A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【素性判明】NY HARDCORE JAZZ流星群の大彗星 "Chris Pitsiokos" クリス・ピッツイオコス

2014年10月10日 01時02分38秒 | 素晴らしき変態音楽


初めに告白するが、筆者はジャズの落ちこぼれである。18歳で大学入学と共に大久保の中古楽器店でセルマーのアルトサックスMark6を購入し、大学のジャズ研に入るも、オーネット・コールマンが好きだと言ったら嘲笑され、チャーリー・パーカーを聴けと強制される体育会気質に嫌気がさして退部した。

I need to confess that I'm a Jazz dropout. First thing I did when entered the university at 18 was to buy a secondhand Selmar Mark 6 alto saxophone. I joined the University's Jazz Players Club. They laughed at me when I said my hero was Ornette Coleman, and forced me to listen to Charlie Parker. As I didn't want to be forced to do something, I fucked them and dropped out.

それ以降、音楽理論など関係なく、ただ好き勝手にサックスを吹くことに専念した。それはジャズでもロックでもインプロでも音楽ですらもなく、ただの音、ただの騒音、ただの叫びに他ならなかった。他人に認められなくても自分が出せる音を気狂いのように出せばそれで満足だった。

After that, I was deep into only blowing the sax as I like, ignoring music theories. It was not Jazz nor Rock nor Improvisation, even nor Music. It was nothing else but only tone, only noise, and only scream. I was satisfied to blow tones all I could blow just like madman, even though nobody accepted.

演奏を辞めた今でも、他人に迎合することなく自分自身の音を容赦なく撒き散らす演奏に心を惹かれる。私が好きな音楽家・表現者は常に唯我独尊である。

Now I retired from playing music, but I'm attracted by musician who relentlessly spreads his own tone/sound without tuning into other people. All of my favorite musicians and performers think themselves as somewhat center of the universe.

そして今ニューヨークに最高に唯我独尊な若い音楽家を発見し、最高に興奮している。彼の名前はクリス・ピッツイオコス。

And now, I'm most excited just to find the 'center-est of the universe' young musician from New York. His name is CHRIS PITSIOKOS.


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先日「これは凄い!」と紹介したニューヨークのサックス奏者Chris Pitsiokosと連絡を取っている。名字の発音は"Pits-ee-oh-kos"または "Pits-ee-oh-kuss"とあり、その通りだとすると「ピッツイーオーコス(カス)」となる。しかし、Pharoah Sanders(×ファラオ⇒○ファロア)や、Bill Bruford(×ブラッフォード⇒○ブルーフォード)の例もあるので、実際の発音を聞くまでは便宜的に「ピッツイオコス」と表記しておく。
【これは凄い!】New York is Now~注目の前衛サックス奏者Chris Pitsiokos
Chris Pitsiokos公式サイト

何度かメールのやり取りをした結果、公式サイトのBiographyに新たに判明した情報を付け加えると以下のようになる。

Chris Pitsiokos クリス・ピッツイオコス
1990年ニューヨーク生まれ。ロング・アイランドで育つ。14歳の時に高校のジャズバンドで日本ツアーをしたことがあるという。コロンビア大学に学び、ジョージ・ラッセルとアーサー・カンペラに師事した。[10/10 15:54追記]2012年夏に大学のあるマンハッタンからブルックリンに移る。
現在はニューヨークをベースに作曲(コンポジション)と即興演奏(インプロヴィゼーション)両面で活動。アルト・サックスをメインにシンセサイザーも演奏する。
フリージャズ、実験音楽、ノイズ、モダンジャズ、現代音楽などジャンルにこだわらず様々な音楽を吸収する。演奏家としては、サクソフォンの楽器としての特性を研究して限界と本質を解明することにより、サックスの可能性を広げることを目指す。即興だけではなく、オーケストラ用の作曲もする。

影響を受けたアーティスト:メルツバウ、ヤニス・クセナキス、ヘルムート・ラッヘンマン、オーネット・コールマン。
主な共演者:Tyshawn Sorey, Peter Evans, Kevin Shea, Sam Pluta, Philip White, Marc Edwards, Brian Chase, Weasel Walter

演奏・作曲活動以外に、自己のレコードレーベル「Eleatc Records」を主宰し、ライヴハウス「Spectrum」のGadfly Seriesのキューレイター及びWKCRのラジオ番組の選曲家としても活動している。

<Discography>
Weasel Walter/Chris Pitsiokos - “Unplanned Obsolescence” (LP) 2012)


Chris Pitsiokos/Weasel Walter/Ron Anderson – “Maximalism” (CD) 2013


Forthcoming
Chris Pitsiokos / Philip White (electronics) - title tbc. 2014




<現在進行中のプロジェクト(ソロ以外)>
●Duo with Weasel Walter(ds)
爆発的、繊細、集中、激烈、すべて備えた即興。Weasel WalterのレーベルugExplodeからLP『Unplanned Obsolescence(計画外退行)』をデュオとしてリリース。クリス自身のEleaticレコードからのCD『Maximalism(最大限主義)』はギタリストのRon Andersonを加えたトリオ編成。

