暑き中 涼を求めて 映画館 ディカプリオと バズ・ライトイヤ
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Howard Phillips Lovecraft
【トリプル・サイコ映画】
" That is not dead which can eternal lie,
And with strange aeons even death may die."
" Call of Cthulhu "
ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの
言葉に「恐怖(Horror、Fear、Terror)は人類
の最も古い感情である」がある。それを反
映して恐怖の対象として描かれたものは多
岐にわたり、古くは神や霊、吸血鬼等とい
った超自然的な物事が扱われた。宇宙から
見た人間存在の儚さを恐怖と感じれば、恐
怖小説や映画のテーマのホラー。また、小
説・映画・演劇などで、読者・観客にぞっ
と、わくわくするようなスリルを与える作
品のスリラー。あるいは、状況絡み不安や
緊張を抱いた不安定な心理、またそのよう
な心理状態が続く様を描いた作品のサスペ
ンス。精神病質者という意味ではなく「不
安的な精神状態」にさせるという意味で上
出来な映画だった『インセプション』。
The Dark Knight
渡辺謙とレオナルド・ディカプリオが『ダ
ークナイト』のクリストファー・ノーラン
監督の下で共演を果たした話題作。米国国
内で歴代2位の興行成績を記録した『ダー
クナイト』に続くノーラン監督の新作とあ
って世界的注目の人間の心理構造に切り込
んだ「SFアクション」とされている。そも
そも、“Inception”とは何を意味しているの
だろと首を傾げての鑑賞だ。
命の独楽
主人公のドム・コブは、人の夢(潜在意識
)に入り込むことでアイディアを“盗み取
る”特殊な企業スパイ。コブは昔、最愛の
妻モルと夢の中へ幾度となくダイブし、潜
在意識の深い階層で妻と二人きりの時間を
楽しんで暮らしていたが、やがて現実と夢
の判別がつかなくなったモルは自殺し、さ
らにコブはモルの殺害容疑をかけられ、家
に2人の子供を残しての逃亡生活。
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強大な権力を持つ大企業のトップの斉藤が
ライバル会社の解体と、社長の息子ロバー
ト譲るように意識的動機付け、つまり“植
えつける(インセプション)”の依頼をコ
ブは、犯罪歴の抹消を条件に仕事を引き受
ける。夢の世界を構築する「設計士」のア
リアドネ、他人になりすましターゲットの
思考を誘導する「偽装師」のイームス、夢
の世界を安定させる鎮静剤を作る「調合師」
のユスフ達の6人で作戦を決行。ロバート
の夢の中に潜入直後に手練の兵士たちによ
って襲撃を受ける(実は、ロバートの企業
スパイからの潜在意識の防護訓練→アンチ・
インセプションプログラムを受けいた)。
対抗処置に更に深い階層の夢へと侵入する
コブたち。次々と襲い来るロバートの護衛
部隊と、コブの罪悪感から生み出されたモ
ルが障害となり窮地に入る。
Carl Gustav Jung
転倒する風景、派手なカーチェイス、銃撃
戦、めまぐるしく移動するアクション映像。
突然、空間の各所から耳を劈く破裂音と映
像を破壊する映像や3階層構造(?)のパ
ラレルな展開。途中、頭が変になってしま
うかなという不安が過ぎったのわたしだけ
だろうか。そもそも、夢は、無意識のメッ
セージや無意識の活動するが、あくまで「
意識自我」であり、深い催眠術などで、集
合的無意識の影響が非常に濃い、無意識の
メッセージは引き出せるが、本人(或いは
この場合、原作者)は無意識状態にあるの
でメッセージは、術者や立会人(或いはこ
の場合も原作者なので)しか聞けないとい
うことになる。
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ユング心理学。ユング派では、夢の分析は
拡充(=能動的創造)法を使うという。こ
れは、無意識のメッセージやイメージ、時
に集合的無意識のメッセージなどを解釈で
きるような形に集めてまとめる作業で、集
合的無意識のメッセージやイメージを再構
成できる。拡充法というのは、意識経験と
して断片的な無意識や集合的無意識のメッ
セージを、集めてパターン化する方法だが
集合的無意識な到達とは別だ。精神開示薬
物・薬草類などの薬物は集合的無意識のメ
ッセージやイメージは見えるが、意識が集
合的無意識に達した訳でないとわれるから
“そんな程度のSF映画”と理解すれば良い
のだ。しかし、ストーリー展開はインセプ
ション(正)→アンチ・インセプション(
反)→ミッションの実現(合)とトリプル・
サイコと浅層・中層・深層と<鼎>構造とな
り途中の不安は消え、「お前の頭へ侵入す
る」「犯罪現場は、お前の頭の中」「ディ
カプリオがお前の頭へ侵入する」「渡辺謙
がお前の頭へ侵入する」のキャッチコピー。
こんなものも有りかと納得し帰ってきた。
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「トトロもいるでよっ!」
【玩具物語 悲しき棄民】
「トイ・ストーリー3」は第1作目から10
年後。おもちゃ達の持ち主であるアンディ
は17歳になり大学進学に。アンディは引っ
越しに際して、カウボーイ人形のウッディ
だけを持っていき、アクション人形のバズ
の他のおもちゃたちを屋根裏に入れようと
するが誤ってゴミに出されるが、地元の託
児施設「サニーサイド」に入り込む。乱暴
に扱う年少の子供たちが集う部屋を嫌った
おもちゃたちだが「サニーサイド」が強い
人間不信を抱えるぬいぐるみのロッツォに
よりおもちゃの牢獄と化していることを知
りウッディは戻ってきて彼らを無事助ける
ことに成功するという筋書きだ。
彼女が観たいというので夫婦割引で朝から
彦根ビバ・シネマだが夏休みとあって観客
は多かった(同時上演の「借りぐらしのア
リエッティ」は息子達が観ているので景気
のいい話だが)。米国に制作発注すること
た原作・設計に特化する選択肢もあるが、
日本のアニメの3D ・ CG 技術の遅れは明確
になっている。ともあれ、いつもながら視
聴覚の情操教育としもってこいだし“見捨
てられる”作用感情のリアリティさは、大
人社会にも十二分に通用する。さらに、お
もちゃ達からみた「鳥瞰」「虫瞰」の映像
細部へのこだわりに改めて感心した。
例えば、ごみ収集車の内部やゴミ焼却場の
分別コンベヤーや天井裏の収まり構造など
詳細に隅々まで気を入れ丁寧に描写られて
いる。ディズニーが映画を通して「教育と
はこんなに丁寧にする行為なのか」という
感動を改めて教えてくれた作品だった。
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