The Birthday 『COME TOGETHER TOUR 2014』
5月からスタートしたレコ発ツアー・ファイナルは、The Birthdayにとって初のホールワンマン公演となった。2006年の結成以来オールスタンディングのライヴハウスや野外フェスでのライヴ活動を続けてきた彼らだけに、モッシュやダイヴを楽しみに集まるファンは多い。しかし、一方で嘗てのTMGEやROSSO時代に比べバラードやスローブルースが増えたThe Birthdayの演奏をじっくりと味わいたいというファンも少なくないし、往年のファンやメンバー自身もアラフォー~アラフィフと年輪を重ね、騒ぐだけがロケンローじゃないという悟りもあるかもしれない。そんな気持ちがホール公演実現の動機ではないか、というのがOver The Fiftyの勝手な解釈である。そう考えると、盟友でありライバルであるベンジー☆浅井健一が50歳を目前にして椅子席アコギライヴを開催したのも、R&Rブラザーの魂の共鳴といえよう。
⇒浅井健一@新木場STUDIO COAST 2014.9.25(thu)
ステージにはいつものように絨毯が敷かれ、こじんまりとした親密な空間に機材が設置されている。天上から大きなシャンデリアが吊るされ、舞踏会のような高貴なムード。登場SEの「Sixteen Candles」が映画『アメリカン・グラフィティ』のハイスクールダンスパーティの場面をイメージさせる。筆者は「一番好きな映画は?」と訊かれるとこの映画を挙げることにしているが、世界がキラキラ星のように輝いていた時代 ~60年代とか特定の時代を指すのではなく、すべての人それぞれの人生に於いて最も輝きに満ちた一時期~を讃える『アメグラ』の世界は、そのままチバユウスケと仲間たちが鳴らすロケンローに繋がっている。心の中のロケンローが鳴り止まないうちは、何度でも輝きの中に生まれ変わることが出来る。そしてその度に誕生日(Birthday)が訪れる。涙がこぼれそうなほどのロケンロー愛でぬりつぶされた歓喜の2時間に溺れた。
<Set List>
1. LOVE GOD HAND
2. Buddy
3. アイノメイロアイノネイロ
4. 星の首飾り
5. SAKURA
6. KIMAGURE KING
7. STAR MAN
8. KNIFE
9. LEMON
10. RED EYE
11. プレスファクトリー
12. PIERROT
13. JOIN
14. 情熱のブルーズ
15. なぜか今日は
16. 星に願いを
17. COME TOGETHER
18. くそったれの世界
アンコール #1:
19. Alright
20. 涙がこぼれそう
アンコール #2:
21. さよなら最終兵器
【論考】渋公とハチ公とポリ公
チバ「渋公でロックンロールって、こないだのブライアン・セッツァー以来だ」
クハラカズユキ「渋公っていえばドリフだよね」
チバ「渋公ってなくなっちゃうんでしょ」 観客(無言) チバ「え、違うの?」*
*渋谷公会堂は2015年に解体され、その後建て替え工事が行われて2018年に新装オープンする予定。なくなるわけではない。
チバユウスケやクハラカズユキにとって渋谷公会堂とロケンローはあまり結びつかないようだが、筆者的には聖地までは行かなくともロックの砦といった印象がある。まだクラブクアトロやクラブチッタがない頃、そこそこ売れる新人・中堅の洋邦アーティストのコンサート会場は、日本青年館、中野サンプラザ、新宿厚生年金会館、そして渋谷公会堂(渋公)が中心だった。特にNHKホールに近い渋公は、昇り調子の有望新人アーティストの登竜門と呼ばれた。筆者の記憶に残る渋公アーティストを。
●ラフィン・ノーズ
高校生の頃から何度か行った筈だが、渋公で観たコンサートで印象に残る最も古い記憶は、86年のラフィン・ノーズ『SOS TOUR』。高校時代のバンド友達と二人で前から3列目で観た。メジャーデビューしてポップになり少し失望していたが、目の前で叫ぶチャーミーの堂々としたステージングに熱狂した。
●ジュリアン・コープ
洋楽ライヴも多数観ているが、記憶に残っているのはエコー&ザ・バニーメンと同郷のリヴァプール出身、元ティアドロップ・エクスプローズのジュリアン・コープの87年の来日公演。亀の甲羅を被った2nd『FRIED』から2年半ぶりの3rdアルバム『セイント・ジュリアン』を引っさげてのステージは、くの字型の曲がったマイクスタンドで挑発的なパフォーマンス。自ら「聖人」を名乗り十字架のキリストに扮する変人ぶりを堪能した。今では『JAPROCK SAMPLER』をはじめとするマニアックなロック研究家として有名。翌年にエコバニのイアン・マカロックのソロ来日公演も渋公で観た。
●ザ・ハイロウズ
邦楽も有頂天、PSY'S、パール兄弟等いろいろ観たが、90年代のオレ的渋公といえばヒロト&マーシーの第二のバンド、ハイロウズにとどめを刺す。ブルーハーツは最初の3枚で離脱したので解散した時も何とも思わなかったが、95年夏湘南へ向かう車のカーラジオから流れてきた「ミサイルマン」に電撃ショックを受けロケンローに帰依した。アルバムが出る度に全国ツアーを行い、東京は必ず渋公だった。セックス・ピストルズの前座で「ベイ・シッティ・ローラーズ」を名乗って(日本)武道館でもやったが、やっぱりヒロト&マーシーには渋公が似合う。第三のバンド、クロマニヨンズになっても渋公(一時期C.C.LEMONホール)公演は欠かさない。最新作『GUMBO INFERNO』ツアーでも2015年2月5日に渋公公演。とうぜん前売予約済。
【証言その1】「渋公」とは何ぞや?ヒロトが見事に言い当てた渋公公演の珠玉のライヴレポート。
【注意】ざっと全体を眺めるだけではなく、最初から最後まで一語一語、出来れば声に出して読むことで、実際のライヴを擬似体験出来ます。
⇒ザ・クロマニヨンズ TOUR ACE ROCKER 2012@渋谷公会堂 2012.5.23 (wed)
【証言その2】渋公でパチリ!(アーティスト名・時期等詳細不明)
渋公と
ハチ公は
遠い親戚
でんぱ組.incのえいたそ☆成瀬瑛美さんが共同著書『でんぱ組.incの妄想大百科』に於いて、コンサート会場をキャラクター化するという天才ぶりを発揮している。残念ながら今手元にない為、詳細を確認出来ないが、例えばZEPP TOKYOとZEPP DIVERCITYが双児の兄弟とか。渋谷公会堂は載ってなかったと記憶する。血縁関係のない異性の中で筆者が最も敬愛する成瀬さんだけに、渋公をどうキャラクター化するのか興味は尽きない。
[10/9追記]
▼マキシマムえいたそ先生の天才の技!