コタツ評論

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ここはひとつナカをとって

2012-12-08 11:34:00 | 政治
すごいね、最近の新聞コラムは。

産経抄 2012.12.8 03:14
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121208/dst12120803150001-n1.htm

▼原発論議もまたぼやけている。各党や候補者の訴えが情緒的に流れすぎているからだ。ならばいっそのこと「脱原発」を唱えている人々は、中央道のトンネル事故で9人もの命が失われているのだから「脱トンネル」も唱えてはどうか。

全文、諭旨免職ものの論旨不明。しかし、この「問題箇所」こそが、このコラムの肝なのです。これは、「ぼやけた」「情緒的な」原発論議として、「脱原発」や「卒原発」を批判しているのではありません。あるいは、筆者や産経新聞が原発再稼働、原発維持に賛成しているから批判しているのでもありません。原発による電力供給をめぐる国民経済の問題など、じつは眼中にないはずです。

ここで露呈しているのは、来る衆院選では原発を争点にしてはならない、という苛立ちです。

なぜでしょうか? 選挙後の連立提携の枠組みが、おそらく集団的自衛権の行使になるからでしょう。安倍自民党総裁や石原維新の会代表の憲法改正や核兵器保有発言は、アドバルーンに過ぎません。実現性に乏しいから、いくらでも無責任に放言できるし、国民中の不満居士も気楽に支持できます。

ただし、集団的自衛権の行使は、現行憲法の解釈を変えれば、できます。そして、「ぼやけた」「情緒的な」安全保障論議が一人歩きし、やがはて落としどころとして、集団的自衛権の行使が浮上します。そのとき、「そのくらいは当たり前」「それくらいはしかたがない」。

憲法改正や核兵器保有にくらべれば、「ここはひとつナカをとって」と。


しかし、「その」「それ」「ここ」がルビコンの河です。産経抄のコラム氏は、原発という内政問題ではなく、集団的自衛権の行使に向けた、外交・安全保障が「未来」の課題であるべきだと考えているのでしょう。消費税増税はすでに決着済みで、TPPも交渉への参加までなら、内閣の決議で可能です。

残る未解決の内政問題は原発だけです。

脱原発、再稼働のいずれにせよ、どちらかに一気に舵を切ることはできず、実際には棚上げになりかかっていました。ところが、日本未来の党ができたおかげで、脱原発か否かに衆院選の争点が二分されそうになってきた。国民は原発のある「未来」と原発のない「未来」を心に描くことになりました。コラム氏は、国民の問題意識が内政に向かうのを看過できなかった。

内向きの「未来志向」に向かうことに、我慢ならなかったのではないでしょうか。

とはいえ、脱原発や卒原発を公約にあげた諸党が、小選挙区で議席を獲得するのはきわめて難しいといわれます。ならば有権者は、比例区と小選挙区を使い分けして、留保の姿勢をはっきり示す必要があります。選挙期間中なので、書きにくいのですが、比例区では政党を、小選挙区では議員を選ぶ、といわれる通例を変えてみてはどうでしょうか。小選挙区では政党を選び、比例区では原発の支持不支持を選ぶのです。「ここはひとつナカをとって」。

「自民党、小選挙区で圧勝するも比例区で惨敗」。そんな誰も予想しない選挙結果が出たらおもしろいじゃないですか。
コメント
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