Zooey's Diary

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ほっこり胸キュン物語「阪急電車」

2010年10月19日 | 

この本、友人が絶賛していたのです。
まるで捻りのない「阪急電車」というタイトル、
関西圏に住んだことのない私にはおよそ馴染みのない「阪急今津線」。
私はこの本の評判を聞いたこともなかったので
友人から聞かなければ、多分手に取ることもなかったでしょうが…
面白かったです。
それほど感動するということはない代わり、
ほっこりと胸が温かくなるような感じ。

全部で8駅、片道15分というローカルな今津線を舞台にした短編連作集。
初めて声をかけ合って恋が始まる男女。
裏切られた元婚約者の結婚式に「討ち入り」する女。
恋人のDVに悩んでいる女子大生。
金持ちではあるけれど下品な主婦グループに身を置いて
疎外感を感じている中年主婦。
その主婦に「信じられへん。おばさんってサイテー」と言い捨てる女子大生。
偶然電車に乗り合わせた彼らが、ほんのいっとき人生を交わらせる。
「ほっこり胸キュン」物語、でもそのほのぼのとした物語の背景には
人間の道義みたいな太いパイプがくっきりと通っている。
それがなんとも柔らかな関西弁の会話を通して、語られていくのです。

面白いのでほんの一部をご紹介します。
OLの翔子が、5年もつきあった婚約者に裏切りを告白されたシーン。
”「…あんた、結婚準備中に浮気した挙句、生でやったの?」
言葉を選ぶ余裕もなくいいだけ下世話になった台詞に、
彼女が泣きながら割って入った。
「ごめんなさい、私が悪いの。避妊しなくってもいいって、私が言ったの。
もし妊娠したら降ろすから迷惑はかけないって」
それを真に受けたのかこのバカは。
まずここで一挙に冷めた。
自分の付き合っていた男が、結婚まで考えていた男がこんな浅はかなバカだったことに。”

そして翔子が、花嫁よりも豪華な白いドレスで
その結婚式に乗り込んで行くシーン。
”新郎と翔子には当然のことながら共通の友人がいるが、新郎は今後の体裁を優先して、
翔子が会ったことのない二級線の知り合いしか呼ばなかったらしい。
そして新婦の友人もあまり新婦と親しくないようだった。
会社では翔子のコバンザメをやって群れの仲に入り込んでいた。
恐らく学生時代も同じように過ごしたのだろう。
「すごいドレスですね」
好奇心丸出しで訊かれて、翔子はにっこりと笑った。
「新郎を寝取られて子どもまで作られた元婚約者としては、
これくらいの嫌がらせ許されるでしょう?」
きゃあっと盛り上がったテーブルの女性達は、多分新婦を友達とは思っていない。”

その翔子が、短い今津線の中で
どのように泣き、どのように自分を取り戻していったか。
恋人のDVに悩む女子大生や、元高校教師の老婦人と
電車の中でどのように接点を持っていったか。
有川浩、ライトノベル出身ということですが
たいしたストーリー・テラーです。

「阪急電車」http://tinyurl.com/264czd2
コメント (2)
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