太陽電池の開発の仕事から離れ既に3年が過ぎ去った。改めて振り返る作
業をしていたところ「太陽電池の製造方法及び湿式エッチング装置」をみ
て驚く。そして、なぜか、30年前、中国から伊丹国際空港空港へ帰国し、
出迎えにきていた両親に抱かれていた息子を我が手に抱いて、暫くして不
安にかられて泣き出したのだがそのシーンがフラッシュ・バックした。
カラーテレビ受像機の部品であるシャドウマスク製造プラントの検収がそ
のミッションであったが、マスク原版のガラスクリーン製造方法を変えず
にいかに早く検収するかにあった。中国側からは「フッ酸-硝酸」の自動化
の打診らしきものがあるもののすべての工程のやり直しに関わり「時間×
コスト」のリスクが高いため半ば強引に切り上げてきたからだ(正確には
契約には含まれず、こちらサイドの忖度という意味)。
それでは、その特許はというとちょっと面倒だがつぎのようなものだ。
実用化されている結晶系シリコン太陽電池は、p型半導体基板の表面側即ち
受光面側に、POCl3(オキシ塩化燐)もしくはPSG(燐珪酸ガラス)液等の
n型の不純物拡散材料を用いた熱拡散法により、接合層と呼ばれるn型半導
体層を厚さ0.3μm程度に形成し、p型半導体基板と接合層の界面にPN接合を
形成する。さらに、受光面側には櫛状の金属電極、他方の裏面側のほぼ全
面に金属層が形成する。より光電変換効率を高める工夫には、接合層の深
さは極力薄くし、受光面側シリコン表面に微小な凹凸(テクスチャ構造)
や反射防止膜の形成、裏面側では、裏面電界層等を形成する工夫がされて
いる。
【符号の説明】
1:p型のシリコン基板(半導体基板)2:n型半導体層 3:反射防止膜
4:Ag電極(表面電極)5不活性膜 6:l電極(裏面電極)
7:P+領域 9:裏面エッチング工程前の半導体基板 10:湿式エッチング
装置 11:エッチング槽 12:搬送路 13:搬送台 13a:突起 14:噴き
付け機構 15:エッチング液供給機構 16:噴出ノズル(噴き付け口)
17、17a、17b:噴出ヘッド 18:噴出ヘッド 19:管路 A:停止位置
B:搬送台の停止位置から離間した領域(半導体基板が浸漬している領域
外)
裏面で光反射を高めるためシリコン面を平坦化する必要があり、その方法
としてフッ酸と硝酸の混合液であるフッ硝酸のようなエッチング液を用い
てシリコン面を平坦化する方法がある。フッ硝酸はエッチング後のエッチ
ング能力が顕著に低下するため、同液がシリコン面に滞留することにより
シリコン面全体の均一性が損なわれるので、フッ硝酸を攪拌することで、
シリコン面全体を均一にエッチングする。
半導体基板の受光面と反対側の裏面を湿式エッチングにより平坦化する裏
面エッチング工程で、受光面を被覆して前記半導体基板をエッチング液中
に浸漬させた状態で、半導体基板が浸漬している領域外にあるエッチング
液を裏面に噴き付ける。
太陽電池が大面積になるほど、基板面内の均一性の保持が困難となる問題
もある。一例として、基板の大きさが100m角、厚さが100~500μm、電気
抵抗率が0.5~50Ωcm、より好ましくは0.5~10Ωcmのp型の単結晶基板を
用いる。
未処理のエッチング液、或いは、溶けたシリコンが希釈されたエッチング 以上のようなものだが、大面積化に対応するため、枚葉式ではワーク自身
液が噴出ノズルから裏面に向けて噴き付けられ、シリコンを溶かしたエッ
チング液が半導体基板の裏面近傍から押し出されて、エッチング液の上下
方向への攪拌が促される。半導体基板の裏面へのエッチング液の噴き付け
を2分以上行うと、裏面に形成されたテクスチャ構造が平坦化されるとと
もに、n型半導体層が除去される。4分以上経過すると、裏面は鏡面状に
なる。尚、本実施形態では、テクスチャリング工程でp型シリコン基板の
両面にテクスチャ構造を形成したが、受光面側にのみテクスチャ構造を形
成する場合には、裏面エッチング工程の処理時間は、フッ酸と硝酸の割合
が1:5のフッ硝酸を使用する場合で、約30秒程短縮される。
※わたしたちのフッ酸濃度は数倍高かったが。
を動かさななければならず装置が複雑となりコストが嵩む。そのためワー
ク自体を動かすことなく、バッチ(回分)処理しようとするものである。
30年前このような自動機があれば即、ユーザ要望に応えることができたか
もしれないが、それはタラネバだ。
82年以降、情報通信技術の躍進、デジタル革命勃興し席捲しつつあり増設
ラッシュにはいると共に、半導体(無機エレクトロニックス)の製造方法
の中核として、写真製版適用技術(フォトファブケーション)、フォトリ
ソグラフィ(Photolithography)がありそれを体現していたのがわたし(
たち)の営利組織だったのだ。その時点で大きな指針(ストラテジックマ
インド)があれば間違いなく世界一の製造装置メーカになっていたのだが。
話を戻そう。太陽光発電の世界敷設は人類の夢である。そのためにはコス
トは逓減させていかなければならないことは言うまでもない。
【Intermission】
蝉のしくれに日傘を開く
次の小路は何処へ繋がる
戻れない道引き返すたび
咲かない花を時は知らせる
松井 五郎