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極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

新自由主義からデジタル・ケイジアン

2013年03月14日 | 時事書評

 

 

 

 

 

【新たな飛躍に向けて-新自由主義からデジタル・ケイジアンへの道】 

ここまで、ポストフォーディズム-アンソニーギデンズの『社会学』で定義されるところの
フォーディズムの方式が特徴づけるような大量の工業生産から、特注製品にたいする市場の
需要を満たす、もっと融通性に富んだ生産形態へ移行することを記述するための一般的な用
語-として登場した新自由主義の歴史的背景を、デヴィッド・ハーヴェイの見識(『新自由
主義-その歴史的展開と現在 』 20070310 渡辺 治 監訳、作品社、395p 2600)を通して
考えてきた。そして、新しいエリート階層の出現と権力支配の再形成-資本による収奪過程
-ととらえその支配過程で発生する抵抗運動、あるいはそれまでの資本に支配された新自由
主義運動とは異にする、新たなる自由運動のローカルでありグローバールな様々な運動との
結合により新たなる秩序形成に向けたうねりをデヴィッド・ハーヴェイは「オルタナティブ
に向けて」として自由の展望を見据えた。
そのことを踏まえつつ、「オルタナティブに向け
て」の一つの視座を提起できればと考え以下の構成で寄稿する。

1.タブーと経路依存性
2.
複雑系と経路依存性
3.
複雑系と計量経済学
4.ケインズ経済学の現在化
5.
新自由主義からデジタル・ケイジアン

 

 【タブーと経路依存性】

タブーについて

寄稿にあたり次の三点について確認しておきたい。昨年3月16日に他界した日本の思想家吉
本隆明の言葉-その一つが、「人類は根拠のないタブーをつくらないと済まない」(吉本隆
明・茂木健一郎共著『「すべてを引き受ける」という思想』、光文社)-という問題提起で
ある。


 ぼくの考え方からいうと、君たちはちょっと思い違いしているんだよ、といいたいとこ
 ろがあるわけですが、では、どうすれば思い違いではないといえるのかとなると、はっ
 きりした解答を見出すのはなかなかむずかしい。いまの段階ではちょっとむずかしいな
 と思います。ただし、ホスピス医や進歩的な政治家が「いいことだ」と思っていること
 は、じつはけっしてよくないことなんだということだけは自分なりに確信があります。
 人間というか人類には、根拠のないタブーをつくらないと済まないようなところがあり
 ます
。そういうところだけは動物の習慣性と同じで、その点ではまず動物性を脱してい
 ないといえます。日本でいえば、被差別問題のようなものがありますが、差別
 に何か根拠があるのかといえば、何もない。人種的にもないし種族的な理由もない。そ
 こで理由とされているのは職業です。あの人たちは牛とか馬とか、動物を殺すことを職
 業としていて不浄だと決めつけるわけですが、ぽくが調べたところでは、の人は農
 業がいちばん多いんです。だとすれば、動物殺しも根拠にならないし、それに動物を殺
 すのがいけないというなら食うほうがなおさらいけないじやないか。食うときだけは食
 っておきながら、動物を殺すのはいけないなんて、そんな馬鹿な話はない。では、
 差別に何の根拠があるのかといえば、人間にはタブーをつくらないと生きていけないと
 いう要素がまだ残っている、ということ以外には何も根拠はない。これがヨーロッパだ
 と、ユダヤ人問題になります。もちろん、これにも何の根拠もありません。ユダヤ人は
 金権主義でお金を貯めているというけど、それも嘘です。なかには大金持ちもいるでし
 ょうが、大学者や大芸術家も大勢いて、ユダヤ人がとくにお金のことばかり考えている
 わけではない。ユダヤ人問題の本質は宗数的なタブーです。そこへ優生思想などを持ち
 出して、短期間に片づけてしまおうとしたのがヒトラーですが、まったく馬鹿なことを
 したとしかいいようがありません。ここはマルクスなどもいちぱんこだわった問題です。
 つまり、当時の進歩派の言い方によれば、「宗教なんていうのはみんな迷妄なんだから
 キリスト教もイスラム教もユダヤ教も全部すっ飛ばして唯物論的にすればいい」。これ
 が当時の進歩派の考え方ですが、マルクスはひとりそれに反対して、「そうじゃないん
 だ」といった。要するに、宗教をすっ飛ばすことと人間的な解放はまったく別の問題だ
 どいうのがマルクスの考え方でした
。当時の進歩派と比べれば、はるかに保守的な考え
 方ですが、ぼくは当時にあってもマルクスの考えのほうが妥当だと思います。

 

これに対し、茂木健一郎は「利己的な本能と理性の役割」という観点から次のように補完す
るように質問する。


  生物学者のリチャード・ドーキンスは『利己的な遺伝子』(紀伊國屋書店)という本の
 なかで、「そもそも生物というものは利己的なものであって、利他主義だとか平和主義
 だといったことは、生物学的な原理としては希望しえない」という意味のことを書いて
 います。また、生物は仲間同士殺し合わないのに人間はなぜ殺し合うのか、といったナ
  イーブな議論がありますけれども、実際には生物はお互いに殺し合うし、子殺したって
  あります。その意味では、人間が核兵器をつくって、人類という種自体をお互いに殲滅
  し合うようなことになってしまったのも生物の進化のなかではごくふつうの振る舞いだ
  といえると思い ます。しかしその一方で、ドーキンスは、「人間は理性、理念、理想と
  いったものも手に入れた」といっています。ということは、われわれ人間は古典的な意
  味での生物から一歩踏み外している(あるいは、踏み出している
)ところがあるから、
  平和とか非職といったことも考えられるのだということになります。これまで大勢の編
  集者と会ってきて、わたしが前々から感じていたのは、いわゆる進歩的な左翼の人より
  も、右翼っぽい人のほうが生き物らしいということです。声高に日本を主張する人たち

  のほうが生き物としては勢いがあるせいだと思いますが、それはドーキンスの利己的遺
  伝子の理論に照らし合わせても当然の話です。しかし、生物としての本能が出すぎてい
  るきらいもあって、たとえばナチスに利用されたニーチエの「生命哲学」あたりまでさ
  かのぼって考えると、ある種危険な流れでもあるように感じます。同様のことは、一般
  社会の生活感情についても見られます。つまり、最近の傾向はちょっとナショナリズム
  的な回路と共鳴しはじめているような感じがします。そのとき、知識人という存在は伝
  統的に、生物的な本能からは少し離れて、理性とか理念に基づいて社会の流れに警告を
  発する役割を担ってきた側面があると思いますが、いま、そうした知識人の役割につい
  てはどう思われますか。

吉本隆明は、「自然と倫理」との関係性について、天然自然というものと倫理や善悪が結び
つくところがあるとすれば、そこはどうなっているんだ、という問題の立て方をすると次の
ように答える。

  ぼく自身、ナショナリスティックな部分をたくさんもっていて、スポーツでいえば、ボ
  クシングでもサ
ッカーでも何でも構いませんが、気がつくとひとりでに日本を応援して
  いるということがよくあります。おっしやるとおり、動物としての人間というふうに考
  えれ
ば、人間もほかの動物とそんなに懸け離れているわけがないから、利己的な遺伝子
  の過
程にあるのだという考え方が成り立つと思います。ただしぼくは、そういう言葉は
  使わ
ないで、それが「生物的自然」だといっています。現在までの人間の遺伝子や地域
  的特
性、あるいは風俗習慣などから見て、スポーツであれ何であれ、地域社会の人を応
  援してしま
うのはきわめて自然だという意昧にもなります。もっとも、人間も動物もそ
  う懸け離
れているわけではないといってしまうと、そうだよなあとなって、そのあとが続かない。
   だからぼくは、強いてそういう言い方をしないようにして、それは自然と倫理の問題だ
  とか、善悪の問題だとか、そういう言い方をするようにしています。だから、
現在まで
  の段階だったらナショナリズムは当然だということになりますし、ナショナリズム以外
  のことをいう
人間はみなどこかで人工的にごまかしているか、あるいは知識人的にいってい
   るか、理性なるものだけを取り出していっているか、そ のどれかだということになります
。ぼくが
  よく付き合った詩人の谷川雁などは、「もし黒人と白人と黄色人がボクシングの選手権
  を争っていたら、絶対におれは黒人を応援するな」といっていました。そして、「日本
  人と白人が戦っていたら、もちろん日本人を応援する」と続けていましたけれども、そ
  ういう谷川雁の言い方には人為的な「何か」が入っているわけです。その「何か」とい
  うのはわかっていて、大きくいえば理性が
入っている。あるいは知識、見識が入っている。
   もっと小さくいえば、政治性が入っているし、党派性が入っている。でもぼくは、これ
  から先のこ
と、つまり未来のことを考えたいものですから、「人間と動物」といった言
  い方や党派的な言い方はしないで、むしろ「自然と倫理」といった言い方をしたいと思
  っています。それはどういう意味かといえば、先に三木成夫さんや安藤昌益のことをし
  やべったときにいいましたように、天然自然というものと倫理や善悪が結びつくところ
  がある とすれば、そこはどうなっているんだ、という問題の立て方
をしたいということ
  です。

それを受け答えるように、茂木は、ドーキンス自身、生物学的な、言い換えれば進化論的な
議論がすべてではないと考えています。『利己的な遺伝子』のなかでは、「そもそも人間が
種自身の
自己保存を図るということでさえ自明ではないのだ」と引用し、種の自己保存は自
明ではないことを認めるが、これに対し吉本は、社会・政治問題となっている「格差社会」
という言葉を引き合にだし、ふつう政治家は政治意識、社会運動家は社会意識を第一の問題
として、それに対してどういう対策をとるかという発想をするわけですが、それではダメな
んで、自己意識を社会化することが正しい問題解決なんだと説くが(「第四章 自己意識を
社会化す
るとはどういうことか」)、ここのところが、デヴィッド・ハーヴェイの考えと真
正面に異なるように思える点であり、あるいはに対する運動論の創意工夫・論考の深耕の是
非が問われると考える。この「自己意識を社会化する」ということが二つめの問題提起だ。


  こうした問題を政治問題や社会問題に広げるとします。そして、いまの政党はどんなこ
  とをいう だろうかと考えてみると、このごろは「格差社会」という言葉が流行してい
  ますから、た
とえば「格差社会の状態がますます進行しつつある」というかもしれない。
  「だから、われわれの党はそこをなんとかしたいと思って格差是正をいつでも心がけて
  いる」というだろうと思いますが、ぼくはそれではダメだと思います。何かダメかとい
  うと、それは口先だけで、格差社会に押しつぶされている人をおれたちが救ってやろう、
 
といっているだけだからです。では、どうすればいいのか。そんなこと、おれに聞かれたってわか
   らないけど、少し考えていることはあります。それは、自己意識を社会化するところへいかない
   とダメなんじやないかということです。ふつう政治家は政治意識、社会運動家は社会意
  識を第一の問題として、それに対してどういう対策をとるかという発想をするわけです
  が、それではダメなんです。やっぱり、自己意識に入ってくるさまざまな否定や肯定、
  あるいはそんなことは想定できるわけがないよというような思い方、そういうものを全
  部ひっくるめた自己意識を社会化することが必要だと思います。そういう姿勢を政治家

  がとってくれれば、少しは可能性があるといえるわけですが、おそらくなかなかそうは
  ならないでしょう。自己意識を社会化するとはどういうことか、ということをもう少しいってみ
   れば、自分のたずさわっている領域、文学なら文学、脳科学なら脳科学の領域で感じて
  いることをできるだけ広げようとすること、それも実感から離れないで広げていくこと
  です
。これを言い換えれば、ただのっぺらぼうな社会意識なんて、そんなものは初
めか
   らないよ、というその意味で面白いと思ったのは、小泉純一郎が「おれは(総理として
  の)退職
金をもらわないことにするから、全国の知事さんや市長さんたちも退職金を辞
  退したらどうだろうか」といったことです。あれは結構いいことです。総理大臣も全国
  の知事や市長も退職金を返上すれば、リストラされた人の何十人か何百人かは、生
活上
   一年間ぐらい延命できます。けっして悪い発想ではないし、しかも保守政府の責任者がそういう
   ことをいったから、ぽくなんか、おお、小泉って時々いいこというじやないかと思いました。本来
   の保守的な政治家だったら、「そんなことは構うことはないんだ」と、そういうに決まっています。
   しかるべき地位にいるわけだから、知事だったら数千万円とか、総理大臣だったら一億円とか、
   それぐらいの額の退職金はもらえるわけで、「退職金を返上する」なんて言い出すはず
  がない。
ところが小泉純一郎みたいな人は半分素人だから平気でそういうことを言い出
  すわけで、こう
いうふうに、それぞれの人がそれぞれの専門領域で感じている自己意識
  を社会化するやり方に通路をつけられれば、それがいちばんいいことだと思います。通
  路をつけるためには、単に社会意識というものがここにあって、政治意識はあそこにあ
  って、それから文学みたいに内向的なものは内向的なところにあって……と、そういう
  ふうに個別的に考えていてはダメだと思います
。ぼくらだったら、自分の職業にしていること
   になります。文学の領域で感じている問題意識や経験的なものを政治化したり社会化し
  たりする。文学にたずさわりながら体験したり実感したりしたものをひねくりまわし、
  そのひねくりまわしたものから類推して何か思い当たったことをいったり書いたりする。
  さしあたってはそうやって通路をつくっていく問題だと思います。もっとも、われなが
  ら「自己意識を社会化する」とか「自己意識を政治化する」というのはあまりいい言い
  方ではないと思います。そんな言い方では、「いったい、おまえは何をいっているんだ」
  といわれそうですが、ぼくがいいたいのはそういうことです。

