(写真の撮影・掲載については、出演者の許可を得ています。以下同)
下山(Gezan)のマヒトゥ・ザ・ピーポーのワンマン・ライヴ。会場は生前の松田雄作が通った格式高いジャズバー下北沢Lady Jane。灰野敬二や坂田明などジャズ・即興系アーティストのセッションで何度も通っているが、シンガーソングライターのワンマンは初めて。20人も入れば満員の小さな店だが、いつも比較的出足が遅いので高をくくって開場時間ちょうどに行くと、イマドキ女子の長い列。すっかり忘れていたが、若手ロックバンドのセンターを務めるナイスガイのソロ公演だから、女性ファンが多いのは当たり前。ルックス目当てという訳ではなく、先鋭的なカルチャーに真っ先に反応するのがいつもガールなのは世界の常識である。
若干アウェー感を抱きつつ席に着く。この店では経験したことのない盛況ぶりで、ベテラン店長も勝手が違って戸惑いを見せる。アップライト・ピアノの前に設置された譜面台を囲むように座る女子ファンはお喋りに興じることもなく、穏やかに主人公の登場を待つ。音楽ライヴと云うより、詩の朗読会のような静謐な雰囲気。客席の後ろからマヒトがふっと現れ、椅子に腰かけ、おもむろにギターを爪弾き歌い始める。飛んできた鳥が庭の木にとまってさえずり出したような、ごく自然な存在感。彼はしゃべるのと同じように歌う。ラフな赤ジャージ姿が、友人の部屋で寛ぐようなリラックスしたムードを醸し出す。
飾り気のないアルペジオ、時にしゃくり上げる甘えるような歌声。「夏」「海」「月」「朝」「流れ星」「陽炎」といった陽性の言葉の中に、「死」「血」「悪魔」「黒」「男性器」という毒気を含んだ名詞が棘のように突き刺さる。2014年初ライヴの月見ル君想フのイベントで「新曲を作るといつも夏の歌になってしまう」と語っていたが、手が届く前に過ぎ去ってしまうエンドレス・サマーへの憧憬とも惜別ともつかないしょんぼりした気持ちが、彼のうたの底にあるのではなかろうか。
オシリペンペンズのメンバーチェンジに触れ、「ずっとそのままでいいと思っていたことがいとも簡単に壊れてしまう。結局音楽はいつも負けなのかな」と嘆くが、マヒトはそんな時間とどっちが早いか勝負をしているのだ。「目に見えることだけは信じていい」という言葉には、覚悟を決めた男の信念が漲っている。控えめ過ぎる拍手のアンコールで歌った下山の新曲「瘡蓋と爆撃機」の歌詞にあるように「この4人なら行けるよと信じて死にたい夜をこえてきた」。人間がいつか枯れて黄昏(たそがれ)る運命だとしても、それはスピードとの勝負に決着がつくまでは訪れることはないに違いない。
沈黙の
次に美しい
歌の数々
下山(Gezan) 2nd Album
『凸-DECO-』 2月5日発売
テニスコーツと下山 コラボレーションアルバム
『ライブ in ザバン』 発売中(ライブ会場、及び一部レコード店での販売)
マヒトゥ・ザ・ピーポー 2ndソロAlbum
『POPCOCOON』 3月5日発売
【 レコ発ツアー情報 】
2月9日(日)京都 METRO 「HOMESICK 17」
2月11日(火・祝)東京 下北沢GARDEN 下山(GEZAN) / NATSUMEN / 漁港
2月13日(木)北海道 COLONY
2月20日(木)~3月14日(金) USツアー & 「SXSW 2014」(全20カ所予定)
3月23日(日)長崎 Studio Do!
3月28日(木)福岡 SPIRAL FACTORY
3月30日(日)大阪 CONPASS(ワンマン)
4月3日(木)愛知 APOLLO BASE(ワンマン)
4月5日(土)東京 新代田FEVER(ワンマン)