コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

ローマ以来市民は奴隷を必要とする

2013-10-23 22:14:00 | 経済
シリアの空爆がとりあえず避けられ、イランが国際社会へ復帰しそうなわけで、おかげでエジプトのクーデターと反政府市民の衝突がどうなったか、とんとニュースが入ってこない。それはともかく、エジプトが中東だということに、いまだに合点がいかない。

「犬の散歩に袋」「召使雇わない」…中東が日本の美徳に注目
http://news.livedoor.com/article/detail/8180047/

「日本人はイヌの散歩の際、糞(ふん)を片付けるための袋を持ち歩く」「日本は世界で最も裕福な国の一つなのに、(大部分の)国民は召し使いを雇っていない」
貧富の差が大きいエジプトでは、高収入の家庭で使用人を雇うのは一般的で、ペットの世話なども他人任せにすることが多い。


これを読んでいたら、『損を承知で正論申す』(石堂淑朗 PHP研究所)の一文を思い出した。この本は、1989~1990年に月刊中央公論に連載したエッセイをまとめたものだが、そのなかに、「イスラム雑感」というエジプト訪問記がある。

カルナック大神殿のルクソールからアブシンベル神殿のヌビアまで、古代の神殿史跡を巡る紀行文を書いた旅の思い出である。石堂は、アブシンベル神殿を訪ねたとき、ちょっとした衝撃を受ける。


アブシンベル神殿。エジプト観光客は激減しているそうです。

「バクシーシュ(喜捨)とたかり・乞食のように押し売りしてくる禿鷹を思わせるエジプト人たち」の姿が消え、「物売りをしていても、ただにこにこしているだけで、絶対に近寄ってこない、黒塗りのお地蔵さんさながらのヌビア人」たちに出会ったからだ。「あまりの変わりようにガイドブックを読み直すと、何のことはない、国が変わっていたのである」。アブシンベル神殿のあるヌビア一帯は、スーダンにまたがるアフリカだった。

同じエジプト人とはとうてい思えない。私は温厚なヌビア人と接しながら、エジプト人達は他ならぬその昔、アフリカ原住民を奴隷としてアメリカに売り飛ばすのに大きな役割をした悪辣なアラブ商人であったことを思い出した。天が下に新しきことなし、奴隷なきいまエジプト人達はヌビア人を低賃金で奴隷のようにこき使っているのである。あちこちのホテルに泊まったが、メイドその他の下働きは例外なしに黒いヌビア人が多かったのである(同書 227p)

20年以上も前に書かれたエッセイだが、いまもあまり変わりないのではないかと思わせるニュースが出た。

奴隷を持つ恥ずべき国のリストに、インド、中国、パキスタン、ナイジェリア
http://edition.cnn.com/2013/10/17/world/global-slavery-index/index.html?hpt=hp_c2

調査によれば、インド1400万人、中国290万人、パキスタンには210万人の奴隷がいて、その他、ナイジェリア、エチオピア、ロシア、タイ、コンゴ民主共和国、ミャンマー、バングラデシュが奴隷が多い国の上位10か国だそうだ。

"We're not talking about bad choices, we're not talking about crummy jobs in a sweatshop. We're talking about real life slavery -- you can't walk away, you're controlled through violence, you're treated like property."

グーグル翻訳を意訳
"我々は、悪い選択肢について話していない、我々は搾取された悲惨な労働について話をしていない、我々は現実の奴隷制の話をしている。あなたは(彼らを)拘束している、あなたは暴力を介して制御している、あなたが扱かう資産のように。"

メイド喫茶が話題になるほどメイドさえ珍しい日本だから、奴隷なんて関係ないと思っていたが、ついこの間まで奴隷のような日本人がいたそうだ。これには驚いた。

封印された日本のタブー 人権を無視した某集落の奇習「おじろく・おばさ」
http://n-knuckles.com/discover/folklore/news000589.html