最後の三つめの問題提起が、「科学技術の使い方が問題になっている-古典的知識性は淘汰
されたか」である。
                      

  科学の発達はちょっと止まりようがないからどこまでいくか、ぼくなんか、もうキリが
  なくいきそうな気がします。そうだすると、古典的な知識では片づかない。ぼくはまた
  社会的なことと結びつけて考えるわけですが、昔は資本が剰余価値を生み出すから、資
  本家はそれを自分の利益として、働く人には部分的にしか与えなかった。それがもう少
  し発達すると、今度は国家が資本を独占して国家独占の資本主義になっていく。こうい
  う言い方で済んできたけれども、いまはそういう考え方では済まないぞという感じがし
  ます。どういうことかといえば、何か権力的なものが介入してくると怪しげな方向にい
  ってしまうということではなく、文化とか文明の発達に役立つような装置があれば、そ
  れをだれがどう使おうと、それ自体が権力なんだというふうに変わってきていると思う
 
のです。そう考えたほうがいいのではないか。いや、そういうことを考えに入
れなかっ
   たらダメじやないかと思います。ただし、権力といっても、それは昔のような強権という意味では
   なくて、要するに人が精神的にでも肉体的にでも外界に働きかければ外界が価値化してしまう
  から、人文系の文化であっても科学技術と結びつく場面があれば、必ずそれは権力化す
  る。そ
のもの自体が権力になっていくということです。それにしろ、それはもう善悪の
  問題、倫理の問
題ではなく、文化自体か権力だとか、文化が科学技術と結びつくかぎり
  権力化すると考えるべ
きではないでしょうか。ここのところは用心のしどころです。だ
  から、資本主義の科学技術だけかおかしいのかというと、それはそうではなくて、資本
  主義であれ社会主義であれ、科学技術の使い方自体が問題になっているのだというべき
  でしょう。いまのような使い方をしていると、自分では獲得したのが知識そのものであ
  るかのように思っていても、じつはそうではなくて権力だったというふうになっていく
  はずです。

以上、「人類は根拠のないタブーをつくらないと済まない」「自己意識を社会化する」「科
学技術の使い方が問題になっている」の三つの問題提起は、デヴィッド・ハーヴェイが想定
する内容と深く関係することであり、局面では真っ向から対立問題をも含んでいるように思
える。それはどこからくるのか、「恣意的自由の拡大」(大道無門)に象徴されるポストフ
ォーディズムへの親和性、そのことはまた、新自由主義の誕生の基礎的な歴史的な背景ある
いは社会的基盤として、すぐさま全否定へとは向かわないことの暗黙の了解事項のことのよ
うに思える。そのことを踏まえ、サブプライム・リーマンショックに現れた英米金融資
本主
義の破綻、地理学的不均衡を伴いつつも、世界的規模で進行する資本の収奪あるいはその結果と
しての所得格差の拡大などにあらわれている抑圧とその解放方法について、あらゆるタブーを排除
しつつ考察を進めていく。

 

【経路依存性】

技術進歩と経済学のアプローチ

ここからは、主に経済についていわゆる経済学の流れについて、香西泰(1997年当時、日本
経済研究センター理事長)の講演『日本産業の新秩序』をもとに考えてみる。

これまで経済学では、技術を直接扱わずに生産関数を媒介とし、投入と産出の関係にのみ絞
って問題を考えてきた。投入や産出は具体的な数値であり、容易に操作できるため、技術知
らずのエコノミストも、こうして技術進歩を議論することができた。新古典派の秩序とは、
投入産出における代替関係や限界生産力逓減の結果、市場に均衡が存在し、その中で価格メ
カニズムが有効に働くことを前提にしたものだ。このような秩序は、比較的小規模の工場で
親方と職人がいる組織(イングリッシュモデルとかイングリッシュシステム)に対応したも

のであり、まさに19世紀末、アルフレッド・マーシャル(Alfred Marshall)の教科書でイ
メージされた組織だが、時代とともに、新古典派モデルは実態と乖離しはじめてくる。この
新古典派モデルに対する批判として、ガルブレイス(John K.Galbraith)の新産業国家論が
でてくる。経営と資本とが分離した大企業において、経営者は独立したテクノクラートとな
り、独自の長期計画をたて成長追求する。また、大企業は自己金融と管理価格によって市場
をコントロールすることができるようになる。これは、19世紀末から20世紀に成立したフォ
ードシステム(アメリカンシステム)のような寡占企業による大量生産システムに対応した
ものだが、しかしながら、ピーター・ドラッカー(Peter F.Drucker)は、自己安定的テク
ノストラクチャーという仮定に対して批判を展開した1970年代を境に、大企業による寡占体
制は現実に合わなくなった。ベンチャーキャピタルや資本市場の役割が大きくなり、一種の
ゲリラが大企業を餌食とする。そういう現象が、産業界に続出してきたからであり、あたか
もベトナム戦争で、非常に近代化されたアメリカの大軍が、ゲリラに敗退せざるをえなかっ
ように。

新古典派モデルや、寡占体制モデルに対して、新しい考え方が生まれその一つは、ブライア
ン・アーサー(W.Brian Arthur)を代表とする複雑系の経済学であり、彼の著作である"In-

creasing Returns and Path Dependency in the Economy"(1994)における主要なアイデア
は、収穫逓増と経路依存性の2点であった。実はこの複雑系という考え方にわたしが初めて
触れたのは、東京大学公開講座『混沌』、東京大学出版会であり、後で掲載する『複雑系と
経路依存性』で登場する塩沢由典が「複雑系経済学は、基本的には日本で始まった経済学で
ある」と指摘している通り、経済学として体裁を整えてくるのは90年代半ばよりであるが、
従来の経済学では、収穫逓増は異常な現象であった。つまり、収穫逓減でなければ均衡は存
在しない。もし収穫逓増なら、生産は拡大しやがて独占状態になる。その結果、市場経済は
機能しなくなる。しかし、アーサーは、現在の経済社会では収穫逓増の方が、むしろ普遍的
であると主張。

また経路依存性は、どの均衡へ収束するか、その経路途中の小さな事象(スモールイベント
)、偶然に支配されるとし、そのスモールイベントの積み重ねの結果、ある均衡へ収束する
という考えにあり、従来理論の最初から合理的にある均衡へ収束するわけではなく、均衡が
最も合理的か否かも分からないと考える。この立場は、ポール・クルーグマン(Paul R.
Krugman)の産業立地論の、当初の立地は偶然の要因が非常に大きいが、そこである産業が
発達すると、そこに次の産業が興り、集積の利益が発生するとクルーグマンも考える 。また、

収穫逓増とか経路依存性という考え方は、例えば費用逓減(収穫逓増と同義)という考えは
村上泰亮の『反古典の政治経済学』(1992)におけるキーコンセプトであり、収穫逓増を無
視し、新古典派パラダイムに固執していれば、開発政策の意味を見失ってしまうと指摘して
いる。さらに経路依存性は、青木昌彦と奥野正寛『経済システムの比較制度分析』(1996)
におけるひとつのテーマであり、選択の過程で物事は決まっていくのであり、あらかじめ均
衡が存在するのではないと説く。さらにここでは、「補完性」という概念を提起する。みん
なが右を歩くなら右を歩いたほうが得だという戦略的補完性や、どこかで終身雇用が始まる
と、転職は不利になるためやがて経済全体が終身雇用になってしまうという制度的補完性で
ある。補完性という概念は、複雑系の考え方と非常に近い。


日本の経済学者たちが、これらの概念に早くから注目していた背景には、フォードシステム

に対抗するトヨタシステムという生産システムの理解に有効だったという理由があり、終身
雇用とメインバンク制との間に補完性が生まれ、ひとつのシステムができあがり、単純な経
済学の教科書における均衡モデルとは異なった日本のシステムの一種独自性があった。ま
た、
それと関連するようにデファクト・スタンダードも、経路依存性や補完性があり、タイ
プライターの文字配列がよく引用されるように、最も合理的配列というわけではないが、タ
イプライターの設計上の必然性が、デファクト・スタンダードに化けた結果、ある種の安定
性を確保したと考えられているが(仮にこの文字配列が、非合理的なら、別のシステムが登
場していたはずである)、偶然どちらかになったのは、サイコロで決めて良いような問題と

考えられたし、また、VHSとベータの競争も、技術的に絶対な優位差がない故にの結果になっ
たと考える。その選択の質は、ソースか醤油かということではなく、醤油の薄口か濃い口か
の差異に
その必然性が由来すると喩えられようなものであるが、決定的に優れている場合で
も、そうでない方
が結果的に選ばれることもありうるということは、前述した吉本隆明の実
例のような「タブーの種」で
ある土俗的な類に似ている。

※ごくささいな「歴史的な偶然」(historical accident)(初期設定条件)によって、技術
の普及経路(path)が後世まで決定されること。依存性(dependence)とは、別の道を選べられ
なくなることの意味。またこうした普及現象については、「同じ規格や技術を使っている人
が多いほどその効用が増す」というポジティブ・フィードバックが働き、さらに、いくら他
の技術が効率的に優れていても、現在の方式を捨てて適応するためのスイッチングコストが
かかる。そのため、ある程度の普及率(クリティカル・マス)を超えると、デファクト・ス
タンダードの地位を確立するという「ロックイン現象(偶然に過ぎないものが不動になるこ
と)」が生じやすい。

さらに、興味深い議論として、ウィナー・テイク・オール(Winner-take-all)がある。スピ
ードが競争の要な要素となった結果、これまでならば2番手、3番手でも結構やっていけた
ものが、瞬時に勝負がつき勝者がその利益を全てを取ってしまうことがありえる。このため、
新古典派は完全競争を念頭に置き、ガルブレイスはある種の固定的な寡占を考え、それに対
し、収穫逓増や経路依存性のモデルでは寡占化していく過程が描かれた。このウィナー・テ
イク・オール型には、瞬間的な独占形成がイメージされるが、ウィナー・テイク・オールで
ひとたび独占状態が成立しても、急速な技術革新の中では新たな競争が次々と発生し、次の
競争では敗者となる可能性もあり、ここでの独占は安定的ではないといものだ。このように
、経済学者が、全く現実を見てなくはなく新しい考え方を問題提起しアプローチしてきたが
、これまでみてきた様々なモデルで日本産業の新秩序を十分描ききれなかった。例えば日本
経済の高コスト問題で、伊丹敬之は日本の文化特性由来の、問題を指摘していが、なぜ日本
企業はオーバースペックになるのだろうかと。文化的要因ではなく、決定的なことは日本の
設計技術が弱く、そうならざるえないというが、そうであるなら、データの互換性が進展す
る中で、企業内技術・熟練などへの評価が変化する可能性があり、品質引責がとれる信頼で
きるとして評価されてきたものが、ある種の過剰な独占利潤の消費のあり方であり、設計も
オープンなものではないと(自惚れ・消費者不在・マニアック)、批判されることにもなる
ことは-液晶家電競争のシャープ・ソニー対韓国・中国系企業の例のような結果となり、各
モデルによって、その評価が大きく違ってくるように、同様に日本産業のシステムを評価す
るにも、全く反対の評価が下されることがあり、次の3点を考慮することが重要だと指摘さ
れている。

1.まず、独占に対する考え方:ウィナー・テイク・オールや、収穫逓増では市場は独占に
到るが、その独占とは不安定なものであり、またいわゆる独占資本とは異なったシュムペー
ター(Joseph A.Schumpeter
)流の創業者独占である。今後独占を考えるにあたって、競争に
対立する独占という発想は改める
必要がある。


2.理論モデルの適用範囲についての注意:産業ごとに適した生産システムは異なるであろ
う。ポ
ーター(Michael E.Porter)が主張するように競争優位の観点からのシステム評価も
必要である。
アウトソーシングとホームメードとの間は完全な代替関係にあるのではなく、
バランスをとった補完関
係にあるのではないか。そのバランスを見極める必要が、今後ます
ます高まる。

3.所得分配の問題:例えば、日本は所得分配が平等だという考え方が存在する一方で、能
力を正
当に評価しない結果としての平等であるという評価もある。低所得の間は平等が要請
されても、ある
程度の生活水準が達成されたあとは、むしろ所得格差が存在する方が正常で
はないか。また真逆逆
格差拡大による景気停滞も同様にこの問題は、様々なモデルを通じて
多角的に評価されなければな
らないだろう。

今、日本で起きている大きな技術革新や環境変化の中で、どういう形で安定性とリスクテー
キングの
バランスを取っていくのか。つまり、所得の平等と経済発展との間のポートフォリ
オセレクションをどの
ようにつけていくのか。今後このことが、新しい産業秩序の決定的な
要素として、ますます重要になっ
ていく。

                                                    この項つづく

 

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火星と米国の生命

2013年03月13日 | 日々草々

 

 

米航空宇宙局(NASA)は12日、火星で活動中の無人探査車「キュリオシティー」が採取した岩石
を分析し、古代の火星は微生物が存在できる環境にあったとの結論に達したと発表した。NASAに
よると、岩石からは硫黄や窒素、水素、酸素、リン、炭素など、生命の生成に必要な元素が含まれて
いた。キュリオシティーは先月9日、太古に川が流れていた可能性のある平らな堆積岩の広がる場所
で、ドリルを使って岩盤に穴を開けて分析用の岩石の破片を採取し、車内の装置で生命の痕跡につな
がる成分の分析を進めていた。NASAで火星探索計画を担当するマイケル・メイヤーは、火星に生
命が存在できる環境があったかとの質問に「そうだ!」と答え分析結果に自信を示したという。

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※ ↑ 埋め込みコード 

岩石に硫黄や窒素、水素、酸素、リン、炭素など、生命の生成に必要な元素が含まれていたから生命
が存在できる環境かどうかは、素人にはよくわからないところがある。だからというわけでhないが
地球に存在する生物(下等生命体)を移植してみてその挙動を最小実験モデルを遠隔観察してみては
どうかと思うがどなんだろう? 

