まだ、観ていないのだが、アカデミ作品賞を逃して、かえって映画紹介業界では前評判が高くなったようだ。「カウボーイの同性愛、あるいはゲイを描いた映画である」が、「普遍的な愛の物語でもある」という紹介例が多いようだ。ま、それはそうなんだろうが、何か慣用に堕落している気がしてならない。「根岸の里の侘び住まい」みたいに、「愛」が安直なアンチョコ化していないか。そんなやたらに「愛」があるのかな。ないからこそ、映画や小説が愛に満ちているのではないか。毛唐は、「愛してる」としょっちゅう言うらしいから、愛についてよくわかっているのだろうが、たぶん一生に一度もいわない人が少なくない日本人の一人としては違和感があるなあ、したがって、愛国心というにも同様だ。だいたい、「国を愛する心」なんて、本当に私たちはわかっているのだろうか。昔の人も、愛国とはいっていたが、その上には忠君がついていたはずだ。忠君することが国を愛することだとこれは具体的な行動指針が付いているからよくわかる。シリアルキラーの映画では、「誰しも無縁とは言い切れない人間性の暗黒面」という、「それにつけても金の欲しさよ」がある。愛国心はそれを裏返して、人が人や家族や故郷を大切に思う心は、人種や宗教や言葉は違えども古今東西変わらないだろう、とよくいわれる。でも、人や家族や故郷まではともかく、国まではなあという疑問がすぐに頭をもたげる。どの言葉も深遠そうにみえて、その実ひどく大ざっぱじゃないか。もっと身近でわからない言葉が、「自分を愛せない人間に人は愛せない」。おいおい、自己愛で、ナルちゃんでいいのか。「自分を大切にしない人間は人を大切にできない」という応用ならわかる。自暴自棄になったら、他人のことなんぞかまっちゃられないからね。ただし、ふつうは親や兄弟、友人などから大切にされた覚えがあるから、身近な人たちを大切にしたいと思うという順序だろう。どうやら、「自分~」という発語と愛が関係するらしい。ならば、「自分を騙せない人間に人は騙せない」という言葉もある。以上、愛について、私が知っちゃいない二三の事柄である。あー、休みも終わりだ。
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