Weasel Walter ウィーゼル・ウォルター(1972年5月18日イリノイ州ロック・フィールド生まれ)

10代の頃ハードコア/NO NEW YORK/ノイズ/フリージャズ/現代音楽を経験しドラムを始める。90年代シカゴの地下音楽シーンで活動、その後ウェストコースト~ニューヨーク。共演者はエヴァン・パーカー、ペーター・ブロッツマン、ジョン・ブッチャー、マーシャル・アレン、エリオット・シャープ、ケン・ヴァンダーマーク、ジム・オルーク、ピーター・エヴァンス、メアリー・ハルヴァーソン等幅広い。アンダーグラウンドロックバンドにも数多く参加。

Ron Anderson ロン・アンダーソン(1959年生まれ)

ニューヨークをベースに活動する作曲、ギタリスト/ベーシスト。1980年にフィラデルフィアでRat At Rat Rを結成、80年代初頭にニューヨークに移り、NPR(公共ラジオ放送)やミュージアム用の音楽制作を行う。89年にカルフォルニアでThe Moleculesを結成、98年スイスへ移り、99年帰国後ニューヨークでPAKを結成、John Zornのレーベルから作品リリース。


●Duo with Brian Chase(ds)
定期的にリハーサルとライヴを行うデュオ。純粋即興、ハンパない集中度、演奏環境のエナジーを反映。2014年末に音源リリース予定。

Brian Chase ブライアン・チェイス(1978年2月12日ニューヨーク生まれ)

ニューヨークの人気オルタナロックバンドYeah Yeah Yeahsのドラマー。様々なアーティストと実験音楽デュオやユニットでも活動する。


●Duo with Philip White(electronics)
コンピュータ制御ミキサー・フィードバックを演奏するPhilip Whiteとは2013年夏から共同作業を始めた。それ以来定期的にリハとライヴを重ね、2013年12月に三日間かけてアルバムを録音。2014年秋にCarrier Recordsよりリリース予定。

Philip White フィリップ・ホワイト(1981年生まれ)

作曲家、演奏家、インプロヴァイザーとしてニューヨークをベースに活動。ハンドメイド・エレクトロニクスによる電子音楽/ノイズ演奏で知られる。数多くのフリージャズ、即興音楽のミュージシャンと共演、日本の中村としまるや足立智美とも共演歴がある。Jim Jarmusch/ Jozef van Wissum, Pauline Oliveros, John Butcherなどのレコーディングにも参加。


●Chris Pitsiokos Trio : Chris Pitsiokos (as,synth) Max Johnson(b) Kevin Shea(ds)
フリー・インプロヴィゼーションから作曲、さらにグラフィック・スコアへ至るクリスの作曲技能のすべてを発揮するプロジェクト。音楽は高度にパーソナルで、殆どがこのトリオの為に特別に書かれたものである。結成して間もないが、即座にケミストリーが生まれグループとして急激に進歩しており、クリス自身最高にエキサイトしている。

Kevin Shea ケヴィン・シェア(1973年ミネソタ生まれ)

バークレー音楽院に学びニューヨークの即興・実験音楽シーンで活動するドラマー。90年代半ば前衛ロックバンドStorm & Stressに参加、スティーヴ・アルビニ、ジム・オルークのプロデュースで2枚のアルバムを発表。2012年ヴィレッジボイス誌のベスト・ドラマーに選出される。

Max Johnson マックス・ジョンソン(1990年6月13日ニュージャージー生まれ)

13歳でベースをはじめ、高校時代にJon Anderson (Yes), John Wetton (King Crimson), the Butthole Surfersなどと全米ツアーを行う。ニュースクール大学卒業後、プロミュージシャンとしてAnthony Braxton, John Zorn, Henry Grimes, William Parker, Candido Cameroなどと共演、アメリカやヨーロッパの音楽フェスに多数出演。自己のトリオでアルバムをリリースしている。


●Duo with Lydia Lunch(poetry reading)
クリス作曲による電子音楽演奏と、Lydia Lunchの詩の朗読によるデュオ。

Lydia Lunch リディア・ランチ (1959年6月2日ニューヨーク、ロチェスター生まれ)

70年代半ばからTeenage Jesus and the Jerksを率いてニューヨークのNO WAVEシーンで活動を始め、ブライアン・イーノ・プロデュースの伝説的コンピレーション『No New York』(79)に参加。以降アンダーグラウンド・ロック界の女王として、The Birthday Party, Einstürzende Neubauten, Sonic Youthをはじめとする様々な地下/前衛/ノイズ系アーティストと共演。女優、作家としても活動し、スポークン・ワード(詩の朗読)の第一人者でもある。

