3.11後の世界,音楽の虹の橋「天竺箔」
灰野敬二 × 太田惠資 × U-zhaan
灰野敬二が「いつでも一緒に演りたい人」「彼は(所謂インプロでの演奏に於いて)相手が出した音に反応して絡むというようなことは充分にわかった上で、“その次のこと”を演ってくる」と語るヴァイオリン奏者・太田惠資との約2年半振りとなる共演に、両者ともに初顔合わせとなる実力派タブラ奏者・ユザーンが加わり、未知の音楽を顕わし奏でます。是非体験しにいらしてください。
灰野敬二と太田惠資の初共演は2003年4月16日大泉学園in Fだった。JAZZ&地酒と称するキャパ10数人程度の気の置けない小さな店で、灰野が都内に住んでいた頃は二月に一度くらい出演していた。ジャズ・即興のユニークな組み合わせが売り。初顔合わせのその日は、最初は緊張感があったが、徐々に心が通い合い、太田のメガホンやおもちゃを駆使したパフォーマンスに笑いも起こる楽しい共演になった。まだ灰野のライヴに通いだして1年ほどだったが、いつもの灰野のピーンと張った空気を、太田が掻き混ぜる演奏がとても新鮮だった。終演後に外の階段で、煙草を吸う太田と、煙が届かない上階で寛ぐ灰野に、「ぜひレギュラーで活動してください」と興奮気味に話しかけたことを覚えている。その気持ちが通じたのか、灰野と太田は何度も共演するようになった。
ユザーンの演奏は、フェスティバルFUKUSHIMAやJAZZ ART仙川などで何度か観たが、印象に残っているのは5年前の中原昌也とのセッション。インド音楽の伝統を踏まえた上で新たな方向性を持つタブラがノイズや電子音と親和性が高いことに驚いた。アコースティック感覚のセッションを時折行う灰野や太田と共演歴がないとは意外だったが、何かしら縁がないと出会いというものは起こり得ないのも確か。今回縁結びをした「3.11後の世界,音楽の虹の橋」の企画者の慧眼に敬意を表したい。
(写真の撮影・掲載については主催者の許可を得ています。以下同)
椅子席がちょうど埋まった客席を見渡すと、いつになく女性が多いのに気がついた。おしゃれタウン六本木ということを差し引いても普段の灰野や太田のライヴでは見ない客層だから、ユザーンギャルなのだろうか?休憩時間に女子トイレに列ができる状況は、スーデラではあまり経験したことがない。
前半は3パターンの組み合わせを変えたデュオ演奏。
太田×ユザーン:宇宙人がチュニジアかモロッコの街角でセッションしているようなヴァイオリンとタブラのエキゾチックな演奏。
ユザーン×灰野:灰野のシュルティボックスのドローンに乗せた大らかな歌をタブラの反復リズムが鼓動させる。後半は灰野がアタックの強いタラブッカを叩き、ユザーンのミニマルなタブラと好対照を成し、異能グルーヴの魔法の絨毯で連れ去られるような瞑想感があった。
灰野×太田:エレクトリック・ギターとヴァイオリンの火の出るような爆音デュオ。この日は全体的にアコースティックだと思っていたので、想定外の重低音の地響きに背筋がゾクゾクした。
後半はトリオ演奏。
灰野はパーカッション、笛、ブルガリなど楽器を持ち替え、音量的には比較的穏やかな演奏。それだけに英語と日本語の両方を使い分けた歌が全面に聴こえる。ユザーンとピッタリ息が合ったようなグルーヴを産み出し、その上を太田のヴァイオリンが縦横無尽に駆け巡る。場面展開も見事に移り変わり、まるで示し合わせたかのような展開。タブラからは信じられないほど多彩な音色が溢れ出す。1時間に亘り一篇の組曲のようなドラマティックな演奏に酔った。イベントタイトル通り「天竺」に遊んだ夜だった。
エスノとは
呼びたくないね
タブラビート
<灰野敬二Live Schedule>
2014.6.28(土) 六本木Super Deluxe
MERZBOW+石橋 / 灰野+O'ROURKE
メルツバウ + 石橋英子 デュオ/灰野敬二 + ジム・オルーク デュオ
2014.7.4(金) 秋葉原Club Goodman
doravideo presents<頂上決戦!>
灰野敬二/JOJO広重/doravideo
2014.7.12(土) KATA + Time Out Cafe & Diner [LIQUIDROOM 2F]
mu h – double helix – release party
[GUEST]灰野敬二 (EXPERIMENTAL MIXTURE)他
2014.7.20 (日) 六本木SuperDeluxe
HARDY SOUL + 湯浅湾