コタツ評論

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星ひとつゆく

2022-06-25 21:32:00 | ノンジャンル
小田嶋隆が亡くなった。まだ、65歳だ。病名はわからないが、近年、入退院を繰り返していた。「反権力の立場から鋭い社会批評」と各紙は伝えるが、「親権力や半権力の立場から眠たい社会批評」に胡坐をかくか、結局は「お涙ちょうだいの人間ドラマ」に逃げているマスコミを痛撃した人でもあった。

ナンシー関が死んだとき、ライブハウスで催された若い衆の集まりでスピーチを求められ、「骨身を削ってとは反対に、TVの前に座り続けて太るに任せた、きわめて優れたTV批評家でありジャーナリストが若くして亡くなりました」と話しているうちに込み上げ、絶句したのには我ながら驚いたことがありました。

ナンシー関も小田嶋隆も私より年下ですが、三島由紀夫や野坂昭如と同様に敬称を略すほど、敬意を払うべき人でした。個人的には、この二人は、「フリーライターの星」と思っています。

小田嶋隆は日銭を稼ぐフリーライターでありながら、ツイッターをはじめてからは、いわゆる「ネトウヨ」や「冷笑リベ」などの相手を辛抱強く続けました。アル中(本人弁)になるほど繊細な人が、泥沼から手を伸ばすゾンビのような人々に反駁し、皮肉し、注意し続け、傷ついたのは、やはり彼の人間への優しさの成せる業だったのでしょう。

「自称コラムニスト プゲラ」といった類いの嘲笑や罵詈雑言に切り返しながら、「職業としてのフリーライター」を疑い続け、しかし、「職を投げうってライターをしている」と真面目に開き直る一文もあった。

言わずもがなであるが、社員食堂で飯を食っているような奴にライターがいるかよ。瓶底のような眼鏡をかけて「深海魚」(デーブスペクターのナンシー関評)のような姿形であろうと、30代にしてアル中になるような生き辛さを抱えていようと、タダ飯タダ酒に手を出さず、社員割引も利用せず、身銭を切ってポテチを買い、アルコールに浸ってきたのだ。

ナンシー関はあらゆる身体に悪いものばかりを摂取して死んだ。小田嶋隆はアル中から禁酒して死んだ。やはり、小田嶋隆は少し長生きしたナンシー関だったのかもしれない。こういう場合、米語には便利な言葉がある。彼らはグレートだった。

THE BLUE HEARTS - 青空 (Blue Sky) LIVE NHK TV [ENG SUB]


(止め)
コメント
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