奴隷の条件や環境はさまざまに違いがあるが、奴隷が奴隷であることを、主体的といえるほどに受け入れたとき、奴隷は完全な奴隷といえる、という誰かの言葉を思い出した。

「エジプト市民」はメイドを使わない日本人に驚いているようだが、竹中平蔵率いる「産業競争力会議」は、移民受け入れに積極的なので、いずれ日本にもフィリッピン人メイドが普及するかもしれない。

田原総一朗×竹中平蔵対談【下】「移民の受け入れなどタブーなき議論をすれば人口減少下でも経済成長は達成できる」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36315?page=4

竹中: ただ、毎年毎年、2030年を過ぎると日本の人口って100万人強減ってくるんですよ。そうすると、たとえば私の学生、とくに女子学生なんかに「いちばん欲しいものは何か」と聞くと、ほとんどの人がメイドさんだって言いますね。だって自分が働くには必要ですから。

竹中平蔵主査の「産業競争力会議」が政府に提出したレポートのタイトルが、「立地競争力の強化に向けて」ですからね。日本の国土や環境や社会を、企業や工場や店舗の立地対象と同様に考えているわけです。すると、たしかに、海外のビジネスエリートやセレブを東京に集めるためには、安く働いてくれるメイドや下働きが必要ですよね。もちろん、メイドは奴隷じゃありません。しかし、階層社会はメイドを必要とし、メイドはメイドを生み、やがてメイド以下をも必要とするのです。

(敬称略)

山中伸弥で打ち止め

2013-05-28 22:57:00 | 経済
けっこうショッキングなデータです。

あまりにも異常な日本の論文数のカーブ
http://blog.goo.ne.jp/toyodang/e/26f372a069cbd77537e4086b0e56d347

Elsevier社Sciverse Scopusに基づく各国の論文数の推移
http://www8.cao.go.jp/cstp/budget/syoken23/kokudai31.pdf

イノベーションに関する国際競争力ランキングの推移
http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu107/siryo2_1.pdf

国立大学が法人化された2004年前後から、日本の論文数が激減しているらしい。だとすれば、法人化にともなう研究以外の仕事に忙殺されて論文の生産性が著しく低下したのでしょう。少し遅れて技術開発の国際競争力も2007年から急低下しています。

検索してみると、企業の研究開発費もかなり以前から低迷しているようです。デフレ不況下では製品や商品に研究開発費をのせるわけにはいきません。当然、研究職ポストは減り、博士無職は増えるのですから、学位取得目的の留学が減るのは当然のことです。

その一方で、小学校から英会話教育が必須とされ、大学入試にTOEICが導入されようとしています。「科学技術立国」どころか、すでに日本の科学技術の優位性が脅かされ、日本語の学術基盤そのものが解体に向かっているようです。ほかならぬ、日本の政官財を主導する日本人たちによって。

卑近な例で恐縮ですが、新刊書店の翻訳小説のコーナーが、文庫本ですらあるかなきかくらいに縮小しています。ましてやハードカバーなど探すのにちょっと苦労するくらい。書店員に尋ねたら、「翻訳のハードカバーは高価で仕入れにくい」とのことでした。

出版不況と相まって、日本の学術と文化を特色づけてきた翻訳文化も衰退しているとすれば、事態はさらに深刻です。日本のように世界中の小説をはじめとする多種多様な書籍が翻訳出版されている国はないそうですから、世界的損失ともいえそうです。

そう考えてくると、日本ほどグローバルな国はなかったように思えます。いま喧伝されている経済のグローバリズムとは、ようするに韓国化、中国化に向かうことに思えてなりません。嫌韓や嫌中が増えているのも、そこらへんを敏感に察知しているのかもしれません。



グローバル人材になって世界で勝つ!