 

そんなニュースを見ていると、そのページには、米中西部シカゴ南部の住宅街で11日、駐車中のミニ
バンの助手席に生後半年の女児を寝かせ、父親(29)がおむつを交換していたところ、何者かが2人
に発砲、別の車で逃走した。5発の銃弾を浴びた女児は12日、搬送先の病院で死亡したとの記事が掲
されている。犯人が狙ったとみられる父親は重体。母親(20)はその場におらず無事だったが、女
を妊娠中の昨年春、銃で足を撃たれる被害に遭っていたというから、何かの怨恨によるものかもし
ないが、毎度のことだが「銃犯罪深刻」とはいえ、今回はオバマ大統領が進める銃規制-(1)乱
事件で使用された半自動式ライフルなど殺傷能力が高い攻撃用銃器の販売や所持の禁止(2)弾倉
装填できる弾薬を10発までに制限(3)すべての銃器販売における購入者の犯罪歴など身元調査
義務づけ(4)銃の密売や横流しの犯罪化-に対する世論調査では8〜9割の支持を得ているいう
が、米国民の生命に対する尊厳意欲は、NASAの火星生体探索意欲ほどに盛り上がらなくて良いの
かという、極めて、場違いな比較かも知れないが「銃権力社会」(武力入植文化)を根底から崩す運動
の遅延と強烈なコントラストとして映る。




 

 【ブログと短歌の危機?】

いや~~、フルタイムに頑張っているわけではないが(睡眠+食事+家庭行事?!+ジムトレ=12時
間)、半日は籠もって作業しているが、これが半端じゃない。眼精疲労でこれが限界なのだが、昔の
疲労経歴なら12~14時間は毎日こなせているだろうが(賃労働時代なら、さすが8時間+4時間を3
ヶ月以上が限界。年間にすると残業1200時間に相当し、平均的なサラリーマン-デスクワーク主体-
ならこれを超えると身体を壊すだろう。壊さないなら、その仕事の負荷が平均的値を下まわっている
-もっとも、規路依存性(=経路依存性、定型性)の高い仕事なら、継続可能かも知れないが-つま
るところ、ブログや短歌を書いている余裕はまったくといってない。このようにそれでも書こうとし
てはいるが、誤字・脱字・書き違えは増え続ける一方だ。


優先すべきは、いまのデジタル革命のコアテーマである、持続可能なエネルギー技術開発(経済学テ
ーマは4月エンドまで続く)。


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ポストケイジアンのシャンペン

2013年03月11日 | デジタル革命渦論

 

 

 

     

この間の沢田研二の「カサブランカ・ダンディ」の続き。映画『カサブランカ』。主人公のハン
フリー・ボガートとイングリッド・バーグマンの共演はに暫し、郷愁にひたる。第2次世界大戦
の真っただ中に作られた映画だが今観ても全然古さを感じさせない(が、二度と戻らない時間)。

ところで、リック(ハンフリー・ボガート)の部屋でシャンパンを開けながら、謎の女性イルザ
に尋ねる。「君はいったい何者? いままで何をしていた?」「聞かない約束よ!」パリのクラ
ブ「オーロラ」でピアノ弾き、サムの。時の過ぎゆくままを聴きながら、くわえタバコのリック
ぱお気に入りのシャンパンのコルクを抜く。「どんどん飲めとさ。ドイツ人にシャンパンをやる
のはシャクだから」サムが答える。「ちょっとは憂さを晴らせまますよ」とイルザにグラスを差
し出しながら、リックがささやく。「君の瞳に乾杯(Here’s to looking at you, kid)」
この時、リックが手にしていたシヤンパンはマム社の「コルドン・ルージュ・ブリュット」だっ
た。

 

 


 

  

 


【草稿 新自由主義からデジタル・ケイジアンへの道

市場経済の進歩・発展を駆動するものが競争にあることは、ほとんどすべての経済学者が一致し
て認めるが、市場経済における競争がいかなる場所でいかなる具合になされるかについて、新古
典派と複雑系経済学とでは、大きな見解の隔たりがある。その原因は、新古典派経済学が「価
格理論」とほぼ同じ範疇に存在しているため、競争に関する理論的な説明は、ほぼ価格競争とし
て説明される。完全競争、純粋競争といった概念が価格を軸としていため、これが競争の実態を
大きくゆがめていると指摘される。塩沢由典(『複雑系経済学の現在』)によれば、新古典派理
論の競争概念をゆがめているのは、需給均衡という考え方にあり、より正確には、価格を独立変
数とする需要と供給とが定義され、それらが一致する価格体系に市場が帰着するという一般均衡
理論の枠組みが成立した古典派や新古典派の初期にその根拠があるという。経済の調整変数とし
て、ひとびとの目に見えていたもの(=信用
)は価格のみであったとし、数量的な調整は、部分
的にできたとしても、その全体的な変動を推定することの困難さがあった。そこで目に見える調
整過程として、価格による調整に焦点が絞られ上に、さらに、需給均衡の枠組みが「企業は市場
で自社製品を売りたいだけ売っている」(行動に関する最大化原理と状況の選択原理としての均
衡概念)という前提により現実から遊離すると。この反省に立ち、「複雑な状況の中での行動」
を主題とし、均衡分析に代わる過程分析という枠組み経済学のすべてを、複雑系経済は再構
成し、均衡の枠組みには理論として組み込めないの状況(収穫逓増、定型行動、追随的調整、経
路依存など)を包括する。

さらに、複雑系経済学は、基本的には時間の流れの中で諸変数の変化を追跡する分析であり、新
古典派のように「売りたいだけ売っている」という前提は不要として退け、反対に近代的企業
の生産の増大を制約している主要な要因は、市場における需要の制約にあると考え、ケインズ経
済学の根底に置かれるべき考えだったとする。つまり、
ケインズの一般理論は、限界理論の2公
準を軸としているが、有効需要の原理とうまく整合せず、第2公準を否定することから始まり、、
ケインズ経済学をミクロ的に基礎付ける試みが長くなされてきたが、企業が直面している状況を
ただしく定義できなかった。生産量と利潤を増大させようとする企業の主要な制約が製品の売れ
行きにあり、需給均衡という枠組みは、その定式においてこの状況を排除する。したがって、マ
クロ経済学のミクロ的基礎付けには、基礎的なミクロ経済学の枠組みを変える必要であり(また、
新古典派理論に基づきマクロ経済学を再構成しようとしても、理論の構造として不可能)、
ケイ
ンズ経済学は、しばしば、価格が固定的であるとの前提にたって説明され、価格調整がつねに瞬
時になされる世界では有効需要の原理は意義をもたない製品価格を下げようと、原価をまかな
える範囲では、その値下げ幅は大きなものでなく、原価を割らない範囲でどんな価格を付けよう
と、企業はほとんどつねに需要の制約に直面し、企業レベルで捉えられた有効需要の原理である。

生産容量の変更をのぞけば、価格調節の間隔は一般に数量調節の間隔より長い。そのため、価格
が固定的であるかの印象を一部に与えているが、価格が変動する世界においても、有効需要の原
理はつねに生きている。有効需要の原理は、マクロ経済においてのみ出現するものであるかの説
明もあるが、それは新古典派ミクロ経済学を前提としているからである。需給均衡の枠組みを離
れてみれば、マクロの有効需要の原理は、個別企業が直面している状況の統合された表現でしか
ないとする

  

これに対し、ケインズ経済学、とりわけポスト・ケインジアンはどのような立ち位置にあるのだ
ろうか。例えば、サミュエルソンなどがリードした新古典派総合も加わるであろうし、実際にか
れらは自分たちをケインジアンと思っている。では何が真のポスト・ケインジアンと「バスター
ド(まがいもの)」を区別する点なのか?

まず、(1)経済の全体的な枠組みを完全雇用を前提に対し、ケインズとポスト・ケインジアン
は、非自発的失業は資本制経済ではふつうに起こりうるとし、経済の活動水準を決める要因は、
将来が不確実な下での企業の投資決意、投機筋の「強気」や「弱気」、企業の財務構成、中央銀
行の金融政策など、きわめて多面的で有機的と考える。つぎに(2)教科書的な貨幣供給の外生
性と流動性選好理論を中心とする貨幣需要の組合せに代わるものとして、金融動機を介在させた
景気と貨幣供給の内生性の関係が議論され、企業の投資と財務構造の変化をヘッジ、スペキュレ
イティヴ、ポンチの三段階で説明し、景気との関連を検討するケインズ的ミンスキー理論もある。
(3)ケインズ自身はレッセ・フェールが失業を解決できない原因を主に貨幣的側面に見たが、
分配や産業間の技術関係など、もっと実物的観点から社会的・構造的問題に取り組んだスラッフ
ィアン、オリカーディアン-スラッフィアンの多部門生産理論の特徴は線型の生産構造にある。
 『一般理論』出版から70年以上経た今日、正統派からは無視された感すらあったケインズは、
今回の金融恐慌で図らずも完全復活しているとされるが、複雑系経済学(あるいは進化経済学)
と相互浸潤(なんともレーニンばりの表現だが、多分に現代的なデジタル物理学の反映をもって)
する状態下にある。このように、経済システム特性として複雑系の前提を箇条書きすれば、以下
の三つのシステムの時間変化・連結・構成個体の生存に関する条件が組み込まれつつあるとでも
表現できようか。

(1)時間特性 経済の状況は、ゆらぎのある定常過程としてある(ゆらぎ)。
(2)連結特性 経済の諸変数は、緩く連結されている(ゆるみ)。
(3)個体特性 経済の個体(主体)は、生存のゆとりを持っている(ゆとり)。

さきを急ごう。以上のようなことを踏まえ、経済過程がもつさまざまな特質を組み込み、経済学
の諸問題に有益な示唆を与えるような分析方法が求められているが、定型行動のレパートリーを
もち、ミクロ・マクロ・ループの存在に矛盾しない分析ツールとしてエージェント・ベースのモ
デル分析が該当すると塩沢由典は紹介しその理由を次のように挙げる。

1、プログラム行動:エージェントの行動は、プログラムで書かれている。モデル分析では、多
  数のエージェントの相互作用を問題にするから、個々のエージェントの行動様式として、計
  算負荷のかかる最大化計算などは通常は組み込まれない。比較的簡単なプログラムで書かれ
  た定型的な行動が採用されている。意識しなくても、おのずと合理性の限界が考慮される。

2、
異質なエージェント:異なる特性もつエージェントの相互作用を数学的方法によって分析す
  ることは容易ではない。方程式は多次元のものとなり、均衡などの特異点を除いて解析はほ
  とんど不可能である。コンピュータをもちいる分析では、多様なエージェントを組みこむこ
  と、それらの相互作用を追跡することは難しいことではない。

3,
過程分析:コンピュータを用いて時間経過を追うことは簡単である。プログラムを組む上で
  は、諸変数の決定関係は明瞭であり、循環的な因果関係は排除される。分岐やそれに基づく
  構造化も、時間ステップを追う分析では、特別な困難なく実行できる。

4,行動の進化:ホランドの遺伝的アルゴリズムは、突然変異と交差の二つの操作により、クラ
  シファイヤーを進化させている。行動の基本形は、クラシファイヤーと同型であり、行動の
  進化をモデル内に取り込むことは可能である。こういう枠組みの中でなければ、行動と状況
  とのミクロ・マクロ・ループを観察することはできない。

5,
ストーリー分析:与件に適切な変化をもたせることにより、時系列にストーリーを持たせる
  ことが可能である。

6,
多層的調整:変数の変化するリズムを適切に与えることにより、諸変数の多層的な調整を組
  込むことができる。

7,制度の比較研究:複数の代替的制度があるとき、同じ条件下でそれぞれの制度がどのような
  結果をもたらすか比較できる。

しかし、問題もある。結果として得られる時系列があまりに多様で、そこからどのような意味を
汲み取るかが容易でないことだ。エージェント・ベース・モデルの実験に対する批判に「ヤッコ
ー」というものがあり、「やってみたら、こうなった」という結果は容易に出てくるが、その結
果からいくらかでも経済について理解を深める知見が生まれているのか、という疑問。もし得ら
れた結果がなんら新しい知見や理解をもたらすものでないなら、エージェント・ベースのモデル
分析は意味をなさない。これについては経験も、知識もないのでなんとも言えないが、わたし(
たち)の仲間には、理数系に長けたものもいるので相談してみることにして、今夜はとりあえず
この辺で。

