A Challenge To Fate

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精神の深淵への旅路~灰野敬二+スティーヴン・オマーリー+オーレン・アンバーチ「なぞらない」

2012年08月28日 00時25分20秒 | 灰野敬二さんのこと


過去3年間続けて1月に来日し、灰野さんとジム・オルークとのトリオを含むライヴをしてきたオーストラリア出身のマルチ・ミュージシャン、オーレン・アンバーチと、アメリカのアンビエント・ドローン系ドゥーム・バンド Sunn O)))のメンバーのスティーヴン・オマーリー、そして灰野さんのトリオは2011年4月にアムステルダムで初共演、同年11月にはベルリンとパリでも共演している。

灰野+オルーク+アンバーチのトリオでは2009年北九州芸術劇場でのライヴ「Tima Formosa」、2010年六本木スーパー・デラックスでのライヴ「またたくまに すべてが ひとつに なる だから 主語は いらない(in a flash everything comes together as one there is no need for a subject)」(2枚組LPのみ)、2011年同じくスーパー・デラックスでのライヴ「いみくずし(Imikuzushi)」(2枚組LPとCD)の3作をリリースしている。1作目「Tima Formosa」はアンバーチがギター、オルークがピアノ、灰野さんがヴォイス、フルート、エレクトロニクス、パーカッションのドローン/アンビエントなサウンドだが、2,3作目は灰野さんがヴォーカル&ギター、オルークがベース、アンバーチがドラムというロック・トリオ編成である。どちらも不失者の別ヴァージョンと呼んでもいいほどの透徹した灰野ROCKを展開している。その2作のジャケット・デザインを担当したのがスティーヴン・オマーリーで、特にLPの豪華な装丁はアナログならではの味わいが素晴らしい。

オマーリーは以前から灰野フリークとして有名で事あるごとに影響を受けたアーティストとして灰野さんの名前を挙げていた。昨年、長年の夢が叶い初共演が実現し、11月8日パリでのライヴ録音が「なぞらない(Nazoranai)」というタイトルの2枚組LPとCDでリリースされた。アンバーチとの前作のタイトル「いみくずし」は昨年来の灰野さんのライヴでキーワードとして歌われ、今年1月UFO CLUBでの不失者ワンマン・ライヴでは冒頭に灰野さんが「これからまだあり得なかった"いみくずし"という何かを起こしていきます」とMCしたほど。因みにこの日のライヴのためのスタジオ・リハーサル風景は映画「ドキュメント灰野敬二」の中でも印象的なシーンの一つとして描かれている。

そして今回の「なぞらない」は6月の映画前夜祭、8月のFREEDOMMUNE 0<ZERO>の不失者のライヴで披露され、なってるハウスでの吉田隆一氏とのデュオでも歌われた。今年の灰野さんのキーワードはこの言葉のようである。

このアルバムで聴ける演奏は単にベーシストがオルークからオマーリーに変わっただけではなくSunn O)))独特のドゥームな雰囲気を加味した地の底を這うように深いリバーブのかかったヘヴィなサウンドになっている。しかし中心にあるのは「一音を鳴らすことへの強靭な覚悟」という灰野さんの世界の核心をなす意志の力。その世界の実現のためにオマーリーもアンバーチも先人の描いた世界や演奏を"なぞらない"で確信に満ちた演奏を展開している。灰野さんにとってこのトリオも"もうひとつの"不失者であり「まだまだカッコ良くなる」ための存在証明に他ならない。

リリース元はオーストリアのポストロック系レーベルEditions MEGO傘下のオマーリー自身のレーベルIDEOLOGIC OORGAN。実はこのアルバムには「なぞらない」という歌詞は出てこない。またアーティスト表記も「Nazoranai」となっている。



いみくずし
そこから先は
なぞらない

アンバーチはSunn O)))のゲスト・メンバーとしてライヴ等に参加しているが、同郷のオーストラリアのアーティスト、クリス・タウザンドとのデュオの「Sun」というユニットでも活動しており実にややこしい。
コメント
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