A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

藤掛正隆×早川岳晴×梅津和時×ヒゴヒロシ@荻窪ルースター・ノースサイド 2014.1.31(fri)

2014年02月02日 01時08分19秒 | 素晴らしき変態音楽


藤掛正隆&早川岳晴presents 崖っぷちセッションvol.42

早川岳晴(b), 藤掛正隆(ds)
ゲスト:梅津和時(sax,cl.) ヒゴヒロシ(b)

追悼するほどよく知っている訳ではないが、高校2年のとき『東京ニューウェイヴ'79』というレコードを聴いてSEXの曲「TVイージー」に痺れて、生まれて初めて行ったライヴハウスで観たのが川田良(&伊藤耕)のSYZEだった。1979年7月13日吉祥寺マイナー、対バンはFriction。SYZEの方が断然カッコ良かった。マジソンスクエアガーデンのスポーツバッグに忍ばせたラジカセで録音したライヴ・カセットは、恐らく生涯で最も回数多く聴いた音源だと思う。その年の文化祭バンドで「TVイージー」をカヴァーした。SYZEは2回程観たっきりで、川田のその後のバンドを追うことはなかった。しかし自分のロック衝動の最初期にSYZEと川田良があることは間違いない。

  

その頃SYZEと同じくらい好きだったのがミラーズだった。同年リリースされたゴジラレコードのシングル「Out Of Order」のガムシャラに暴走するサウンドに惹かれ、池袋Studio2000でボイーズ・ボーイズとの対バンで観たミラーズは、3コード・パンクとは異色のアヴァンギャルドなギターと、機関銃のような勢いで吐き出される言葉が圧倒的だった。SYZEにはロックのカッコ良さを感じたが、ミラーズはロックの危なさ(ヤヴァさ)が溢れていて、感動よりも脅威を覚えた。心に焼き付いているのは前のめりにドラムを叩き歌うヒゴヒロシの一心不乱な表情。今でも「トライしてみな今、 パンクするまで」という歌を聴くと、当時常に感じていた「何かしなきゃ」というヒリヒリした焦燥感を思い出す。

 

昨年夏に灰野敬二との共演で観た「崖っぷちセッション」の42回目にあたる今回は、クリスマスにヒカシューのゲストで観た梅津和時があまりにも素晴らしかったことと、年末に観た灰野の新バンドHardy Soulで藤掛正隆のドラムに改めて感銘を受けたこともあり、これはナイスな組み合わせと早々に予約を入れ最前列を押さえていた。だから全くの偶然だが、川田良の訃報の翌日にヒゴヒロシのライヴを観るとは運命的なものを感じる。梅津と早川岳晴は1979年にデビューした生活向上委員会のメンバーだった事実も考え合わせると、期せずして川田良の追悼ライヴ的ニュアンスを感じたと言ったらこじつけに過ぎるだろうか。もちろん、そんな感傷は筆者の勝手な思い込みであって、出演者の胸には新たなセッションの歓びと期待しかなかったことは間違いない。


(写真・動画の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)

ヒゴは崖っぷちセッション初出演、梅津との共演は約10年ぶりだという。ステージに上がった4人を観て初めてツイン・ベースであることに気づいた。早川&藤掛両名義の主催イベントだが、MC(Master Of Ceremony=司会進行)は藤掛。演奏に於いてもリードするのは藤掛のドラムである。冒頭のトライバルなビートに2本のベースが絡み、サックスがフリーキーなソロをとる演奏に、オーネット・コールマンの『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』が頭に浮かんだ。オーネットのツイン・ギターに代わって2本のベースが自由気ままなプレイを展開。ヒゴが低音メインで骨太にボトムを固め、早川がハイポジションで裏メロを奏でるスタイルが基本。ドラムのビートの変化に応じて場面がチェンジする。藤掛はカオシレーターで電子ノイズを鳴らし、早川はサンプラーでフレーズをループさせる。さらに梅津がソプラノはもちろん、アルトでもサーキュラー・ブリージング(循環呼吸)奏法で息継ぎなしに延々とフレーズを吹き続ける。エヴァン・パーカー以外でこの奏法を観ることは滅多に無い上にアルト・サックスでやるとは驚異的。それらが絡み合いジャズとロックとノイズとミニマリズムとエスノのカオスが現出した。

 

2ndセットは梅津とヒゴのデュオ、早川とヒゴのデュオを含みより遊び心のあるセッション。4人とも完全にリラックスして心から演奏を楽しむ様子に、スタイルは異なれど30年以上演奏の現場に身を置くベテラン音楽家の懐の深さを実感した。最後のパートで4人の気持ちが最高潮に達し、ひたすら燃え上がるような饗宴の果てに、演奏家にとっては致命的ともいえる事故が発生したが、焦りを見せることなく演奏を完遂した意思の強さに、真のミュージシャン・スピリットが輝いていた。

 

2時間に亘るカオス的セッション全体を貫いたのは藤掛のタイトなドラム・ビートだった。先日観たデリック・ホッジ本田珠也SESSIONでも感じたが、音楽に於ける真のセンターはドラムなのかもしれない。




出会いがあり
心が通い合い
音楽が生まれる
それをセッションと呼ぶ

【New Release!】
5年ぶりのセカンドアルバム!
灰野敬二+藤掛正隆デュオ『HARDを何十乗させたら光の粒が降り注ぐのか?』



レーベル:Full Design Records
品番:FDR-1026 
発売日:2014年2月11日  
価格:2,520円税込み 



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