コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

ユクレインという発音です

2022-02-25 22:36:00 | 政治
先日、Netflixでイギリスの音楽映画 ”YESTERDAY” という佳作を観ました。交通事故から目覚めたら、そこはビートルズが存在しない世界だった。ストリートミュージシャンのマリクは、ビートルズナンバーを歌って一躍大スターになるが・・・。

BacBack In The U.S.S.R


モスクワのコンサートに飛び入り参加してマリクが歌うシーンです。イギリスからソ連に帰国したロシア人が、やっぱ最高だぜえと喜ぶ様子を歌っています。ビートルズが歌ったオリジナルはこれ。
https://www.youtube.com/watch?v=nS5_EQgbuLc

歌詞の一部にこんなのがあります。

Well, the Ukraine girls really knock me out
They leave the West behind

And Moscow girls make me sing and shout
That Georgia’s always on my mi-mi-mi-mi-mi-mi-mi-mi-mind

ウクライナの女の子にはノックアウトされるね
西欧の女の子なんて目じゃない

モスクワの女の子は、俺を歌い叫ばせる
グルジアの女の子は、いつも「我が心のジョージア」だ

奇しくも今、首都キエフにまでロシアが侵攻しているウクライナとやはり武力衝突をしている旧グルジア、現ジョージアが出てきます。「女の子」だけの話じゃないんです。1968年発表のこの歌は、当然、ソ連では放送禁止となり、ビートルズはモスクワ公演をしていませんが、2003年にポール・マッカートニーが赤の広場コンサートを開いています。

冒頭の映画 ”YESTERDAY” のモスクワコンサートの場面は、このマッカートニー公演から着想したものでしょう。現代の「ロシア」において、ビートルズの自由とロックに熱狂する観客のその姿は、ウクライナ侵攻に抗議して立ち上がった1500人のロシア人反戦デモ参加者にも重なります(はたして1500人という数字が正しいかどうかわかりませんが、逮捕必至の人々です)。

さて、日本人が知っていそうな著名なウクライナ人を挙げてみます。

まず、『外套』の文豪ニコライ・ゴーゴリ、バレーダンサーのニジンスキー、棒高跳びの「鳥人」セルゲイ・ブブカ、日本では相撲の横綱大鵬の父がウクライナ人でした。ソ連の共産主義から逃げてきたいわゆるロシア人です。

総合格闘家のイゴール・ボブチャンチンもそうです。ウクライナ出身ではないそうですが、キエフ市長のビタリ・クリチコは無双の世界ヘビー級チャンピオンでした。スターリン時代にソ連の学界を席巻した 「ルイセンコ学説」の農学者ルイセンコ、ソ連時代を代表する画家イリヤ・レーピンなどがウクライナ人です。

ウクライナにはユダヤ人も数多いのですが、ピアニストのエミール・ギレリス、ウラディーミル・ホロヴィッツ、作曲家のセルゲイ・プロコフィエフもそうです。

プーチンの冷酷非情な独裁者そのものの風貌に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は、いかにも弱っちい小国の代表らしく、ちょっと滑稽な顔にも思えますが、それもそのはず元はコメディアン・俳優だったそうです。両者とも背が低く、まるで現代のヒトラーとチャップリンではありませんか。

アメリカのウクライナ系移民の子孫としては、「ヴァイオハザード」シリーズのミラ・ジョヴォヴィッチ、西部劇「シェーン」の悪役ジャック・パランスに名優カーク・ダグラス、顎の割れた顔が似ています。当然、息子のマイケル・ダグラス。他にはスティーヴン・スピルバーグ監督もそうです。

音楽畑では、指揮者のアイザック・スターン、レナード・バーンスタイン。ウクライナ系移民はニューヨーク州にいちばん多いそうです。

それから、イスラエル初の女性首相となったゴルダ・メイアもウクライナから移住したユダヤ人でした。

(止め、敬称略)