子どものように手放しで泣く顔を見下ろしながら
俺は女の身体をさらにせり上げた
Someday My Prince Will Come
チャイムを押して
室内から見られないように
ドア横の壁に身を寄せた
公団住宅の金属ドアが
重くきしんだ音をたてて
少し開いた
俺は素早く靴先を
その隙間に差し入れた
ドアチェーンはかかっていない
もしかかっていれば
そのまま引き返すつもりだった
女は口をOの字に開けたまま
呆けたように俺を見た
夫や子ども以外をこの玄関で見ることはない
そう信じ切っていたのだろう
あらかじめ女の会社に偽電話をかけ
今日休むことやたぶん一人でいることも
たしかめていた
ドアチェーン以外は
ドアを思い切り引くと
ノブをつかんだまま
女が出てきた
入れ替わるように
俺は玄関に
室内に進んだ
幸せな親子4人
ありふれた3LDK
積み重ねられた洗濯物
麦茶のボトル
風鈴が鳴った
追いすがってきた女を
俺はものもいわずに
突き飛ばした
「ね、落ち着いて」
Take it easy
I'm afraid I wasn't able to deliver your message
to the following address.Because sender's mail address
is in recipient's blocking list.
女の小賢しい裏切りに俺はカッとなった
薄手のサマースウェーターとカーディガン
まるで主婦というタグでも付いているような
あか抜けなさに
その弛緩が
俺を刺激した
女を抱きよせ
唇を覆った
少し口臭がした
はじめて知った
固かった身体はすぐに
ぐったりした
そのままかぶさって
女の両手を
左手で抑えた
耳朶から首筋を吸い上げ
右手でスウェーターをたくし上げる
青い静脈が浮かび上がる
白く豊満な乳房が晒された
乳首を含んだときも
女の抵抗は本気ではなかった
手も握らずにいた
3年間の抑制が
俺の中で弾けた
乱暴にスカートをまくり
白い大きめな下着に
手をかけたとき
はじめて気づいたように
女は激しく暴れた
女はとても濡れていた
指先にからめとった体液を
俺は女の顔になすくりつけた
その匂いを嗅ぎながら
唇を割って俺の唾液を注ぎ込んだ
Take it easy
女がノロノロと下着に足を通し
スカートの下に納めてから
俺はいった
「パンツ脱げよ」
「お願い、もうすぐ子どもが帰ってくるの」
「脱がしてやろうか」
俺が果てなかった不満と侮りの腰つきが
下着を足首に落とした
あの付け根の熱い奥に
ぶちまけなかったのは
寸前で腰を引いたのは
恐怖したからだ
泣きじゃくるだけの
無防備なこの女は
俺の子を産むのではないかと
俺はまだ暖かい下着をつかんで
ズボンのポケットに突っ込んだ
エレベータを使わずに
外廊下の非常階段で下りた
Take it easy
西日射す団地の
影の下に入り
女のベランダを見上げて
姿を現すと賭けた
ベランダの上と下で
俺たちは眼を交わした
1時間前には麦茶を飲んでいて
いまは下着をつけていない女は
俺に軽く手を振った
少し微笑んでいるように
見えた
蔦の絡まるバルコニーの代わりに
洗濯物が翻るベランダ越しに
俺たちは立っていた
俺はポケットから白い布を取り出し
わずかに染みの付いたそれを
鼻に押しつけた
そして純白の絹のスカーフのように
高く掲げて女に振った
俺は幾層もの城壁を抜け
4頭立ての馬車を駆り
夕焼けの町へ帰った
女の下着は
駅のトイレに捨てた
Someday My Prince Will Come
(7/11/02)
俺は女の身体をさらにせり上げた
Someday My Prince Will Come
チャイムを押して
室内から見られないように
ドア横の壁に身を寄せた
公団住宅の金属ドアが
重くきしんだ音をたてて
少し開いた
俺は素早く靴先を
その隙間に差し入れた
ドアチェーンはかかっていない
もしかかっていれば
そのまま引き返すつもりだった
女は口をOの字に開けたまま
呆けたように俺を見た
夫や子ども以外をこの玄関で見ることはない
そう信じ切っていたのだろう
あらかじめ女の会社に偽電話をかけ
今日休むことやたぶん一人でいることも
たしかめていた
ドアチェーン以外は
ドアを思い切り引くと
ノブをつかんだまま
女が出てきた
入れ替わるように
俺は玄関に
室内に進んだ
幸せな親子4人
ありふれた3LDK
積み重ねられた洗濯物
麦茶のボトル
風鈴が鳴った
追いすがってきた女を
俺はものもいわずに
突き飛ばした
「ね、落ち着いて」
Take it easy
I'm afraid I wasn't able to deliver your message
to the following address.Because sender's mail address
is in recipient's blocking list.
女の小賢しい裏切りに俺はカッとなった
薄手のサマースウェーターとカーディガン
まるで主婦というタグでも付いているような
あか抜けなさに
その弛緩が
俺を刺激した
女を抱きよせ
唇を覆った
少し口臭がした
はじめて知った
固かった身体はすぐに
ぐったりした
そのままかぶさって
女の両手を
左手で抑えた
耳朶から首筋を吸い上げ
右手でスウェーターをたくし上げる
青い静脈が浮かび上がる
白く豊満な乳房が晒された
乳首を含んだときも
女の抵抗は本気ではなかった
手も握らずにいた
3年間の抑制が
俺の中で弾けた
乱暴にスカートをまくり
白い大きめな下着に
手をかけたとき
はじめて気づいたように
女は激しく暴れた
女はとても濡れていた
指先にからめとった体液を
俺は女の顔になすくりつけた
その匂いを嗅ぎながら
唇を割って俺の唾液を注ぎ込んだ
Take it easy
女がノロノロと下着に足を通し
スカートの下に納めてから
俺はいった
「パンツ脱げよ」
「お願い、もうすぐ子どもが帰ってくるの」
「脱がしてやろうか」
俺が果てなかった不満と侮りの腰つきが
下着を足首に落とした
あの付け根の熱い奥に
ぶちまけなかったのは
寸前で腰を引いたのは
恐怖したからだ
泣きじゃくるだけの
無防備なこの女は
俺の子を産むのではないかと
俺はまだ暖かい下着をつかんで
ズボンのポケットに突っ込んだ
エレベータを使わずに
外廊下の非常階段で下りた
Take it easy
西日射す団地の
影の下に入り
女のベランダを見上げて
姿を現すと賭けた
ベランダの上と下で
俺たちは眼を交わした
1時間前には麦茶を飲んでいて
いまは下着をつけていない女は
俺に軽く手を振った
少し微笑んでいるように
見えた
蔦の絡まるバルコニーの代わりに
洗濯物が翻るベランダ越しに
俺たちは立っていた
俺はポケットから白い布を取り出し
わずかに染みの付いたそれを
鼻に押しつけた
そして純白の絹のスカーフのように
高く掲げて女に振った
俺は幾層もの城壁を抜け
4頭立ての馬車を駆り
夕焼けの町へ帰った
女の下着は
駅のトイレに捨てた
Someday My Prince Will Come
(7/11/02)