2013-05-21 20:15:00 | 経済
中国には厳しい検閲があるし、韓国のメディアも反日一辺倒。くらべて日本には報道の自由がある。しかし、こんな記事は日本の商業メディアにとってはタブーのはず。

高級ブランドの受託生産、バッグ一つの利益はわずか80円―中国
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=72430&;type=

例えば売値が3000元(約4万8000円)のコーチのバッグを、当社は香港の貿易会社に120元(約1920円)で販売しており、そのうち100元(約1600円)がコストだ。100元のうち45元(約720円)が材料費、20元(約320円)が人件費、35元(約560円)が水道代・電気代・賃貸料などのコストで、バッグを一つ販売しても20元(約320円)しか稼げない。これでもまだましな方だ。時にはコストをうまく抑えられず、バッグ一つで5元(約80円)しか稼げない。これではミネラルウォーター2本分にしかならない

4万8000円のCOACHのバッグの原価は1600円! 中国でほとんど作りアメリカでほんの少し加工して、Made in USA。同様な手法で Made in France や Made in Italy のブランド品が日本をはじめ世界で売られ、もちろん中国でも富裕層が買っているのだろう。

4万8000円のうち人件費はわずか320円(0.6%)。その中国ですら「人件費が高騰傾向」として、ブランド企業はインドネシアやタイに生産拠点を移している。ユニクロの柳井社長が世界同一賃金を唱えるわけだ。中国の労働者こそ、グローバル人材というべきだが、どうもそうではないらしい。320円の人件費をさらに値切るか、安く調達できる人材をグローバル人材というようだ。

いや、安い人件費に見合って物価も安いはずと思う向きもあろうが、ミネラルウォーター2本分が5元(約80円)、1本が40円は高い。我が家の近くのスーパーでは、2リットルの「大菩薩の水」が78円である。




インフレ目標2%は達成不可能 2

2013-03-06 01:50:00 | 経済
野口悠紀雄氏:インフレ目標2%は達成不可能」文字起こし
公開日: 2013/01/26 http://www.videonews.com/
話し手:野口悠紀雄 聞き手:神保哲生


文字起こし後半部は、動画の16:20~




神保: なるほど、で、先生ね、なかなかアベノミクスとか金融緩和とか、われわれには本当の意味で正確には理解しにくいんですが、たとえば野口先生もそのお一人だし、ほかにもいろいろ懸念を表明されている方は多いわけですよね。とはいえ、日銀も2%だとか、規制緩和については政府の路線を踏襲するとか、そういう共同声明を出しているのをみてね、これもし、ほんとうにジャブジャブお金を刷り、国債をどんどん買いということをなっちゃって、先生がおっしゃるように、実際にはインフレターゲットにも行かない、いまの状態だと行かない間もずっと刷り続けるというようになりそうですよね、これはどういうリスクというか、それを実際にやった場合に、一般市民としては何を懸念してなきゃいけないということになりますか、何を心配しなきゃいけないか

野口: いまの方針を続ける場合、危険はないんです。なんで金融緩和をやっているかというと、2%物価上昇率を上げるとか、活性化するとかいっていますが、あれはまやかしに過ぎない。で、本当の目的は国債を買うことなんです。たとえば、いま大型補正をつくりますね。で、国債を5兆円増発することになります。で、ほっぽっとくと金利が上がっちゃうんです。それを抑えるために、日銀が買う必要があるんです。国債の発行額は、この数年急増してるんです。で、それによる金利上昇を抑えるために日銀が買ってるんです。それが金融緩和です。金融緩和の本当の目的は、物価上昇率を高めることではありません。国債を買うことなんです。このことを国債の貨幣化といいますが、国債が増発されて金利が上がるのを防ぐためですね。それはいまも行われています。ただし、それはいつまでもできるかっていうと、できなくなりつつあるんです。つまり、さっき、いちばん最初に金融緩和は何をやっているかというと、銀行が持っている国債を日銀が買うんだといいましたね。銀行はイヤだということができるんですね。つまり、日銀が買いたいだけ買えないということなんです。で、こういう状態を札割れといってるんですが、札割れはじつは去年の9月から頻発しています。ということは、いまのまんまの金融緩和は進められなくなる。無制限の金融緩和やるっていうんですが、無制限にできるとは限らないんです、無制限にできなくなりつつあるんです。これを突破する方法は、日銀に直接買ってもらうことです、市場を通じながら。国債の日銀引き受けですね、国債の日銀引き受けをやると、この問題はぜんぶ解決します

神保: そこまでいきますか?

