福島第1原発事故および放射能汚染をきっかけに昨年福島県四季の里+あずま球場でのイベントを中心として開催された世界同時多発フェスティバル「フェスティバルFUKUSHIMA!」今年は8/16~23の12日間に亘り世界各地で様々なイベントが開催された。その中の目玉イベント「ノイズ電車・ノイズ温泉」に参加するため今年も福島へ行ってきた。90名限定のチケットは発売と同時に即日完売したという。ノイズと電車&温泉、全くミスマッチなこの企画は一体どんなことになるのだろうか?
高速バスで5時間、昼過ぎに福島駅へ到着。ノイズ電車出発まで時間があったので市内観光でもしようかと思ったが余りの暑さに諦めて、先に会場兼宿泊先の飯坂温泉の旅館清山にチェックインすることにした。飯坂鉄道は2両編成のローカル線で沿線はのどかな農村風景が続く。束の間旅情を楽しみ旅館へ着くと入り口に「歓迎ノイズ温泉会場」と書いた大きな看板があって笑う。ロビーにJOJO広重さんや美川さんやスタッフがいたので軽く挨拶してチェックイン。由緒ある旅館らしく廊下に今までの宿泊客の書いた色紙がたくさん飾ってある。汗を流しに露天風呂へ。すっきりして福島駅へ戻るため旅館を出る途中、地下のBARではサウンドチェックが始まっていて古風な旅館に似合わぬ轟音が響いていた。
福島駅ビルで喜多方ラーメンを食し集合場所の飯坂鉄道の改札に行くと数十人の若者が並んでいる。ノイズ電車専用改札から入場。「到着の電車は貸切電車、ノイズ電車です」のホームアナウンスで観客爆笑。電車の中ではすでに美川さんがエフェクター・テーブルをセッティングしていた。そこに各駅からミュージシャンが乗り込んで来て加わるという趣向。
ドアが閉まると同時に美川さんが爆音ノイズを開始。観客が取り囲んで歓声を上げる。次の駅でJUNKOさんが乗ってきて隣の車両で叫び始める。次に広瀬淳二さん、大友良英さん、JOJO広重さんの順で最終的に5人のミュージシャンが参加した。観客は車両を移動してそれぞれの演奏を観る。広瀬さんと大友さんがあちこち歩き回り絡む。揺れる電車の中だからたいへんな騒ぎだ。参加ミュージシャンは事前に保険に入ったというが、確かに事故が起ってもおかしくない状況。観客も結構アブナかったかも。車掌さんが楽しそうに写真を撮っていたり、ホームのお客さんが何事かと目を丸くしていたり、面白可笑しくも傍迷惑な電車である。30分の旅だったがとにかく前代未聞の経験だったことは間違いない。
飯坂温泉駅に到着し旅館へ。地下のBARはカラオケ用の学芸会風のステージと大きなTVモニターがある。運良く最前列に座れた。最初に旅館の女将さんの「今日はノイズをゆっくりお楽しみください」という挨拶があり大ウケ。まずはDoraptron=ドラびでお(一楽儀光氏)+伊藤篤宏氏。二人ともヒカリ系電子楽器だからバックスクリーンに映写される映像と共によく映える。眩しく点滅する蛍光灯とテクノイズ・ビートが同期し気持ちよかった。
続いて今井和雄氏のギター・ソロ。今井氏はセッションで何度か観たことがあるがソロは初めて。2台持ってきたアンプの1台がサウンドチェックで飛んでしまったというが、1台で充分な爆音演奏。フィードバックを使わず絶え間なく激しく弾きまくりの演奏はデレク・ベイリー系インプロの対極にあるパワー即興。余りの激しさに頭が朦朧としてきたところで唐突に終了。エネルギーが凝縮された20分だった。
最後が非常階段=JOJO広重さん+JUNKOさん+T.美川さんに大友良英さんが加わった演奏。非常階段に大友さんが参加するのは初めてとのことで、歴史的なライヴだというが、ノイズ電車もノイズ温泉も滅茶苦茶歴史的な出来事。大友さんは「将来教科書に載るかも」と冗談を飛ばす。今回の企画は大阪での「ノイズ大学」で広重さんと大友さんが対談した時にの冗談半分の話がきっかけだったという。ノイズ電車が大成功だったので次は「ノイズ新幹線」だと笑わせる。演奏は大友さんがかなりキレて激しいプレイ。広重さんは電車の中で暴れ過ぎたのか、比較的大人しく演奏に集中。しかし非常階段の演奏をイスに座ってのんびり観れるのも乙なもの。コサカイ氏が不参加なのでボディ・アタックの恐れもないし安心。
▼照明が暗くてよく分からないが実はこんなトロピカルなステージ
電車~温泉とたっぷりノイズに浸って、終演後は温泉に浸かってこのレアな体験をしっかり楽しんだ。この企画の実現に尽力したdoubtmusicの沼田夫妻、およびフェスティバルFUKUSHIMA!実行委員会の皆さんお疲れさまでした。
翌朝、このイベントとは関係ない年配のお客さんも泊まっていたことを知った。夜中に鳴り響く騒音は相当迷惑だったのではないだろうか。四季の里で開催されるクロージング・イベントにも参加申し込みしたのだが、充分堪能したし疲れたので昼間のバスで東京へ帰った。
何にでも
ノイズと付けりゃ
全てOK
広重さんはブログで「来年もぜひやりましょう」と書いていたが、もしまたあったら是非参加してみてはいかが。9/25のJAZZ非常階段@新宿ピットインも楽しみでならない。