ギリシャの映画というのは珍しい。
アテネで長年、高級紳士服の仕立て屋を父と営んできたニコス。
ギリシヤの不況の中、スーツの需要は落ちて閑古鳥が鳴き、店は遂に銀行に差し押さえられてしまう。
途方に暮れるニコスは、手作りの屋台で移動式の仕立て屋を始めるが、道端で高級スーツの注文は入らない。
溜息ばかりの日々、ひょんなことからウエディングドレスの注文が入る。
紳士服一筋できたニコス、ドレスはおろか婦人服も作ったことがないが、崖っぷちの彼はそれを引き受ける。
燐家の人妻オルガの助けを借りて、ドレス作りを始めるが…

生真面目なスーツ職人が、長年籠っていた自分の殻を脱ぎ捨て、新たな世界に歩み出す。
オーダーメイドのウエディングドレスを安く作り、幸せな笑顔を仕立てて行く。
そのストーリーは素晴らしいのですが。

青い空の下、眩しい陽光に溢れるアテネの、お洒落なサクセス・コメディかと思いきや、少々様子が違います。
まずこの作品、台詞が非常に少なく、説明もない。
視聴者は自分の想像力を最大限に働かせなくてはいけない。
そしてニコスは、いい歳をしているが結構子供っぽく、他人にあまり興味を持たないような性格であるようです。
人妻オルガに思いを寄せられ、男女の仲になるのですが、彼女の一人相撲であるような印象も。
ラストシーンで一人車を走らせるニコスの姿は、店や父親やオルガや何もかもから解放された喜びに満ちているようにも見えます。
単にサクセス・ストーリーではなく、少々ほろ苦くもあるこの作品の監督脚本を務めたのは、ギリシヤの女性監督ソニア・リザ・ケンターマンです。
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