                                    この項つづく
 

 

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クローンブーマにポストメガソーラ

2013年03月10日 | デジタル革命渦論

 

 

【クローンブーマ】

当世の科学技術進歩甚だしく、これを計り入るは甚だ難儀。それを吉本の言葉を借りれば次のよ
うに「科学技術の使い方が問題になっている」(『緊急避難策としてのCCS』)ということと
交差する。


  科学の発達はちょっと止まりようがないからどこまでいくか、ぼくなんか、もうキリが
  なくいきそうな気がします。そうだすると、古典的な知識では片づかない。
  ぼくはまた社会的なことと結びつけて考えるわけですが、昔は資本が剰余価値を生み出
  すから、資本家はそれを自分の利益として、働く人には部分的にしか与えなかった。そ
  れ
がもう少し発達すると、今度は国家が資本を独占して国家独占の資本主義になってい
  く。
こういう言い方で済んできたけれども、いまはそういう考え方では済まないぞとい
  う感じ
がします。どういうことかといえば、何か権力的なものが介入してくると怪しげ
  な方向に
いってしまうということではなく、文化とか文明の発達に役立つような装置が
  あれば、そ
れをだれがどう使おうと、それ自体が権力なんだというふうに変わってきて
  いると思うの
です。そう考えたほうがいいのではないか。いや、そういうことを考えに
  入れなかったら
ダメじやないかと思います。
  ただし、権力といっても、それは昔のような強権という意味ではなくて、要するに人が
  精神的にでも肉体的にでも外界に働きかければ外界が価値化してしまうから、人文系の
  文
化であっても科学技術と結びつく場面があれば、必ずそれは権力化する。そのもの自
  体が
権力になっていくということです。それにしろ、それはもう善悪の問題、倫理の問
  題ではなく、文化自体か権力だとか、文化が科学技術と結びつくかぎり権力化すると考
  えるべきではないでしょうか。ここのところは用心のしどころです。
   だから、資本主義の科学技術だけかおかしいのかというと、それはそうではなくて、
  資本主義であれ社会主義であれ、科学技術の使い方自体が問題になっているのだという
  べきでしょう。いまのような使い方をしていると、自分では獲得したのが知識そのもの
  であるかのように思っていても、じつはそうではなくて権力だったというふうになって
  いくはずです。

                      第五章 古典的知識性は淘汰されたか

                      『「すべてを引き受ける」という思想』                 
                            吉本隆明 茂木健一郎 著

 



金曜日に理化学研究所が、1匹のマウスから遺伝子が同じクローンマウスを作り出し、さらにクローン作
製を繰り返して25世代で計 581匹のマウスを作ったと(理化学研究所再生・発生科学総合研究セ
ンタ)
米科学誌セル・ステムセル電子版に発表。それによると、現在は26世代、598匹に達したと
いう。この技術応用すれば、将来は優良な家畜や絶滅危惧種のクローン作製に応用が期待できる。
クローンを繰り返す「連続核移植」は、続けるうちに異常蓄積するので、世代が進むごとに出産
率が低下し、マウスで6世代、ウシやネコは2世代が限界とされていた限界をブレークスルーした
こになる。このチームでは
2005年、トリコスタチンA(TSA)という薬剤を使うと異常の確率が低
下し、マウスの出産率が上がることを発見。1匹の雌のマウスをもとに、約7年かけてクローン
を繰り返す。なお、
TSAを使わない場合1%程度だった出産率が、最高で約15%になり、世代を経
てもクローンマウスの寿命や繁殖能力などは自然のマウスと同程度で、TSAの副作用もないという
ことも今回分かったというのだ。

要するに神をも恐れぬ領域に急速に踏み込むことで、人間の欲望が織りなす影響などはこれから
準備することになるのだが、着床前診断という生物工学(技法)をどのようなルールの元で利用
するのか否かとか、高度情報工学(技法)を使った情報操作のルールづくりとか、あるいは夥し
無線情報通信端末器の普及による人体・社会への影響などはこれから諸問題が顕在してくる。簡
単にいえば、ワクワクしながらビクビクしてこれを眺めている自分がいるというわけだ。

※特開2009-268423 動物組織からクローン動物ならびにntES細胞を作成するための新規方法

【特許請求の範囲】

1)動物組織の核移植ES細胞(ntES細胞)またはES状細胞を作成する方法(a)該組織
中のドナー細胞を破砕して核を取り出す→(b)高分子ポリオールの存在下で、レシピエント
ある除核した卵に核を移植する方法。
2)工程(a)の細胞の破砕はホモジナイズ法を用いる。
3)工程(a)が高分子ポリオールを含む培地で行なう。
4)この時、高分子ポリオールがポリビニルアルコール(PVA)である。
5)凍結した動物組織を使用する(前記1)~4)のいずれか1項記載)。
6)動物組織からクローン動物を作成する方法:(a)組織中のドナー細胞を破砕して核を取り
出す→(b)高分子ポリオールの存在下で、レシピエントである除核した卵に核を移植→(c)
作成されたクローン胚を発生させて仮親に戻す方法。
7)前項工程(a)の細胞の破砕をホモジナイズ法で行う。
8)工程(a)が高分子ポリオールを含む培地で行われる(6)または7))。
9)高分子ポリオールがポリビニルアルコール(PVA)である(6)~8)のいずれか1項記
載の方法。
10)動物組織が凍結する(6)~9のいずれか1項記載の方法)。
11)1)~5)のいずれか1項に記載の方法で作成したntES細胞またはES状細胞を動物組
織中のドナー細胞び用いるクローン動物の作成方法。
12)1)~11)のいずれか1項記載の方法で作成さしたクローン動物、ntES細胞またはE
S細胞
13)裸の核をレシピエント細胞を移植す法で、高分子ポリオールの存在下で移植を行う方法。



ここまで打ち込んできて、ベビーブーマならぬクローンブーマという言葉が口をついた。これに
は、ミレニアムブーマという言葉を十年前に造語したことが引き金になっている。ミレニアムブ
ーマはとは高度情報通信端末機器(携帯電話)の劇的な普及期に出生した子供達が十三歳を超え
る、2015年ごろに新しい社会現象(問題)が日本などの先進諸国を中心として起きるだろうとい
う意味合いで使ったのが最初だ。



【ポストメガソーラ】

今夜は、風雨まじりの天候の影響もあり、気管支・肺の部位にまつわる炎症も治まっている。も
う少し詳しことを言うと、空気清浄機の加湿を止めると(相対湿度が50%以下)具合は悪くなる
ようだ(それほど繊細に影響する)。さて、今日は世界のメガソーラのリストアップ作業(米国
編)しながら、なるほど、なるほどと納得しながら、世界はやはり広いなぁと感動していた(や
っけ作業でもあり、苛つくこともあったが)。さて、なるほどと納得しているのはそれだけでな
く、高変換効率である量子ドット太陽電池の製造の実用期が直前に迫っていること、それをやり
遂げることのミッションの再確認と、ある種の自信を、日本以外にそれを担える国はないことを
再確認していることも表裏一体に感じていたことを吐露しておこう。もう太陽電池は「ホストメ
ガソーラ時代」にまもなく突入する。それが実現できれば『贈与経済社会』(=社会主義社会段
階)に自動的に入ると?!おっと、これは大した飛躍だ。^^;

 

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光を集めて

2013年03月09日 | 現代歌謡


 

 

     答えは出ないけと歌は続いてゆく
   川の流れのように無限の向こう岸へ
   君の名を呼んだら波がこぱれ落ちた
   光の街角にも孤独は潜んでるんだね
   雪とけの青い空の下透明な桜の花が咲いていた
          
   春が春が今は見えなくても
   薄紅の花ひらが風に舞うよ
   君よ僕らは歩いて行こう
   今はどんな未来も色を失ったままだけと
   光をあつめて

           
                         作詞/作曲 藤巻亮太 「ひかりをあつめて」




 

レミオロメンは「粉雪」で、四拍子の探知から急に絶唱する音律に変化するこの印象的な唱
い回しに強く惹きつけられて記憶が残っていて、続いて映画『眉山』の主題曲『蛍』が強烈
な印象として残っているが、唱いづらいという感想をもっていた。強いて言えば、軽妙なリ
リカルな唱い回し演奏するスピッツと似ているが、歌詞と韻律抑揚がアンビバレンツに展開
している分-ミスチルの桜井の評価と同じになるが-印象的なのだ。その彼等が昨年2月に
活動休止しそれぞれの音楽活動をしている。今日は3月9日、彼らの作品のタイトルでもあ
り、二日後には東日本大震災から二年目に当たる。そして、昨年2月29日に藤巻がソロデビ
ューした曲『光あつめて』とクロスする(歌謡論として展開するには力足らずだったが)。
 

 
【身体は嘘つかない】

迷惑な話だ。黄砂(中国)、粒子状物質(中国)、花粉(これは国内)で昨日から、何かを
喋ると肺が微動し声の質が普段と違い、咽頭に違和感が走りその度咳払いをする。それだけ
でなく、咳痰が出るようになり、気管支と扁桃腺に圧迫感と痛みが走るようになる。親父の
月命日もあり、途中近くの家電量販店で、シャープ製を二台購入、早速KC-B70を書斎
に置き運転開始する。 




それでも、昼間の外出時にマスクを着用しなかつたのか悪かったのか、気管支と扁桃腺の痛
が強くなったので、ベンザブロックLを買って服用する始末。当面様子を見るしかないが
北京の粒子状物質は迷惑な国際問題なのだ。本当!

 

 

そんなことを思いながらも、薬が効いてきたみたいで、痛みもだいぶん治まってきた。考え
てみれば「ひかりあつめて」は「オールソーラシステム」ともクロスしている。こちらの方
は深掘り作業の第二ステージに入っている。

 

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ソーラーパネルになごり雪

2013年03月08日 | 時事書評

 

 

 

重症のインフルエンザで、魚油などに含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)由来の脂質酸代謝物
プロテクチンD1(PD1)がウイルス増殖を抑制することをマウス実験で解明したと、今井由美
子秋田大大学院医学系研究科教授と大阪大、東大の研究チームが発表。重症化したインフルに有効
な治療薬の開発につながる可能性があるという。8日発行の米科学誌「セル」電子版で発表した。
タミフルなど既存の抗インフル薬は感染から48時間以内に投与しなければ効果がなく、重症者の
救命は難しかった。今井教授らによるマウス実験では、感染後48時間を過ぎても、PD1を既存
薬(ペラミビル)と併用すれば生存率百%になった。ペラミビルだけ投与したマウスの生存率は約
25%だった。 今井教授らは多数の脂質代謝物の中からインフルウイルスの増殖を抑える物質を
特定し、PD1は従来の薬とは異なるメカニズムで増殖を抑えることも確認したというから、これ
は、かなりチョットした?ニュースだ。

そこで、プロテクチン1(PD1)?ドコサヘキサエン酸(DHA)はもう誰もが耳にしているが、こ
れは聴き慣れない言葉だ。
プロテクチン1(PD1)とは、不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸
(DHA)から生体内でつくられる脂質メディエーターで、抗炎症作用があることが分かっているらし
い。つまり、PD1が健康人の呼気中に含まれること、喘息発作を起こしている患者の呼気にはPD1が
減少することが分かっているらしい。またマウス実験では、PD1前処理がアレルゲン投与後の炎症反
応を抑制することや、アレルゲン感作後に投与した場合でもアレルギー性炎症の収束を加速するこ
となどが確認され、喘息における新たな治療として、戦略的に組み込めると期待されていた。

※ Protectin D1 is generated in asthma and dampens airway inflammation and hyperresponsiveness.
   J Immunol. 2007 Jan 1;178(1):496-502.

