BATICA TROICA
<ACT> 灰野敬二/Umez/LOST IN TLANSRATIONS/キッチュ一人楽団/わかってほしい
<DJ> dj harurutokun(HALBACH)
恵比寿BATICAは最近DJ灰野敬二のイベントが続いたので、クラブ・ミュージック中心という印象が強いが、2011年のオープン直後に観に行ったのはTADZIOやCOMBOPIANOのライヴだった。元々のコンセプトが「ライブハウスとクラブの両方の良さを引き出せるお店」なので、クラブ仕様の音響設備で爆音ライヴも可能ないいスペースである。今回はBATICA主催のライヴイベント。灰野以外は未知のバンドだが、高円寺や新大久保や秋葉原とは違ったEBISUならではのユニークな世界が展開されるに違いない。
●わかってほしい
月曜日なので仕事が立て込み途中からの参戦。ミラーボールが回る暗い照明の中で3番手のバンドがセッティング中だった。「わかってほしい」というバンド名は謎めいているが、マントのようにふわっとした衣装とヴィンテージ楽器から察するに、60'S風サイケバンドとお見受けする。そのサウンドは確かにサイケデリックだが、童顔ギターの突き抜けたヴォーカル、女子ドラムと女子ベースの微妙にモタッたリズム感、時間軸を歪めるファズが、お洒落タウンEBISUに似合わぬ墓場の鬼太郎ワールドを展開する。次回のライヴが東京アンダーグラウンドの総本山UFO CLUBと聞いて納得。公式サイトの自己紹介は「現在都内にてモゾモゾ活動中の愉快なロックバンド」。腰砕けの美学を体現する妖怪バンドとの出会いに感謝。双児に違いないと思ったベースとドラムに血縁関係はないとのこと。CD『なんだこれ、生き物みたいだ』発売中。
●Umez
BO NINGENのTaigen Kawabeとロンドン時代からの盟友である元Screaming Tea PartyのニーヤンとNO CARSのSachiko Fukudaの2人がロンドンで結成したバンドがUmez(ウメズ)。昨年12月にBO NINGEN関連イベントで名前を見て、ようつべをチェックし、エレクトロパンク/ニューゲイザー風のサウンドが気になっていた。ガスマスクのニーヤンと長身のSachiko Fukudaの立ち姿はかなり印象的。ドラムマシンのミニマルビートが歪んだギターと幻想的なヴォーカルと相俟って、ドリーミーな酩酊感を醸し出す。特に最後に演奏された10分を超える長尺ナンバーの浮遊するサウンドにはロンドン仕込みのドラッギーなトリップ感が漲っていた。
●灰野敬二
最近はワンマンや共演イベントが多い灰野敬二久々の対バン・イベント出演。時間の限られた中で展開される凝縮された演奏がワンマンとはひと味違ったスリルに満ちている。テーブル2卓と大量の機材がステージ上に運ばれ、じっくり時間をかけてセッティング。22時予定が30分近く遅れてスタート。照明を極限まで落とした暗闇に黒い影が浮かび上がる。爆撃のようなシンセサイザーの電子音が一斉放射され音圧に押しつぶされる。イベントの主旨が何だろうが、対バンが誰だろうが一切妥協の無い灰野ワールドを作り上げる。地鳴りのようなドラムマシンの連打、脈打つ重低音、引き裂くエアシンセの悲鳴。腕を振り上げて操る姿は邪教の祈祷師のよう。嵐吹きすさぶ激音から一転してハーディガーディの呪術演奏に。時間が引き延ばされるようなドローンに乗せて歌われたのは灰野には珍しく英語の詩だった。60分の情念の放出に耽溺した。
恵比寿には
邪神が住むと
人は言う
90年代に恵比寿MILKが灯したEBISUアンダーグラウンドの炎がBATICAに引き継がれている。