野口: わかりませんけれど、いまの法律が行き詰まりつつあるんですから、そうなる可能性はありますね。ただし、そういったことを政府が求めてきた場合に、日銀はNOっていうんです。いまの日銀法ならNOといえる。これが日銀の独立性ですね。ただ、政府の一部には、この独立性を破って、日銀法を改正しようって考えを持っている人もいる。で、そうすると、政府は日銀に命令できるんですね。こうなれば事態は一変しますね。で、じつはいまの日銀法といいますのは、これは1989年にできた法律で、その前の法律、これは戦時立法で昭和17年にできた法律ですが、この法律では政府が日銀に命令できることになっているんです。で、それがいろいろな問題を生んだためにですね、戦後のインフレーションとか、そんな問題を生んだために、いまの日銀法になったわけです。それを踏みにじろうというのですから、これはひじょうに問題です

神保: いまの問題でもあれですね、日銀法の改正論議というのは、よく聞くのは手段の独立とか、目的の独立みたいなことで、手段は自分たちで自由にやっていいけれど、目的は政府と共有しなければいけないから、改正が必要だと。ほんとうにウォッチしなければいけないのは、手段も命令するような

野口: 目的を共有すれば手段も共有することになります。目的が決まれば手段は束縛されますね。だから、目的と手段を分離するなんて、それは詭弁だと思いますよ。とにかく、いまの法律では、目的についても手段についても、政府は命令できないんです。それを命令できるようにしよう、戦時立法に戻そうってのが、日銀の独立性を破ろうって考え方です

神保: で、先生いまハッとしたんですが、金融緩和の目的は国債を買うことだと

野口: もちろん

神保: で、金融緩和の方は実際は仮面をかぶっていて

野口: 仮面というのは2%物価上昇率を上げるとかですね、できもしない2%という目的を上げるのはなぜかというと、本当の目的を隠すためです

神保: 隠すため

野口: 2%といえば、いつになっても実現できませんから、いつまでも金融緩和政策をとり続けることができます

神保: 国債をどんどん買い続けることになると

野口: そうです

神保: そうすると金利が上がらないと。そうすると、これはものすごい高等手段ですよね

野口: 高等手段ではないです。歴史が示しているのは、財政赤字が積み上がった政府は常にそういうことをやっているということです

神保: この話はどこに首謀者がいるんでしょうか
 
野口: どこに首謀者がいるかわかりませんけれど、少なくとも巨額の財政赤字から抜け出せない政府は、インフレを求めていますね、あるいはこういう状況の中で、赤字が増えるから財政ができない、政治家は財政を増やして人気取りをしたいですから、その制約はぜひとも外したいですね。で、インフレを求めている人は世の中に大勢いますね。負担を負うのは国民です

神保: ひじょうに初歩的な質問で、どういう形で国民に負担という形で返ってくるんですか

野口: 定期預金がチャラになるんです。これは日本国民は終戦直後に経験したことですよ。終戦直後に、基本的にいまと同じようなことが起きて、インフレが起きたんです。物価が120倍くらいになったんですね。で、戦時中に戦時国債をたくさん買わされましたね。この国債が紙切れになったわけですね。そのことがまた起こるということです

神保: それはハイパーインフレ

野口: ハイパーではないですね、ハイパーってのは一兆倍とかそういうことですからね。日本の場合、100倍くらいですからね、100倍でもね、100円が1円に、100万円が1万円になるのは、大変なことですよ