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前回紹介したように、YouTubeを検索すると今のニューヨークの前衛音楽シーンの活況を示す動画が多数見つかる。上記のミュージシャンを含め、多数の個性的なアーティストが組み合わせを変えて実験的・画期的なセッションを繰り広げている。この状況を「ジャズ」と呼ぶことには、落ちこぼれの筆者としては抵抗がない訳ではないが、70年代から続く前衛(Avantgarde)・極端音楽(Extreme Music)の精神が確実に流入している現代ニューヨーク・シーンを敢てハードコア・ジャズ(Hardcore Jazz)と呼んでみたい。ただし、落ちこぼれの筆者の言葉は常に非ジャズ(Anti Jazz)的である旨ご注意いただきたい。


下記はクリスの2枚のアルバムを聴いた直後に興奮してメールした感想である。

「驚異的、ひたすら驚異的。あなたの作品を聴いて、それ以外に言葉が見つからない。期待を遥かに超えていた。
朝の通勤電車の中でiPodで『Unplanned Obsolescence』を聴いたとき、「音楽」というより「音」そのものに突き動かされ魂の奥深くから喚起される情熱に、身体の震えを禁じ得なかった。
『Maximalism』は、INCUSレーベルの第一弾、デレク・ベイリー/エヴァン・パーカー/ハン・ベニンクのアルバム『トポグラフィー・オブ・ザ・ラングス』を思い起こした。これは私が即興音楽で最も好きなアルバムだ。
あなたの音楽を表現するのに他の音楽家の名前を出すのは憚られるが、敢て記せば、あなたのサックス演奏に、エヴァン・パーカー、(90年代の)ジョン・ゾーン、70年代日本の伝説的サックス奏者の阿部薫を想起した。」

Amazing...just amazing. That's the only word I can say after listening to your recordings. They are far beyond my expectation.
When I first listened to "Unplanned Obsolescence" on my iPod in the morning train to the office, I couldn't help shake my body with the passion by the "sound" or "tone", not to say "music", raised from deep in my soul.
"Maximalism" reminds me of the masterwork "Topography of the Lungs" by Derek Bailey/Evan Parker/Han Bennink, the first release on INCUS Records. This is my most favorite album in improvised music.
I'm not sure if it's good manner or not to mentioning the names of other musicians describing your music, but your sax performance reminds me of Evan Parker, John Zorn in 90's and Kaoru Abe, who is a legendary sax player in Japan in 70's.


それに応えてクリスから「エヴァン・パーカーやジョン・ゾーン、阿部薫と比較されるのは光栄だ。この3人は私のヒーローだから。しかし一方で作曲家のヒーローも数多い。サックスの可能性を超える為に、作曲と即興の両方にインスピレーションを得ている」という返事が届いた。

★詳細なディスクレビューは音楽情報サイト「JAZZTOKYO」の10月末更新202号に掲載予定。
JAZZTOKYO



「現在のニューヨークの音楽シーンはエキサイティングだが、同時にとても厳しい。住宅費(家賃)がとても高いのに、ミュージシャンは大抵貧乏。特別な才能のあるミュージシャンも家賃の為に他の職に就いている。住宅費の安い郊外へ移住するものも多い。」(クリス・ピッツイオコスのメールより)

クリス自身もダウンタウンにあるDowntown Music Gallery(DMG)というレコードショップで働いている。「地下音楽、前衛ジャズ、アートロック/ポップ、現代音楽、そしてカテゴライズ出来ない音楽すべて」の専門ショップだという。生の音楽の現場を体現しながら、カッティングエッジな音楽を販売する。楽ではないだろうが、理想的な生活であろう。
DMG通販サイト

日本では現在のニューヨークのハードコア・ジャズについてはまったくといっていい程紹介されていない。筆者が偶然YouTubeで発見したことはまさに幸運というしかないが、落ちこぼれの非ジャズ者がこの容赦ない音楽家達とリンクしたのは宿命かもしれない。今のニューヨーク(New York is Now)を最も良く表しているアルバムをクリス自身のセレクションで送ってくれるようDMGに注文した。それが届いたら、NYハードコア・ジャズの新たな胎動が更に解明されるに違いない。

NEW YORK/JAZZ(紐育/ジャズ)
NO NEW YORK/NO JAZZ(否紐育/否ジャズ)
ANTI NEW TORK/ANTI JAZZ(非紐育/非ジャズ)

久々にWKTK気分で眠れない程興奮中。未知の音楽との予期せぬ出会いは、MUSIC LOVERにとって最大の歓びである。

I'm too excited to sleep with expectation. Chance meeting with unknown music is the MAXIMUM JOY for a MUSIC LOVER.
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