とどのつまり、プロテクチンD1は、(1)急性炎症の抑制(2)マクロファージの貧食能促進、
(3)神経細胞死を防ぎ(4)角膜の修理促進(5)インスリン抵抗性を改善するという人間にと
って好都合な機能を持っているという。これは魚好きな日本人(あくまでも離散系での中央値のと
がり(ピーク値)として)は朗報だ。

※  貪食能(マクロファージ機能)に及ぼす運動の影響→マクロファージの貪食能は運動負荷によ
  り亢進する。疲労困憊に至るような激しい運動ほど貪食能がより高い。
免疫機能を低下させる
  反応と貪食能の亢進が同時に生じる。
これらの貪食能の亢進には副腎皮質ホルモンなどが関係
  していると考えられ、内因性ホルモナルな免疫機構で激運動時のマクロファージ機能はコント
  ロールされている。また
腸管由来の抗原、異物に対する防御機構として重要な役割を担ってい
  るクッパ-細胞は、
肝常在マクロファージで総マクロファージの80%を占め、生体内に侵入し
  てきた異物を取り込み、急性運動時には貪食能の亢進を発揮。
運動負荷で誘発された消化管傷
  害に、低炎症性サイトカイン産生し、組織保護し貪食能で異物を処理する。
※ インスリン抵抗性とは体がすい臓から分泌しているホルモンのインスリンが標的とする細胞(

  筋肉や脂肪)に十分作用しない状態をさす。
※ ペラミビルとは、細胞膜表面にあるノイラミニダーゼ(NA)を阻害する抗ウイルス薬のこと。


【Intermission】

 

 

 

【なごり雪は深みを添えて】

沢田研二の「カサブラカ・ダンディー」の歌詞が、眠気の取れない脳に突然浮かんできた。ユー・
チューブを
開くと、懐かしさが込み上げてきた。そう言えば桑田正博が逝ったばっかりというのに、
泪が枯れた季節のこころに、なごり雪が降ってきた。気障が許されていた時代はもう来ないが、研
ぎ澄まされた渇望(やせ我慢)が、それを許してくれる女達の優しいまなざしがあった時代だ。



 

ところで、豊岡市は、環境都市のシンボルとして整備した太陽光発電所(同市日高町山宮)の発電
量が予想の65%にとどまったことを明らかにした。昨年12月完成後、12月16日から今年2月15日まで
2カ月間の発電実績を、予想した発電量と比較した。年間発電量を61万8000キロワット時と見込み、
2カ月間の発電量を約7万3千キロワット時と予想していた。発電実績は4万7,550キロワット時だ
った。市によると太陽光発電のパネル上に積雪がない日は予想と同等以上の発電量があった。パネ
ル上に積雪がある日は発電量が予想を下回るのが当然であるが、売電収入は年間で約2600万円を見
込んでいるという。2カ月の売電収入は209万円。予想を約97万円下回り苦戦。 市は今年度、発電
所内の除雪作業をせず運用状況を検証して、来年度以降の対応を検討するとのこと。中貝宗治市長
は「除雪をすれば予想に近い発電があると思うが、除雪費用がかかる。2カ月の発電量だけをみる
と残念だが年間を通じてみる必要がある。夏場に冬の発電量を補う可能性もある」というニュース
が目にとまり早速除雪方法の現状をネット検索する。

頭に浮かぶ除雪方法には、(1)水で融雪・流水する(2)振動で振り払う(3)加熱用ストリン
グスで融雪する(4)仰角を鋭敏にし篩い落とす(一種の振動)の4つ。このうち最後は駆動機構
のコストが莫大で難しい(もっとも、自動追尾式であれば間欠作動で対応できるので対象外)。豊
岡市場合は、(1)が夏場対応(シリコン結晶系は温度が上がれば変換効率が低下)にも使えるの
で、三菱電機の新規考案のようなことを追加すてば解決できる。それにしても、時間軸の拡大不足
設計の問題だったと腑に落とし、今夜はこの辺で。

 

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アスパラガスの量子ドット添え

2013年03月06日 | デジタル革命渦論

 

 

 

 

 

まだ近くの梅の花芽は固いが、春だ。それも昔と違って、晴れの日でも落ち着きなく
ざわついて止まることはない。それはそこまでとして、今日もあっという間に時間が
過ぎた。夕食前からテーマを探し、春芽のアスパラガスのイタリア料理のレシピをネ
ット検索する。アスパラは栄養価の高い野菜だが、原産は地中海東部とされるユリ科
の植物。種を植えてから2年から3年たたないと収穫できないがそれが過ぎると楽に
収穫できる。春を告げる野菜が、春芽収穫後、1株当たり4~5本程度茎を育て(立
茎)て夏芽を収穫する。

 


 


  Primavera Asparagi Insalata


それでは、今夜はアスパラガス料理から四品の紹介。まず、アスパラガスの春サラダ。

材料、500グラムの5センチメートルにトリミングした緑と白アスパラガス、みじん
切りエシャロット、白バルサミコ酢、エキストラバージンオリーブオイル、すりおろ
したレモンの皮、黒コショウ、ゴルゴンゾーラチーズ、サラダ菜、塩を用意。沸騰し
たお湯に塩を小さじ2杯入れ、鮮明柔らかくなるまでアスパラガスを2分間茹でる。
排水し冷たい水の下でアスパラガスをすすぐ。小さなボウルに小さじ1/4塩、シャロ
ット、コショウ、すりおろしたレモンの皮と1/4カップのチーズを入れてよくかき混
ぜる。大きなボウルにアスパラガスとサラダ菜を合わせ、その上から白バルサミコ酢
とエキストラバージオイルンでドレッシングを作り振りかけ、残りの1/4カップのチ
ーズを振りかて完成。 
 

 

  Asparagi alla parmigiana

 

その次は、お馴染みの?アスパラガス、パルマ風。アスパラガス2kg、バター120g、
ルメザンかパダノのおろしチーズ120g、塩。アスパラガスは、いつものように縦に
して鍋に入れ,穂先を水面から出したままでさっとゆでる。柔らかくなったら完全に
ゆであがる前に取り出し水気をよく切る。そして穂先と反対側の固い部分を切り取る。
グラタン皿の底にバターを塗って,アスパラガスを一段敷き,その上に溶かしバター
をかけ、パルメザンかパダノのおろしチーズ、塩をふりかける。同じ手順でアスパラ
ガスを段々に敷いていき、然してオーブンの中に入れグラタンにする。

 

 Asparagi all'astigiana

  


太くて青々したピェモンテ(上図)
産タイプのアスパラガス2kg、卵6個、バター120g、
パルメザンかパダノのおろしチーズ120g、塩、アスパラガスは、いつものように、穂
先を高くして水面から出して縦に入れ、ぐらぐら煮立ったお湯でゆでる。半ばゆだっ
たところで鍋から取り出し、穂先と反対側の固い部分を切り取る。ゆでている間にグ
ラタン皿の底にたっぶりバターを塗り、準備できたアスパラガスを穂先の方を内側に
して放射線状に並、塩をふりかけ、バターとパルメザンかパダノのおろしチーズをま
き散らし、バターとチーズが溶けるぐらいの中火のオーブンに入れ、時折、底の方に
あるアスパラガスを静かに動かし、火がまんべんなく通るようにして、小さな浅鍋で
焼いた6つの卵を上にかぶせる。ヴァリエーションとしてもっと簡単に卵を加えず、
バターとチーズで供することも可能。 

 

  Asparagi con le uova sode

 

四品めはアスパラガスの卵添え。アスパラガス2kg、卵6個、バター120g、パルメザ
ンかパダノのおろしチーズ、オリーブ油、パセリ、塩、コショウ、酢を用意。アスパ
ラガスは茎の方をそぎ取って切りそろえ、一束にまとめる。そして穂先を上の方にし
窓,水面から出るように鍋に入れ,さっとゆでる。穂先の部分は沸いた水の蒸気でゆ
だり、同じ時間で茎と同程度の柔らかさにゆでられる。卵は固くなり過ぎないように
固ゆで。アスパラガスをゆでている間に殼をむき,細かく刻んで皿にとり、その中に
パセリのみじん切り、塩、コショウする。オリーブ油をひとたらしするとまとめやす
い。

 



おまけⅠ。アスパラガスの半熟卵添え(Asparagi con le uova barzotte

 

アスパラガスの半熟卵添え。前述の手順でアスパラガスをゆでる。卵は固ゆででなく
半熟。束ねたアスパラガスの穂先の部分に半熟卵を2つもたれかけるように
し、それ
ぞれの皿に盛り付ける。その上に溶かしバターとパルメザンかパダノのおろ
しチーズ
をふりかける。

おまけⅡ。アスパラガスの落とし卵添え(Asparagi con le uova in camicia

アスパラガスの上に2個をひとまとめにした落とし卵(沸騰したお湯に卵の殼を割っ
て落とし、そのままボイル)を置きそれぞれの皿に盛り付ける。溶かしバターとパル
メザンかダノのおろしチーズをふりかけて完成というものもある。

 

おまけⅢ。アスパラガスと卵のフリッター添え (Asparagi con le uova fritte

それぞれの皿に盛り分けたアスパラガスの上に,2つひとまとめに揚げた卵を置き、
溶か
しバターとパルメザンかパダノのおろしチーズをふりかける。

おまけⅣ。アスパラガスの卵ソース和え
Asparagi con salsa d'uovo

アスパラガスをきれいにして、鍋に立てて入れ、穂先は蒸気で蒸すようにする。固い
茎はお湯の熱で柔らかくゆであげる。その間にソースを準備する。浅鍋に小麦粉と大
さじ2杯の水を加えて火にかける。塩、コショウ、ナッツメッグで調味し、煮詰まっ
たらもう一度水を入れる。卵黄は、溶きほぐし少し柔らかくなる前のバターを加え、
混ぜ合わせる。2回ほど分けて入れ、かき混ぜる。ソースが十分滑らかかどうか確か
めて裏ごしにかけ、レモン汁を数滴たらし、アスパラガス、大きな皿に盛り付け、ソ
ースは別にして食卓に。

さて、最後に今夜にメインアスパラ料理「アスパラガスの量子ドット添え、トヨタ風

をお作りしましょう ^^; 。  


 表 ドイツの太陽光発電導入推移

 太陽電池の勢いが止まらないという実感についてはここでも掲載しているが、そのな
かでもドイツはずば抜けている(2050年にすべての電力を再生可能エネルギーで賄う
とし、そのうち太陽光発電は35%)。ところで、太陽電池は、発電量当たりの二酸化
炭素排出量が少なく、発電用の燃料が不要という利点を有しているが、現在の太陽電
池の中で、単結晶シリコン又は多結晶シリコンを用いた、一組のpn接合を有する単
接合太陽電池が主流だが、単接合太陽電池の光電変換効率の理論限界が約30%に留ま
っているが、
これまでに検討されている新しい方法の1つに、バンドギャップ中に狭
いバンドあるいは準位を有する中間準位型太陽電池がある。中間準位生成法には、量
子ドット等の量子構造を用いる方法や、深い準位を生成する特殊な不純物を用いる方
法が知られている。半導体バンドギャップ中に中間準位を形成することで、従来の太

陽電池では吸収できなかった帯域の太陽光スペクトルを吸収でき、中間準位型太陽電
池の理論限界効率は従来法の2倍(面積で1/4)60%以上も可能になると考えられて
いる。

量子ドットを用いた太陽電池では、長波長光を吸収することで、量子ドット内の準位
に電子・
正孔対(以下において、これらをまとめて「キャリア」ということがある。)が励起され
るが、エネルギーとして取り出すには、それらのキャリアが光吸収で励起され、量子
ドットの
閉じ込めエネルギーよりも高いエネルギーを持たせる必要があるが、従来技
術の量子ドットでは、量子ドット内の準位に存在するキャリアが、ある一定の時間

つとエネルギーを失い、電子及び正孔は再結合→消滅する。量子ドットの準位に存
在する
キャリアが次の光吸収をして励起されるまでの時間に対してキャリア寿命が短
い場合、再結合→消滅し太陽電池の効率を向上できない。このため、量子ドット内の
準位におけるキャリア寿命を長くなると、電流及び電圧が共に向上し、変換効率が高
くなる
。、そこで、(1)キャリア寿命を向上可能な量子ドット配列材料、(2)これを用いた中間
準位型光電変換素子、波長変換素子、(3)アップコンバージョン型光電変換素子を新規に考
案するというもの。

※高エネルギーを有する短波長光を、太陽電池材料のバンドギャップに適した波長へ
 変換し、
熱(電圧)損失を低減するものをダウンコンバージョン型と呼び、エネル
 ギーが小さく光透過
損失となる長波長光を、太陽電池材料のバンドギャップに適し
 た波長に変換するアップコン
バージョン型と呼称する。

 
特開2013-046000

 

それじゃどう難題を切りぬけるかというと、量子ドットとその量子ドットをミルフィ
ーユのように挟み込んだ構造のエネルギーレベルの特徴は、第1障壁層の価電子帯上
端をVB
M1、第2障壁層の価電子帯上端をVBM2、量子ドットの価電子帯上端をVBMD、
第1障壁層の伝導帯下端をCBM1、第2障壁層の伝導帯下端をCBM2、量子ドットの伝
導帯下端をCBMDとするとき、VBMD<VBM1、且つ、CBMD<CBM1、且つ、VBM2<VBM1
をもち、そんな構造をもつ量子ドット配列材料を使う(上下図参照)。この具体的な
材料として、第1障壁層がGaAs(1-x)Sbxで、第2障壁層がGaAsによって構成され、
0.14≦x<1で、また、同じ構造で、第2障壁層の厚さのみが0.5nm以上4nm以下とい
う条件が付く(もっとも、ボルツマン定数をkとし使用時における光電変換素子の絶
対温度をTとしたとき、VBM1-VBMD、及び、VBM1-VBM2が正孔の熱エネルギーkT
よりも大きいことが好ましいという条件も含んでの話だが)。

 


