灰野・オルーク・アンバーチ
出演:灰野敬二 + ジム・オルーク + オーレン・アンバーチ
(写真の撮影・掲載については主催者の許可を得ています。以下同)
極端音楽界随一のパワートリオ「灰野・オルーク・アンバーチ」は年一回のハズだったが、2014年は掟破りの二回目公演。前年のライヴアルバムを販売するのが恒例のレコ発ライヴとも言えるが、今年3月には製造が間に合わなかった。そのリベンジ公演という意味合いがないとも言えないが、結局、予告された「エレクトリックセット」のリリースが間に合わなかった。SDLXディレクターのマイク・クベックの話では、オーレン・アンバーチがテストプレスに3回ダメ出ししたというから、相当音に拘ったアルバムになりそう。「アコースティックセット」はCDもリリースされたが、「エレクトリックセット」はアナログLPオンリーらしい。
10日前の「WAILS TO WHISPERS」以来のSDLXだが、今回も外国人客がとても多いことに気づく。前回はRedbull Music Academy英語サイトでの告知が徹底していたから頷けたが、今回はいったい何故??ギロッポンの外人ポピュレーションが増量しているのか、Keiji Hainoが欧米文化圏でトレンド入りしたのか、オーレン・アンバーチの磁力なのか、計り知れないが、2000年代半ばのSDLXの活況が戻ったようで目出度くはある。
これまではオープニングアクトにオーレンの彼女?のクリス・コールが出演することが多かったが、今回は帯同せず、トリオのみ完全ワンマン。オーディエンスに緊張感が伝わったのか、ロックコンサート前とは思えぬ静寂が支配する。予定時間を20分過ぎてトリオ登場。いきなりSGのハイトーンの悲鳴が耳に突き刺さる衝撃のオープニング。すさまじい気合が立ち込める静けさのカーテンを引き裂く。トレモロアーム付6弦ベースのジム・オルークが激しいアクションで、灰野以上の音数で弾きまくる。オーレン・アンバーチは二人のハードコア演奏に安易に追従せず、ストイックにパルスビートを延々と刻み続ける。ミニマルドローン効果で聴き手の意識が混濁したところで一気にドラミングが爆発し、得も言えぬカタルシスへ導く。仰々しいほど感動的なダイナミズムは、どんなプログレバンドやシンフォニックオーケストラでも太刀打ちできないに違いない。筆者の経験では、唯一対抗しうるのは、2013年2月19日代官山UNITの最前列で体験したスワンズの2時間半に亘る聴覚破壊ライヴくらいである。
⇒スワンズ@代官山 UNIT 2013.2.19 (tue)
1時間のハードコア演奏に続き、休憩を挟んで第2部。一転して微弱音でスタート。灰野が操るテーブルの上の楽器からポロンポロンと乾いた金属音が流れる。鉄琴か大正琴かと思ったが、終演後見るとタイプライターの中身のような金属の骨組。ポーランド・ツアーの時に入手した50年代製トイピアノとのこと。灰野にそれをプレゼントしたのは、ちょうど今来日中のトイミュージックバンド“Male Instrumenty”のメンバーだという。オルークのEMSシンセとアンバーチのアンビエントなパーカッションが絡み、灰野が小型シンセでノイズ演奏に突入。オルークがベースのアームを握りフィードバックを操る中、強力な言葉が発せられる。ドラムの連打で爆音一斉掃射が始まり、再び手にしたSGが火を吹く緊縛の無間地獄(天国)が爆走。最初の静寂を忘れるほどのドラマティックな鬩ぎ合いが絶頂に達し恍惚に蕩けた瞬間、ビッグバンの後の白色矮星の如くトイピアノのクリアな打鍵音の響きに回帰。演者も聴者も無事に現世に舞い戻ることが出来た。
【ARCHIVE】灰野・オルーク・アンバーチの5年間
●2014年 灰野の英語の歌に外人客が感涙
⇒灰野+オルーク+アンバーチ/スティーヴン・オマリー他@六本木スーパーデラックス 2014.3.2(sun)
●2013年 アコースティックの後のエレクトリックセットでリビドー発散
Only Wanting To Melt Beautifully Away Is It A Lack Of Contentment That Stirs Aff
ただ美しく溶けてしまいたいのに まだまだ満ち足りていないから まだ見えてないはずの ほうが愛おしく 思えてしまう
⇒灰野敬二+ジム・オルーク+オーレン・アンバーチ@六本木スーパーデラックス 2013.3.17 (sun)
●2012年 トリオ史上初!シャルルマーニュ・パレスタイン&石橋英子がゲスト参加
Now While It's Still Warm Let Us Pour In All The Mystery
まだ 暖かい内に この今に 全ての謎を 注ぎ込んでしまおう
⇒灰野敬二 + ジム・オルーク + オーレン・アンバーチ@六本木Super Deluxe 2012.1.30 (mon)
●2011年 落語家も登場した新春興行
Imikuzushi
いみくずし
⇒灰野敬二/ジム・オルーク/オーレン・アンバーチ他@六本木SDLX 2011.1.6(thu)
●2010年 パワートリオ初見参に激震が走る。
In A Flash Everything Comes Together As One There Is No Need For A Subject
またたくまに すべてが ひとつに なる だから 主語は いらない
⇒灰野、オルーク、アンバーチ@六本木Super Deluxe 10.1.24(sun)
5年間
見つめてきたよ
パワートリオ
●2009年 観た方がいたらレポよろしくお願いします
Tima Formosa
(ギヤマンクラゲ)
録音:2009年1月現代美術センター・CCA北九州