Flower Tripとは1988~1994年私がギターで参加していたバンドである。元々大学のサークルの仲間が卒業してから結成したバンドで、結成当初から"サイケデリック・ロック"をやろうと決めていた。メンバーは白衣のW氏(vo,sitar)、地下のMiro(g,sax,flute,cho)、例のK氏(b,cho)、教師のA氏(ds,tabla)。
最初はサイケと言ってもビートルズやバーズ風のポップな作風だったが、次第にメンバーのアングラ/プログレ/インド好きが顕著になり、どんどんブラック・サバス、ブルー・チアー、フランク・ザッパ、キング・クリムゾンのようなヘヴィーで暗いサウンドに変貌して行った。時代がバブル期を迎え文化全体が脳天気で軽薄な方向へ進むのに逆行する動きだった。
1989年には「イカ天」に出演。完奏は逃したもののヴォーカルのW氏が"ベスト・パフォーマンス賞"を受賞した。
渋谷屋根裏、高円寺20000V、新宿アンチノックなどに出演していたが、普通のブッキングでは面白くないので「アートロック宣言」というシリーズ・ギグを開始する。これは同じくアングラな傾向のバンドを集め、ライヴハウス・シーンをサイケに盛り上げようという試みだった。ゆらゆら帝国、dipのドラマーの別プロジェクトMagic Mashroom Syndrome、海外でCDデビューしたMuddy Frankenstein、女性ヴォーカルが怪しいDas Gemeine、ツイン・ギターがテレヴィジョンを思わせるSpecial View、ジャックスをニューウェイヴにしたようなSolid Calm Skyなど様々なバンドが出演した。
1992年にSpecial View、Solid Calm Skyと共にスプリットCD「アートロック宣言」を自主リリース。300枚プレス限定盤。Fool's Mate、Doll、CD Journalなどの音楽誌に好意的なレビューが掲載された。
1992年後半ドラムがジャズ好きのA氏からカツ重のF氏に代わりさらにヘヴィー・ロック色を強くする。1994年4月に解散するがその頃のサウンドを聴くと現在UFO CLUBなどでやっても全く遜色のないラリった異臭をプンプン放っている。
その幻の音源/ライヴ映像が噂のK氏の手で一挙にYouTubeにアップされた。私も20年ぶりに目にする映像だが、平成初期の混沌とした空気感と日本のロックが伝統的に持っていた湿ったアブナさに満ちていて悪くない。単なる懐かしさを超えた永劫の響きが封印されている稀少映像である。頭痛持ちのアナタに是非体験してもらいたい。
行くぞ今こそ
アートロックで
殲滅だ
Flower Tripの前身バンドのRajioの封印もいつか解かれる日が来るのだろうか。