【符号の説明】

1…裏面電極 2…n型基板 3、23…光吸収層 3a、23a…第1障壁層 
3b、23b…第2障壁層 3d、23d…量子ドット 4…p層 5…櫛形電極
10、20、30、40…太陽電池(光電変換素子) 31…反射板 
32、41…波長変換層 32a、41a…第3障壁層 33…透明電極 
34…n層 35…i層 50d、51d…粒子状物質 50a…第1障壁層 
50b…第2障壁層 50x…量子ドット 51a…第3障壁層 51b…母材 
92…波長変換素子 93…光電変換層

 
二つめの量子ドット配列材料構造条件が、同じ構造であって、第1障壁層の価電子帯
上端をVBM1、第2障壁層の価電子帯上端をVBM2、量子ドットの価電子帯上端をVBMD、
第1障壁層の伝導帯下端をCBM1、第2障壁層の伝導帯下端をCBM2、量子ドットの伝
導帯下端をCBMDとするとき、VBM1<VBMD、且つ、CBM1<CBMD、且つ、CBM1<CBM2
であることを特徴とする量子ドット配列材料構造で、CBMD-CBM1とCBM2-CBM1が、
電子の熱エネルギーkTよりも大きいことが好ましい特徴をもつ。さらに上の2つの条
件に量子ドットの形状が粒子状で、量子ドットと障壁構造が同心円(コアシェル)に
配置されることが加えられる。

また三つめには、前の2つの特徴構造の配列材料を使った中間準位型光電変換素子と
いう条件が、四つめには、素子へと入射された光とは異なる波長の光を放出する波長
変換素子ということが、最後に五つめとして、量子ドット配列材料や波長変換層と、
光電変換層とを備え、第1障壁層の、量子ドットとは反対側に、第3障壁層が備え、
この層の価電子帯上端をVBM3、第3障壁層の伝導帯下端をCBMとするとき、VBM3<
VBM1で、CBM1<CBM3を特徴とする、アップコンバージョン型光電変換素子だという
条件も加えられる。ここで、「波長変換層」とは、アップコンバージョン型太陽電池
等で用いられる層で、光吸収によりキャリアを発生させる光電変換層では吸収されな
い波長の光を吸収して、光電変換層に吸収させることが可能な波長の光へと変換する
層をいい、「光電変換層」とは、光を吸収して電子及び正孔を生じさせる層をいう)。
 

第2障壁層の厚さと輻射再結合寿命の計算結果との関係を示す図

 
計算で用いたモデルのエネルギーバンド構造及び計算パラメータを説明する図


なお、ここで供された「アスパラガスの量子添えトヨタ阿風」はアドホック・ソーラ
ー・バッテリ型携帯情報端末器のキラー・アプリケーションとして世界に大旋風を巻
き起こすやもしれないでしょう。

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風雪列島にブロッコリ

2013年03月05日 | 地球温暖化

 

 

 

  Zuppa del monaco  

                              

【ブロッコリの料理三品】


   
Broccoletti strascinati

ひとつめは、ブロッコリの油炒め。例によって、材料は四人前。ブロッコリ 800g、ニン
ニク 3片、オリーブ油、塩、コショウ、(トウガラシ)を用意。まず、ニンニクとオリー
油のスパゲッティだけでなく、ニンニクとオリーブ油のブロッコリ。この簡単な料理は、
まずブロッコリ
を丁寧に洗って葉を捨て、芯と繊維の多い部分を取り去り、小房に分け、
そして少し塩を入れた熱
湯で、“アル・デンテ”にゆでる。フライパンに数杯のオリーブ
油を熟し、好みに従ってみじんに刻む
か、潰すかしたニンニクを加え、潰したニンニクの
場合、焼き色がついたら取り出す。ここに、ゆでた
ブロッコリを入れ、塩、コショウをふ
りかけ、香りが出るまでさらに数分間火にかける。好みでコショウ
の代わりにトウガラシ
を入れる作り方もある。

  Broccoli affogati

ふたつめは、プロッコリのワイン煮。ブロッコリ 1.5kg、生のペコリーノチーズあるいは
カチョカバッロチーズ 100g、黒オリーブの実 100g、塩漬けアンチョビー3尾、タマネギ
2個、赤ワイン100cc、オリーブ油60cc、(パン、カリフラワー)。この料理はブロッコリ
油炒めと似ているが、作り方に基本的な違いがある。まず、ブロッコリの葉と芯の部分
を取り去っ
てきれいにし、柔らかい部分だけをとって小房に分けておく。鍋に油を熱し、
みじんに刻むか薄く
切ったタマネギを加えて炒める。タマネギがしんなりしたら、あらか
じめ塩抜きしてみじんに叩いて
おいたアンチョビーの身と、これもあらかじめ種を取って
おいたオリーブの実,それから潰して粉に
した(すりおろしたものではない)チーズのそ
れぞれ半分の量を入れる。さらにその上に、半量のブ
ロッコリをのせて油をかける。次に
残りの材料を上に覆うようにかぶせ、最上段に残りのブロッコリをのせて油をかけ、最後
に赤ワインをかけ、鍋に蓋をして中火で煮る。油で揚げるか焼いたパンのトーストを添え
てもよいし、ブロッコリの代わりにカリフラワーでもよい。

 Broccoli saporiti

みっつめは、ブロッコリの風味炒め。ブロッコリ 1.5kg、ニンニク3片、パルメザンかパ
ダノのおろしチーズ大さじ 3杯、オリーブ油大さじ6杯、塩を準備する。ブロッコリは、
それ自身独特のいい香りがするが、簡単な料理で、さらに食欲をそそるものにすることが
できる。ブロッコリを洗って余分な部分を取り、ほどよい大きさの小房に分ける。これを
塩を少々入れたたっぶりの水を沸騰させてゆでる。しかし、ブロッコリの固さを十分残す
ように、“アル・デンテ”にゆでるよう注意する。一方、鍋にオリーブ油を熱して、ニンニ
クの薄切りを炒める。ニンニクは好みに応じて、炒めたあと残すなり取り出すなりしてよ
い。熱々の油の中に、よく水気を切ったブロッコリを入れ、パルメザンかパダノのおろし
チーズと塩を加えて味を整える。時々かき混ぜながら1O分ほど弱火で炒める。料理に使った
鍋のまま食卓に供してもよい。 

 

わが家でブロッコリは大変重宝な野菜だ。冷蔵庫には茹でたブロッコリをジップしていた
り、台所に
ざるやボールに無造作に入れそのまま無造作に放置している。朝食の付け合わ
せに、あるいは昼の即席ラーメンにトッピングとして、あるいはつまみ食いしたり、兎に
角、便利この上なく、栄養に優れ、ガン予防・風邪予防、美容にと、ビタミンCがレモン
の約2倍含まれ、さらにカロチン(ビタミンA)、ビタミンB、リン、カリウム、食物繊
維など豊富に含れている(皮膚や粘膜の抵抗力を強め、血糖値を正常に保ち、便秘の改善。
また、葉酸は他の食材に比べ非常に多く、貧血予防、動脈硬化の予防効果がある)。

 

【風雪列島 対策を急がせる】

2日に大仙市のJR奥羽線神宮寺-刈和野間で東京発秋田行きの下り秋田新幹線こまちが
脱線した事故で、運輸安全委員会の鉄道事故調査官は3日未明、現場を調査した。線路上
の雪が事故原因となった可能性について「可能性としてはあるが、原因となったかはまだ
分からない。車体や軌道の問題もあるかもしれないので、確認させていただく」と述べ、
1年後をめどに報告書をまとめるとしている。
また、北海道では風雪でクルマが立ち往生
し、八名が死亡したという。この事故に接して(1)地球温暖化によるもの(つまり、今
後、いままで以上の突風の発生確率が-これは冬夏関係なく-大きくなることを予感させ
ること。(2)毎年同じようなことが繰り返されてきたこと対する根本対策-これは風雪
だけでなく、積雪も含め-を長期的対策事業案を早急に策定(異常気象対策国土整備計画、
法整備)を急がせているように思える。



   

つまり、JR羽越本線脱線事故などの過去の事故に対する取り組み以上に、大規模に、対
象範囲ももう少し広げてを考え直す必要がある。除雪対策も見直す、一次産業の気候変動
対策もその1つだろうし、気象変動観測とその帰還制御の精緻化を急ぐ必要がある。詳し
い考察はまた改めてこのブログで掲載してみよう。
 


 

 

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ハットトリックで驚くな

2013年03月03日 | 環境工学システム論

 


 

 

                         顔みつめいっしょに目を覚ますことが少なくなるねと君がいう





 

 

     雷が鳴り、稲妻が光り、雨が降り、風が吹くというひどい夜が
     ある。人々はこれを「雀の夜」と呼ぶ。
     私自身の人生にもそういう夜があった……

     私は真夜中過ぎに目覚め、ベッドから文字どおりとびだした。
     どうしてかはわからないけれども、私には自分がいままさに死のうとしている
     ように思えたのだ。どうしてそんなことを思ったのだろう? 肉体的には死を
     暗示するような徴候はまるでないのに、私のこころには恐怖が
     重くのしかかっていた。まるで炎のうつす広漠とした不吉な輝きを
     出し抜けに目にしたときのようだった。

     私は慌てて明かりを灯した。水差しの水をごくごくと
     飲んだ。それから足早に開いた窓のところに行った。   
     外は申し分のない天気だった。
     空気には干し草の匂いや、何か別のひどく甘い匂いが
     混じっていた。柵の先のとんがりを見ることができた。
     窓のそばの、やせ衰えて物憂げな樹を見ることができた。道路が、
     暗い一本の筋のようにのびる林が、見えた。
     空にはひどく明るい、澄んだ月が浮かんで、そこにはひとかけの
     雲もなかった。すべてはしんと静まりかえり、木の葉はぴくりとも
     動かなかった。何もかもが私を見ていて、私が死ぬのを
     待っているみたいだった……私の背筋は冷たく 
     凍っていた。まるで内側にひきずりこまれていくみたい
     だった。背後から、死がこっそりと足音を
     忍ばせながらこちらに近寄ってくるような、そんな気がした……



There are terrible nights with thunder, lightning, rain, and wind, such as are called among the
people "sparrow nights." There has been one such night in my personal life. 

I woke up after midnight and leaped suddenly out of bed. It seemed to me for some reason that I was
just immedi ately going to die. Why did it seem so? I had no sensation in my body that suggested my
immediate death, but my soul was oppressed with terror, as though I had suddenly seen a vast
menacing glow of fire.

I rapidly struck a light, drank some water straight out of the decanter, then hurried to the open
window. The weather outside was magnificent. There was a smell of hay and some other very sweet
scent. I could see the spikes of the fence, the gaunt, drowsy trees by the window, the road, the dark
streak of woodland, there was a serene, very bright moon in the sky and not a single cloud, perfect
stillness, not one leaf stirring. I felt that everything was looking at me and waiting for me to die. . . .

 

 

                    アントン・チェーホフ 『雀の夜』(「退屈な話」より)
                       レイモンド・カーヴァー 『滝への新しい小径』 
                                村上春樹 訳 “ Sparrow night

A Dreary Story [A Boring Story / A Dull Story] xx/11/1889 Скучная история

 

 

 

プレミアリーグ第28節が2日に行われ、日本代表MF香川真司のハットトリックを決めマンチェスタ
ー・ユナイテッドがノリッジと対戦。ホームで4-0と快勝。試合後、アレックス・ファーガソン監
督がハットトリックを達成した香川を絶賛。「後半の途中までは、まさか4点差というスコアになる
とは想像もしていなかったよ。それが、シンジをトップ下に移してから展開が大きく変わり、彼はハ
ットトリッ
クまで成し遂げた。今日はシンジの日だ。素晴らしいよ。彼は素晴らしいフィニッシャー
で、2点目は冷静に
めた。3点目のシーンは彼らしい素晴らしいゴールだった。彼にとっても良い1日
になったんじゃないか。昨年は負傷で出遅れたが、シンジは徐々に調子を取り戻している。来シーズ
ンはきっと、良いプレーが見られると思うよ」と絶賛。嬉しくなって関連記事を手当たり次第、ネッ
ト検索してしまった。本当!
 
