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2022年の本屋大賞ノミネート作品ということで、この著者の作品を初めて読みました。
6篇の短編集です。
不妊治療に励み、夫の不倫を見て見ぬふりをする主婦と、親から虐待されている少年。
夫から離縁されて出戻って来た、総合格闘技にスカウトされたこともある188㎝の姉(綽名は魔王)と、気の弱いその弟。
祖母が世話をするうちに突然死してしまった初孫と、嘆き悲しむ娘夫婦。
たった一人の身内である兄を殺された女性と、刑務所にいるその犯人。
性転換を願う娘と、ちゃんと向かい合うことができない駄目教師のその父親。
アルコール依存症で暴力をふるい続けた父親を亡くした「後輩」と、その葬儀に呼ばれた「先輩」。
様々な形の家族と、その中に隠された苦悩と秘密。
家族というものは、普通は深い愛情で繋がっているが、時に鬱陶しく、時に残酷な繋がりでもある。
完全でない家族でも、上手くいかない人生でも、どんな不幸に躓いても、それでもいいのだと優しく肩を叩いてくれるような短編集です。
それぞれの作品に驚きが用意されていますが、一番驚いたのは、最終話が第一話への伏線であったこと。
そして第三話のラストで語り手の正体が分かったときで、これにはもう、言葉を失くしました。
私が一番好きな、第二話「魔王の帰還」から。
”小学校二年の時、スーパーで転んで腕を骨折した。姉は痛みに泣き喚く鉄二を買い物用のカートに放り込んで押し、病院まで爆走した。店員の制止も聞かず、ガラガラと派手に地面を削りながら。
ー野球できなくなったらどうしよう。
ー大丈夫じゃけぇ、鉄二、泣くな。姉ちゃんがついとるけぇ。
大丈夫だよ姉ちゃん、と今度は鉄二が思う。奇跡は起こらない。起こらないから傍にいてやれ。最後には負けが決まっているシナリオでも、立ちはだかるから魔王なんだろ。
勇者の元へ、音を立てて帰れ、魔王。”
「スモールワールズ」
の本は面白くて読み応えのあるものが多いですよね。
これは…久々読んでみたい衝動に(笑)
さっそく帰りに本屋さん寄ろう~
って雪かも…なのでネット注文しちゃおうっと
これもテーマは重いのですが、軽い口調で読みやすいです。
引用したのは第二話のラストですが、ゲームみたいでしょう?
私も便利なのでついネットで頼んでしまいます~