう朝だ。



フライ級からからはじめてスーパー・ウェルター級まで6階級を制覇した、フィリピンの英雄マニー・パッキャオです。ボクシング興行史上、最高額のギャラーを稼ぎますが、フィリッピンにジムと自宅を持ち、寄付も盛んに行ってマネーを還元していますから、マネー・パッキャオと皮肉られたことはありません。

ホットモットイエモット!

2013-10-31 06:05:00 | 経済
このところ、朝日新聞にスクープが続いている。

日展書道「篆刻」、入選を事前配分 有力会派で独占
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131030-00000006-jct-soci

みのもんたの次男逮捕や阪急阪神ホテルの食材偽装を追及するなら、同様に不正審査と金まみれの日展のジジイどもに謝罪記者会見を迫るべきだろう。

ヤクザの自動車ローンを組んだことで、歴代頭取に役員報酬の「自主返上」を発表したみずほ銀行のように、日展の理事長や常務理事など幹部に報酬の「自主返上」を、日本芸術院会員は「年金辞退」を、文化功労者や文化賞などに「叙勲の返上」などを迫るのは、当然のことではないか。

日展審査で「不正発覚」と朝日スクープ 美術関係者「あ~あ、そこは秘密ってコトだったのに」
http://www.j-cast.com/2013/10/30187698.html

日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5科のうち、書科の石に字を刻む篆刻(てんこく)部門で、会派別入選数の配分表と手紙という具体的な証拠を朝日新聞は入手したわけだが、ことはもちろん書道界だけにとどまらず、日本の美術界全体に及ぶと読める。

芸能人の趣味の絵が入選や受賞する二科展以上に、日展のコンテストとしての権威はとうに失われていたようだが、組織的な不正審査だけでなく、新聞マスコミを含む構造的な腐敗を支える集金システムにまで、はたして追及は及ぶだろうか。



亡くなった父は、仕事を辞めた後、70歳を過ぎてから書道をはじめた。「新聞の公募展に入選した」と嬉しげに紙面を見せられたことがある。「将来は自宅でささやかな書道塾でも開ければというのが、今のところの夢だな」と父は語った。

塞ぎがちだった父の明るい様子を喜んだが、素人目からみても、父の書はとても巧いとは思えず、他の入選作にも感心しなかった。地方面とはいえ、一頁全面を埋め尽くしていた講評付きの入選作発表の紙面は、書道団体の買い切り広告に思えたが、それは黙っていた。

「たいしたもんじゃないか」と母に水を向けると、「そうだね、お父さんにそんな才能があったなんてね」と笑顔を浮かべた。それに照れるように、父が「でもな、けっこう金がかかるんだよ」と苦笑いしながらつけくわえた。母はうつむいていた。

父の机には、高価そうな書道の本が何冊も並び、高価そうな筆が何本も掛かっていた。父も母も気づいていたし、知っていたのだと今になって思う。老後の暇つぶしに趣味を持ち、日々の楽しみを見つけることはよいことだ、という通念に振り回されていることを。

TVドラマを視て、個性的な俳優や演技に接すると、「一風変わった芸風だな」というのが癖だった父。「一風変わった」が気の利いた言い回しだと思っていた、文化芸術にほとんど興味関心がなかったはずの父にとって、書道はひとつの投資だったのだろうと思う。

株式や債券などの金融商品と同様に、家元制度も投資とリターンで成り立つ。違いがあるとすれば、金融商品の場合、企業や市場など投資情報について透明性が担保されているはずだが、家元制度にそれはない。あくまでも民間の愛好者が集うものだからだ。

リターンについても、家元制度では金銭ばかりではなく、名誉や褒章という「人生の夢」に重きが置かれるところが異なるだろう。投資対象とリターンのいずれもが不透明だが、文化芸術に価値を見出す者には十分な価値を持つ。その限りでは、家元制度に何の問題もない。

問題は、日本芸術院や文化功労者、文化勲章など、国の文化行政が、家元制度の劣化コピーの頂点を形成していることだろう。民間の権威であるべき家元が、国と公共を背景として組織的に老人たちを囲い込み、その老後の蓄えを吸い上げる仕組みを作っていることだ。

権威も金も二重取りとは業つくだし、不正審査で応募者を裏切ってきたなら、せめて「家元」たちは、国民の税金が原資である年金や報酬、また勲章などは返上すべきではないか。欲が深すぎるというものだろう。私の父からだけでも、50万円以上はせしめているのだから、

追記:父の書道も数年は私の年賀状の宛名書きに役立ったが、その父もやがて「筆まめ」を使うようになった。

(敬称略)