 



【電動トラック時代が開幕】

オールソーラーシステムの実現には、電動トラックやハイブリット水素燃料電池トラックは欠かせな
い。その努力は、粘り強く日々行われきている。日野自動車株式会社は、超低床・前輪駆動の電動小
型トラックを開発しましたという。実路での評価・確認を行って行くとのことだ。今回開発したEVト
ラックは、従来のエンジンとトランスミッションの代わりにコンパクトなモーターをキャブ下に搭載
し、前輪を駆動する(上図)。バッテリーを荷台床下のフレームの内側に搭載し、それ以外の電動ユ
ニットは殆どキャブ下に収めたEVトラック専用プラットフォームにより、従来の後輪駆動車では実現
困難だった超低床を実現させた(下図、新規考案参照)。走行時は排出ガスゼロ、地球温暖化ガスで
ある二酸化炭素排出ゼロのクリーン性能だけでなく、走行音も静かで、変速操作が不要のためスムー
ズなイージードライブが体験できる。 更に超低床により荷役作業性が大幅に向上するだけでなく、ド
ライバンを架装した場合、
室内高1.8mを確保しながら、全高2.3m以下にダウンサイジングでき
、地下駐車場への進入にも
支障がなくなる。主に商業施設が密集した都市部での短距離走行を想定し、
さらに店舗内、倉庫内
空港等の大規模施設内での用途や、夜間・早朝の稼動等、場所と時間を選ばな
い幅広い活用が期待できろという。
 

 特開2012-084340 電池パック

【符号の説明】

100…電池パック、101…収容ケース、110…ロアケース、110a…底面、110b…前側
面、110c…後側面、110d…第1側面、110e…第2側面、111…キャリアブラケット
111a…接合面、111b…上フランジ、111c…下フランジ、111d…フレーム連結部、
112…キャリアブラケット、112a…接合面、112b…上フランジ、113…排気口、
114…取付け穴、115…フランジ部、115b…前フランジ、115c…後フランジ、
115d…左フランジ、115e…右フランジ、116…ピン、117…接続部材、118…弾性部
材 119…ねじ、120…アッパケース、120a…天面、120b…前側面、120c…後側面、
120d…第1側面、120e…第2側面、121,122…吸気口、123…取付け穴、
123A…締結用取付け穴、123B…ボルト、123N…ナット、124…フランジ部、
124b…前フランジ、124c…後フランジ、124d…左フランジ、124e…右フランジ、
124p…先端部、125…プラグカバー、125a…当接部、125A…貫通孔、125b…プラ
グ収容部、126…ねじ、127…ねじ孔、128…サービスプラグ、128a…プラグ操作部、
128b…プラグ基部、130…フレーム、131…第1フレーム材、132…第2フレーム材、
133…連結部材、134…トレイ収容部、135…ボルト、136…支持部、137…遮断器、
140…トレイ、141…供給ダクト、142…供給チャンバ、143…仕切、144…分割通路、
145…フィン、146…水抜き穴、147…隙間、150…ダクト、150a…ファン取付部、
150b…空気案内部、151…ダクト吸気口、152…ダクト吸気口、200…電池スタック、
210…電池モジュール、221…エンドプレート、223…拘束ロッド、224…ブラケット、
300…管理機器、Fa…冷却ファン、Fr…車両フレーム。


 特開2013-022977


日野自動車は、このほか、上図のディーゼルエンジンと電動機を駆動源のハイブリッド車両で、ディー
ゼルエンジン1をアトキンソンサイクルにて運転することを特徴とする。また、ディーゼルエンジン
とメカニカルクラッチ機構、電動発電機、変速機が、出力伝達方向下流側に向けて配設し、シンプル
で低コストな構成で、ディーゼルエンジンと電動発電機を搭載したハイブリッド車両で、アトキンソ
ンサイクル(下図参照)
を採用することで、燃費を改善して環境保護に貢献することができるハイブリ
ッド車両の考案も提案している未来志向企業だ。


 

 

1試合にひとりで三点以上得点をあげた香川。クリケットで3連続三振を奪った投手に賞とし帽子を
贈ったことに由来するハットトリック。素晴らしい。しかし、現実のこれからの世界には難題が待ち
かまえていて、ハットトリックで驚いていられないほど、難題が襲いかかってくるのだから、最善を
尽くす他ない。と、すべてを引き受ける決意と、短歌とチェーホフの詩から、死の覚悟を再確認する。 

 

 

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やがてぼろがでる

2013年03月02日 | 時事書評

 

 

 

  

 

【付録 『日本の新自由主義 』  渡辺治】

翻訳者の渡辺治名誉教授がこの本の付録でこう述べている。「二〇〇六年九月、日本の新自由主義改革を急進的
に推進した小泉政権が退陣して、安部晋三による新保守政権が誕生した。日本の新自由主義が新たな局面に入っ
たことは明らかである。こんなとき、ハーヴェイの新自由主議論を読者に提供できることは、極めて時宜にかな
ってい
る。」と。いま、アベノミクスを引っさげ、第二次安部政権が誕生したまさに、時宜をえて再評価できる
機会を得たことに天意がわが身を貫いたかのようだ。



  
実は、日本で新自由主義改革を遂行するには、自民党一党政権は極めて不都合な体制と化していた。自
  民党政治の安定は、周辺部に対する利益誘導型政治によって支えられていたが、新自由主義のための周
  辺部の切り捨ては、自民党支配体制を直撃するために容易には実現できなかったからである。また、自
  民党一党政権の下では、政権が新自由主義改革を強行して不信任が突きつけられる場合には、社会党を
  中心とする連合政権に政権が移動することになりかねなかった。リクルート疑獄の暴露に加え、消費税
  と農産物自由化によって、一九八九年七月の参議院議員選挙で自民党が大敗北したことは、こうした仮
  定が決してあり得ないことではないことを示していた。
  
  新自由主義のために周辺部の切り捨てが求められても、こうした危険性がある下では、改革の強行はお
  ぽつかなかった。サッチャーやレーガン政権のそれに比して、日本の新自由主義がジグザグを余儀なく
  されたのは、新自由主義の攻撃対象が、ほかでもなく既存の自民党政治そのものであったからである。
  こうしたディレンマを解消するには、中選挙区割を小選挙区割に変えて保守二大政党制を構築する以外
  になかったが、政治改革はそれをめざしたのである。

  こうして、政治改革が「日本の真の民主主義」「自民党一党独裁政権の打破」「二大政党体制による政
  権交代のある民主主義」というスローガンのドに始められた。マスコミは全面的にこれに肩入れした。
  奇妙なことに、体制側の政治学者は、必ずしも一元的に政治改革賛成の論陣を張ったわけではなく、い
  くぶん懐疑的であった。中選挙区割下での自民党政治の活力と安定性への未練であった。むしろ、「
  翼」的、「リベラル」な学者が、政治改革の論陣の先頭に立った。彼らが新自由主義運動に巻き込ま
  たのは、先に言った日本の知識人の反官僚主義と、「
諸悪の根源は自民党一党政権」という誤った認
  であった
。こうして、戦争や革命というような政治危機の時でなければ実現できないような政治改革が
  強行され、日本の新自由主義が開始されたのである。


                        デヴィッド・ハーヴェイ 渡辺 治 監訳「付録「日本の新自由主義」 
                        (『新自由主義-その歴史的展開と現在 』より)

 
これはある意味で説得力のある言葉である。なにを言おう、このわたしも、リベラルなモダンから構造主義のポ
ストモダンを含めて体制批判していたわけで、一旦は二大政党制が蜃気楼のごとく実現し、リアルな逆プラザ合
意的な円高、サブプライムローン禍、千年に一度の東日本大震災、今後、百年は続く福島第一原発禍(この背景
に独占事業体の新自由主義的コストカット運動の影響?)、パックス・アメリカーナ体制弱体(尖閣列島問題に
みられる中国の台頭)などの激震の元で
敢えなく民主党政権が瓦解するのだが、これが果たして「誤った認識」
であったかどうか保留が付く。そこで、「ハーヴェイの新自由主議論の問題提起群」を確認する。(1)全世界
で進行するひとつの世界体制、ひとつの現代資本主義時代という観点のそれ(新自由主義)であり(2)地域的
不均等性あるいは異なる内的要因を認めた上で、階級権力の復興、創設という共通する狙いの保持(3)グラム
シにならい、それは、国民の「同意」の契機を重視し、大衆的同意の形成を準備し(4)また、それは市場原理
主義の理論レベルでなく、理論と階級権力の再興の実践の両側面として捉え(5)一九七〇年代末以降の新自由
主義の展開のもと、実践と理論の双方を備えた「新自由主義国家」が成立する(6)新自由主義の「地理的不均
等発展」を強調し(7)新保守主義を新自由主義の矛盾に立脚する思想として(8)最後に、それが標榜する資
本主義経済発展をもたらさず、それどころが矛盾したものだったというものである。以上のことを踏まえ、ハー
ヴェイは世界の新自由主義への流れの始期を一九七八年に置き、七八年について「未来の歴史家は、一九七八~
八○年を、世界の社会経済史における革命的な転換点
とみなすかもしれない」としているが、日本の新自由主義
への移行ギャップの遅れ大きく、ならば、自民党利益誘導型政治の低効率産業保護主義的性格の検討を始めなけ
ればならないと渡辺は主張し、遅れたり理由は(1)新自由主義化の原動力となる資本蓄積の危機が、八〇年代
の日本では現出していなかった。(2)日本の資本が〈開発主義体制〉に守られて、輸出主導型成長を遂げた結
果、日本資本のグローバリゼーションが遅れたという二点の仮説を挙げる。以下、遅れの理由の歴史的特徴を次
のようにむすんでいる。そして、文頭の「自民党一党政権の打破と「政治改革」」というテーマへと続き「新自
由主義化と帝国主義化の併存」へと論点を移す。


  ハーヴェイは、一九六八年の運動が、学生運動の掲げる「自由」と伝統的左翼の掲げる「社会的公正」
  というアンビバレントな要求を合わせ持っていたのに対し、新自由主義がそれを分断して、「自由」の
  要求を新自由主義への合意調達に吸い取ったと指摘したが、戦後日本では、左翼そのものの中に「自由」
  「民主主義」と公正・平等の要求が同居していた。それだけに、日本では、「自由」「民主主義」がよ
  り強く新自由主義の合意調達の挺子となったのである。たとえば、九〇年代に新自由主義改革を主導し
  たイデオローグである野口悠紀雄は、日本の現状は戦時国家総動員体制下で作られた国家的規制下に置
  かれていると主張し、こうした官僚国家の保護・規制は日本経済の高度成長を支えてきたというが、実
  はそのようなことはなく、むしろこうした規制は、高度成長下で没落する不効率部門の保護による社会
  的対立の緩和に役に立っただけであり、今こそ、こうした規制と保護の体制を脱し農業や流通業、サー
  ビス業などの低生産性部門を切り捨てなければ日本経済の将来はない、と主張した。また、経済同友会
  は、新自由主義改革の正当性を次のように、反官僚主義という点に求めたが、これも、左翼の認識に触
  れ合うところが少なくなかったのである。「欧米の近代化は市民革命を経て、『民』主体で進められ、
  
市民社会の上に近代国家が形成された。ところが日本では、近代民主主義国家の前提となる市民社会が
  十分に育っていなかった。そのため官主導の形で『上からの』近代化が進められた。形のうえでは民主
  主義国家であったが、実態は『宿主主義』だったのである」。


                 デヴィッド・ハーヴェイ 渡辺 治 監訳「付録「日本の新自由主義」 
                        (『新自由主義-その歴史的展開と現在 』より)


さらに、日本の新自由主義化の大きな特徴が、日本の新帝国主義化と併存し、他の先進帝国主義各国の新自由主
義化
にはなく、日本とドイツに固有の特徴だとした上で、〈開発主義国家〉の再編を求める新自由主義要求と並
び、戦後国家のもう一つの柱の小国主義を変更し、帝国主義復活を求める動きが台頭しているとしつつ、支配階
級が九〇年代に新自由主義と帝国主義化の二つの改革を同時に遂行することを求められることとなったことは、
(1)日本の知識人の近代主義要求と親和的な、反自民党政治・反官僚主義を掲げるかぎり、上層市民層のみな
らず広汎な中間層の動員を可能とするが、帝国主義復活、あるいは軍事大国化は、国民全般の強い反発を引き起
こし、帝国主義復活反対の声が、新自由主義への警戒と結びつき支配転覆されることの恐れによる困難さがあり、
(2)新自由主義が帝国主義に不可欠の深い国民統合を掘り崩し、統合基盤を脆弱化せざるを得ず、帝国主義に
国民を動員し、帝国主義化に同意を調達しようにも、新自由主義改革と新自由主義国家は、蓄積体制の再建に、
帝国主義の安定した国民統合とその中核をなす労働者階級への階級的妥協を解消のリスキーさに躊躇せざるを得
ず、日本の場合は戦後復興から高度経済成長遂げ、生活水準の豊かさの飽和時点で帝国主義化を始めざるを得な
いという困難は倍加すると分析する。そして、日本の新自由主義改革は、既存国家体制の再編の「政治改革」と
いう過程を経て開始し、九〇年代初頭から九六年の橋本内閣までの第一期、橋本政権により本格的新自由主義改
革がはじまった第二期、橋本政権の崩壊から森政権までの第三期、そして小泉政権の第四期と、大きく四つの時
期に区分出来るとし(この新自由主義化の大きな特徴は、他の先進国のそれが、労働組合運動と労働者政党政治
を否定して進められた反面、自民党政治を自己否定して進められことの困難さと遅れは不可避だったとふり返え
る。