神保: いまの100倍なんていう可能性とか危険性はどれくらい現実的なものとして、われわれが考えなきゃいけないんでしょうか

野口: それはどの程度の国債を発行するか、どの程度財政支出を増やすかによりますね、どの程度というのはいえません。何をやるかによります。ただし、終戦直後と違うところは何かといいますと、いまは資本取引、国際的な資本取引が自由になっているということですよ。その結果、何が起こるかというと、日本でインフレが起こると予想したら、日本の資本は海外に逃げ出すということです。これをキャピタル・フライトといいますが、キャピタル・フライトをするとなるとそれは円を売るということですから、円安になりますね。円安になって輸入物価が上がりますね。ですから、国内のインフレが加速されますね。そういうことになって、コントロールできなくなる可能性がひじょうに強いですね。つまり、日銀引き受けを認める、日銀の独立性を破るってのは、そういう危険に日本を晒すってことです。だから、それゆえにひじょうに重大な問題なんです

神保: で、いまの話は、自民党の三本の矢といっているけれども、実際は三本めの矢は実際はほとんどまだ出てきていない感じで、成長戦略とか規制緩和とか出ていうないので、じつは財政出動だということなんですか、これは

野口: 財政出動はすでに決めたわけですね、で、財政出動をやると国債は増えますね、金利が上がりますね、金利が上がると問題なので日銀が買うと

神保: すると結局は、財政出動を中心に据えた、でまあそれをちょっと金融緩和という

野口: それをスムーズに行うために金融緩和をやるわけですね。だけど、財政出動のために国債を買うのが目的だというと批判が集まるから、だから物価を上げるんだといってるんですね。だからそれはまやかしの目的です

神保: だから変な話、物価は上がらない方がいいんですね、そのまま買い続けることができちゃうから

野口: 物価は上がらないんです。影響はないです。でも、金利上昇は抑えるって効果は明らかにあるんですよ、国債を買っているわけですから

神保: 危険な兆候を見破るために、どのあたりをわれわれはウォッチしなければならないですか

野口: 円がある程度の水準になったら危険ですね。ですから資産をドルに換えることを真剣に考えないと危なくなりますね

神保: ある程度といいますと、いったん90円くらいまでいったのが、いま88、87円まで少し円高に戻していますが、どのくらいを

野口: 簡単な計算を申しますとね、2%に上がるっていっているわけでしょ、消費者物価を2%上げるためにはですね、輸入物価が4割上がる必要があるんですよ、過去のデータからみると。ていうことは、円が4割り安くなれば、そうなるんですね。ていうことは、いま仮に90円だとしますね。4割ということは120~130円くらい。そのくらいになりそうだったら危険ですね。つまり日本人はですよ、自国の通貨である円を安心して持てなくなるってこです。ひじょうに悲劇的なことですね。円の価値を守るってことこそ、政治的なもっとも基本的な責任じゃないですか。それが果たせなくなるってことです。どこでウォッチしたらよいかというひとつの答えがそれです

神保: 為替をみると。先生どうですか、ずっと経済をみてきて、ここにきて来て日本がついに、自民党政権に戻って、インフレターゲットとか、金融緩和でデフレ脱却とか、どうも国の政策で出てきたと、一方で20年、何をやってもなかなか日本の経済の活性化ははかれなかったというのも事実で、多くの人はなんだかよくわからないけれど、こんどはこっちにやらしてみてもいいんじゃないかと

野口: 違います。それはさっきいったように20年間金融緩和をやり続けたんです。さっきいいましたように。で、効果がなかったんです。つまり、ほんとうは経済の構造を変えなくてはいけないんですね。世界の状況の変化に対して。それは手術みたいなもんですよ。でも、手術は痛いからいやだと言い続けてきたんです

神保: それは規制緩和とか既得権益を切るとかのことですね

野口: それは嫌だから、金融緩和という麻薬を飲みましょうと、それを20年間飲み続けてきたんです。いまになって起こったことではありません。20年続けてきたんです。それをさらに続けようということです

神保: なるほど

野口: だからまだ麻薬を飲み続けていきたい、末期的症状ですね。だから、真剣に考えなくてはいけないです。日本ていう国を捨てざるを得なくなっていますね、いまや

神保: 先生、僕の方でほんとうは先生に聞くべきことを聞きそびれていて、ということはほかにありますか

野口: だいたいカバーしたと思いますが

神保: わかりました。どうもありがとうございました

(敬称略)