A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

漆黒の闇から色彩天国へ~シベールの日曜日「Gypsy House」

2012年08月07日 00時26分56秒 | 素晴らしき変態音楽


シベールの日曜日---1962年製作のフランス映画は観たことはないが、この甘美なタイトルを名前にしたバンドに出会って5年になろうか。函館のサイケデリック・バンドとしてサイケ/アングラ好きの噂になっていた彼らは2008年と2010年に2作のアルバムをリリースしているが、いずれもライヴでの轟音ギター・サウンドと打って変わったフォーキーで詩情豊かな作品だった。当時リーダーの坪内和夫氏は「シベールの日曜日の音楽には愛と死と悲しみがある」と語っていたが、轟音と幻惑的な照明により精神を歪めるライヴと"愛と死と悲しみ"を描く私小説風のCDを別モノと考えていたのだろう。

坪内氏以外全員メンバーチェンジし、愛のために死すの早川洋平氏(b)、島健太郎氏(ds)とのトリオになって初めての2枚組3rdアルバム「Gypsy House」が完成した。現在のところ店頭販売は行わず、twitterで時折呟かれる出没動向を頼りに本人から購入するか(@sundays_cybeleをフォローのこと)、ライヴ会場での物販、オフィシャルHPでの通信販売しか入手方法がない。私もtwitterで連絡を取り合い、まるでヤバいブツを手に入れるように深夜の下北沢で坪内氏本人と待ち合わせ購入したが、現在のところ購入者と直接やりとりできるこの方法がベストな販売方法だと話していた。レコード店で働いた経験もある彼だから、販売システムに関して独自の考えを持っているのだろう。

そういう作品だからクオリティはどうかな?と思ったが、パッケージ、内容共にたいへん完成度の高い作品である。ジャケット写真は古くは内田裕也とフラワーズ「CHALLENGE!」、モップス「御意見無用」、1990年のニューエスト・モデル「クロスブリード・パーク」、1995年のゴースト「GHOST」などを思わせる幻想的野外撮影モノ。ブックレットの写真も今までのモノクロームのイメージではなく60年代ヒッピー風のカラフルなファッションに身を包み、より解放的で風通しの良い雰囲気を打ち出している。

サウンドの方も同様。オープニングの「同心円 otherwise snake」でカリンバとシタールが鳴り響き異世界への扉が開かれる。そのサイケなムードのまま目眩く極彩色ワールドが展開される。ヘヴィなビートや歪んだギターの感触はライヴに近いが、幾重にもオーヴァーダブされたギターや様々な楽器、テープの逆回転、元電動プリン/dip、現在TRANKOやmizuumiなどのユニットやソロで活動するヨシノトランス氏(sitar)や壊れかけのテープレコーダーズのゆさ嬢(org)などをゲストを迎えての演奏などスタジオ録音ならではの工夫が行き届いており、105分に亘る一大サイケ絵巻になっている。

個人的に気に入ったのは魂の深淵へ沈殿していくヴォーカル・ナンバー「Waiting for you」「into the broken seas again」、サイケデリック・スピード・フリーク(PSF?)「Angel」、ゆさ嬢のドアーズ風オルガンが鳴り響く「めぐり逢い」、トリッピーなファンキー・チューン「至上の愛」、ライヴをそのままパッケージした轟音ギターの嵐のラスト・ナンバー「Holocaust」などだが、CD2枚続けて聴くことで今までにない迷宮に迷い込んだ精神世界の旅を経験することが出来る。



配信やYouTubeでの視聴が主流になりコンパクトな聴き方が主流になった現代に敢て長大なコンセプト作品をリリースした彼らの姿勢に心から拍手を送りたい。

迷い込む
シベールの森
奥深く

シベールの日曜日のリズム隊の二人が参加する愛のために死す企画のイベントがあります。壊れかけのテープレコーダーズやマヘル/los doroncosの長谷川真子嬢も出るので面白そう。間違いなく坪内氏も観に来ると思うのでシベールの新作CDを入手するチャンスかも。

8/25(土) 愛のために死す&Reconquista共同企画"Frame Out Volume.3"@落合soup
開場 18:30 / 開演 19:00 / 料金 1500円
Live :愛のために死す、MARK、壊れかけのテープレコーダーズ、T.T.端子 + 清岡秀哉 + 長谷川真子
[8/13追記:フライヤー画像を追加しました]



コメント (7)
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