  第四期、新自由主義の急進的実行政権としての小泉時代 こうして、財界など支配階級と大都市市民上
  層の新自由主義への期待を一身に担って、小泉政権が登場した。小泉は、支配階級の熱望に応えて新自
  由主義改革を強行したばかりか、ハーヴェイのいう「新自由主義国家」を完成に近づけた。
小泉政権で
  は、不況期にもかかわらず財政支出が厳しく抑制された。新自由主義の理論の教科書通りの実践であっ
  た。しかし同時に、不良債権を抱えて危機に瀕した銀行救済のために、多額の国家資金が投入された。
  新自由主義の理論に忠実にしたがい銀行倒産をもたらした橋本内閣と異なり、金融機関救済のためには、
  理論は一顧だにされなかった。ハーヴェイが強調する、「新自由主義の実践はしばしば理論をいとも簡
  単に歪曲する」という格好の実例であった。
また小泉政権下では、特殊法人さらには郵政民営化をはじ
  め公共部門の民営化か容赦なく推進され、民間に巨大な市場が提供された。
さらに、銀行の不良債権処
  理の強行を通じて、銀行が資金を役人してきた地場産業や低効率産業の淘汰と、多国語企業本位の産業
  構造の再編成が強行された。多国語企業の競争力強化のための体制がつくられたのである。
こうした新
  自由主義の急進的実行に加え、小泉政権は、ハーヴェイのいう「新自由主義国家」づくりに力を割いた。
  ハーヴェイがいうように、新自由主義は、その理論とは裏腹に意思決定の集権化を進めざるを得ない。
  小泉政権
は新自由主義改革を推進するために、政府の政策決定に際して不可欠の手続きであった党執行
  部との事前調整や省庁との調整など、既存自民党政治のもっていた分権的、ボトムアップ型の政策決定
  システムを改変し、「官邸主導」「首相主導」の名の下、決定をひと握りの執行部の手に集中し、改革
  を強行する体制をつくったのである。こうして、小泉政権下で新自由主義は一気に進行し、大企業の競
  争力強化による景気回復が実現した。しかし、その当然の結果であるが、既存社会の安定は崩れ、社会
  統合の破綻が顕わになった。「格差社会」「ワーキングプア」という言葉が普及し、犯罪の増加、家族
  の崩壊などが社会問題化した。こうした社会統合の破綻に対処すべく、小泉政権下で新保守主義が台頭
  した。ハーヴェイのいう通り、新保守主義は新自由主義による矛盾の顕在化の所産として台頭したので
  ある。

 

                  デヴィッド・ハーヴェイ 渡辺 治 監訳「付録「日本の新自由主義」 
                        (『新自由主義-その歴史的展開と現在 』より)

 


さて、最後に、渡辺は新自由主義の帰結の特殊性にふれて、日本では新自由主義改革がヨーロッパ各国の新自由
主義の帰結と比べて、はるかに深刻な社会統合の解体と社会の分裂をもたらしていると指摘し、新自由主義の社
会への打撃がはるかに大きく、日本が
福祉国家を経てその再編のなかで生まれたものではなく〈開発主義国家
を経て、その再編によって生まれたものであるという点からくる特殊性である。〈開発主義国家〉の社会保障や
所得再分配は福祉国家のそれに比べてはるかに脆弱であり、分立的であり非制度的なものでもあり、日本では労
働者階級やその家族は新自由主義の破壊的な影響をもろに受けやすい。それゆえに、
新自由主義に対抗する社会
運動や思想が成長が弱く(むしろ現在までのところ、新自由主義の破壊的結果の大きさに比べ、対抗運動の盛り
上がりや対抗構想の具体化は遅れている)、対抗する政治的経験が蓄積されていないのが原因であるとする。ヨ
ーロッパ福祉国家の場合では、オルタナティブとして福祉国家経験がバネになる歴史的蓄積があるが、日本では
自民党抵抗勢力が体現した公共事業投資の利益誘導型政治しか示されていない。旧来型の福祉国家の構想以上に、
グローバリゼーションと新自由主義の前では対抗軸たりえず、
こうした対抗軸を考えるうえで、ハーヴェイのい
う権利論の両義性が参考になったという。そして、「日本では、とりわけ近代主義のイデオロギー的影響力が強
く、これが新自由主義への同意調達のイデオロギーとなってきたからである。こうした近代主義と人権論は、新
自由主義の理論には親和的であるが、それにもかかわらず、それが新自由主義の実践と衝突した場合には、力を
発揮し、反新自由主義運動に合流する可能性があることは注目しておかねばならない」とむすぶ。

これで一通り、新自由主義をトータルに俯瞰する視座がえられた。個人的な経験から労働・生活運動(企業内組
合運
動、地域住民運動、消費者運動、環境研究、技術者運動、技術革新事業、政治運動)から、それも極めて特
異な環境?で活動してきたのかもしれないが、「新自由主義」に対する親和性はいまも強い。そのことは「国民
経済の資本蓄積としての公共事業推進」「民営・民間化の推進」「歴史的自由貿易主義の世界展開」「所得格差
縮小・所得分布ひずみ・偏り是正」「持続社会の実現」「反戦平和」そして「アイデンティティ・ポリティクス
(人権問題など)の横軸を貫く、新自由主義との価値観の共有もできると認めた上で、理念や理論の確認は怠ら
ぬように心がけ、「頭でっかち」にならず、「過剰な期待や失望や思いこみ」を諌めつつ、「広がりと時間軸を
もちながら」問題解決への模索を怠らず事態を展望して行きたいと考えている。その意味では新自由主義だけで
なく、デヴィッド・ハーヴェイや渡辺治らの考えも充分に共有できるところがある。


※アベノミクス、福島第一原発禍、震災復興、日米同盟、TPP参加、憲法改定、民営民間化促進、帝国主義・
 軍国化、未来国債(グリーン国債)、教育改革、一次産業の高次化など現体制の舵取り如何では、ぼろがでて
 きそうだし、現実に原発再稼働発言や日米経済協議(第三ラウンド)などのほころびも見えてきた。

                                           この項つづく
 

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ハイブリッド水素燃料電池

2013年03月01日 | WE商品開発

 

 


【その後のセルテレメトリーのダッチロール


ボーイング787型機のトラブルで、国土交通省は28日、ボーイング社がバッテリーシステムの設計
変更を含む改善策を示したと明らかにした。リチウムイオン電池を使ったバッテリー本体と、充電器
などの設計を見直す。設計変更には米連邦航空局(FAA)の承認が必要で、運航停止が長期化する
可能性が出てきたとのこと。ボーイングの民間航空機部門のレイモンド・コナー社長が同日、太田昭
宏国交相
を訪ね説明した。コナー社長は会見で「示した改善策は暫定的ではなく、恒久的な措置だ」
と述べ
たという。国交省によると、ボーイングの改善策はFAAに示した内容と同じで①バッテリー
内に8個ある
電池一つ一つの発熱を防ぐ、②発熱しても隣の電池に熱が伝わるのを防ぐ、③複数の電
池が発熱しても機
体の火災や煙の充満につながらないようにする-というもの。GSユアサ(京都市
製のバッテリー
本体だけでなく、米国製の充電器やフランス製の電流逆流防止装置心含め、システム
全体の設計変更
が盛り込まれているという

 

【アンチョビエキスのオリーブ油】

ちょと嵌ってしまいましたねぇ。三日前、例の金麦をワンケース購入するときに、これも例の、私的
頑張ろう東北!支援購入運動の「大七からくろ 生酛」720ml 1本とアンチョビ1瓶(メーカはイタ
リアのどこだっけ?まぁ、いいか)を買って、ジム・サウナ上がりにビールと清酒を、身体に悪いか
と思いつつぺろりと平らげてしまったが、オイルと残片だけ残ってしまったのでそのままテーブルに
蓋をして放置(彼女が今度パスタつくるときに使おう頭を過ぎる)。そして、きょうその機会が来た。
トマトミートソースパスタに残しておいったオイルを加え和える。イワシ独特のアミノ酸の香りが加
わわるだけコクと深みがオンされる。それじゃというわけで、そのオイルにメグミルクのプロセスチ
ーズを漬け引き上げてこれも試食。うん、いける。人並みにファインケミカルや有機合成などのプロ
セス技術の知識と経験は短い期間だったけれどあるから、発想法が「抽出」的で、クリアなアンチョ
ビオイリーを作れないかとの思いが走ったが、ガーリックオイルが既に市販されているから無理する
ことないかと考えをここでとめた。それにしても、トマトのアミノ酸、イワシのアミノ酸、オレイン
酸は最強のトライアングルだと改め感心する。

※調味オリーブ油の製法例:トマト、イワシ類(サバ・アジなど)、ガーリックを急速凍結し粉砕→
 オリーブオイルを酸素遮断混合・熟成槽に投入→三種のパウダーをタイムリーに逐次投入し撹拌(
 揉む・撫でる・混ぜる・かき混ぜる・掬う・循環などから選択)→加熱(回分・循環(軸流ポンプ
 が良いだろう)から選択:加熱温度は常温~上限110℃?で自動制御、熱源は、遠赤、マイクロ波
 などの輻射、熱交換から選択)→精密濾過(急速・緩速など方式と濾過温度の選択)→検査(透明
 度は重要、風味を数値化し自動検査)で完成。市場は家庭用・業務用、アンテナ市場を経て世界市
 場に投入(初期売上目標:90億円/年


 

 

 

 

水素を負極活物質、酸素を正極活物質とし、水素の還元力、酸素の酸化力により電気を発生する水素
燃料電池は電気の発生にともなう生成物が水だけなので、環境負荷が低く、かつまた、理論発電効率
が高いので次世代電池・発電装置として期待されている。また、還元力の高い卑金属であるマグネシ
ウムやアルミニウム、亜鉛等を負極活物質とし、空気中の酸素を正極活物質として、電気を発生する
空気電池も知られているが、空気電池は、正極活物質を電池内に必要とせず、負極活物質の充填比率
を高くすることだでき、重量当たりエネルギーの高い電池だ(例、亜鉛を負極活物質として利用した
亜鉛空気電池が補聴器用電池)。さらに、極活物質としてマグネシウムを使用した場合の負極重量あ
たりの理論放電容量は、2,208mAh/g、アルミニウムの場合は、理論放電容量が、2,976mAh/gとなる。
これらは亜鉛空気電池の負極重量あたり理論放電容量(=820mA)の数倍の値で、マグネシウムやア
ルミニウムを負極活物質とした空気電池が研究開発されている。また、放電した電池に外部から直流
電圧を加え再度充電可能な二次電池は、自動車用バッテリーとして鉛蓄電池や、正極活物質として水
酸化ニッケルを利用した二次電池のニッケル水素電池が実用化されている。

ところで、水素燃料電池の発電時には、正極活物質の酸素は空気中から取り込めるが、負極活物質の
水素は空気中から取り込むことが難しい。したがって、水素供給に水素貯蔵容器を水素燃料電池に付
帯設備しなければならず、その貯蔵に大きな容積がいるので実用的でない。また、万が一水素貯蔵容
器や電池容器、水素配管等が破損した場合、空気中の酸素と反応し爆発する可能性があり、安全性に
十分な対策が必要だ。また、電池の負極活物質としてマグネシウムを使用する場合、放電生成物は水
酸化マグネシウムであり水が消費される。同様に、負極活物質としてアルミニウムの場合も、放電生
成物は水酸化アルミニウムで水が消費される。電気化学反応に伴い水が消費されるので、大量の水を
電池内に用意するか、定期的に電池に供給する必要があり、これもまた電池の軽量化やメンテナンス
という観点から障害となる。

さらに、マグネシウム空気電池やアルミニウム空気電池は放電とともに、負極の自己放電で水素が発
生し、負極活物質より電荷を持ち去り、電圧降下や電気エネルギーの低下する上、リーク水素が爆発
するリスクもあり、その抑制方法として前述したように電解液をアルカリ性にすることで、負極活物
質がアルミニウムの場合はアルミン酸となって溶解し、アルカリ液中でも水素を発生させるし、マグ
ネシウムの場合でも、水酸化マグネシウムが水難溶性で、アルカリ液中で負極活物質表面上に不導体
の水酸化マグネシウムが形成され電荷が流れなくなる。鉛蓄電池やニッケル水素電池をはじめとする
多くの二次電池では充電時に、電解液が電気分解され、負極より水素が発生し、充電エネルギーの増
大化と、酸素と反応し爆発するリスクがある。このような放電時や充電時に水素が発生する電池を、
水素発生電池と定義し、大きな水素貯蔵容器や水の補給が不要で、水素発生で奪われる電荷を外部に
取り出すことで、従来電池より大きな電気容量をもたせた発電装置の基本的な構成に関して新規考案
されている(下図参照)。


特開2012-248529



1 水素発生電池部 2 水素燃料電池部 3 水素供給手段 4 水素発生電池部の電極 5 水素燃
料電池部の電極 6 負荷 7 電路切替手段 8 電圧調整器 9 水供給手段 10 水素発生電池
部の負極 11 水素発生電池部の正極 12 水素発生電池部の電解液 13 集電体兼電極 14
水素排出口 15 水素供給口 16 空気供給口 17 排水口 18 負極密閉容器 19 電池容
器 20 オーバーフロー管 21 水素 22 水素発生電池部の水素極 23 水素発生電池部の電
解液正極 
24 水素発生電池部の空気極 25 外部電源

このことで。水素発生電池より発生した水素を、水素燃料電池で供給消費させ、放電時に、水素発生
電池と
水素燃料電池の双方より電荷を取出し、水素発生電池が二次電池とすることで、従来の水素燃
料電池と比べ、(1)
水素貯蔵容器をなくし(2)小型化と(3)安全性を高め(4)高効率化の4
つを原理的に実現できるという提案であり、これは「オール・ソーラー・システム」の必須技術工学
条件である。今後のこの企業情報に注目だ!


    

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