縦笛~フルート~テナーサックス~バリトンサックス~アルトサックスの木管人生を送ってきたので金管にはちょっと疎い。黄金色のキンキラ金環蝕ボディの三つのバルブでどうやって12音×3オクターブを鳴らせるのか、52年経っても分からない。来年こそはと思い続けて早6ヶ月半、諦めムードも漂う今日この頃の凹み癖を吹き飛ばす為にも金冠楽器の庶民派トランペットに着目し、梅雨の気殺を乗り切りたいものだ。
●ドン・チェリー
本来ならサッチモから始めるのが礼儀だが、無作法には際限がない愛好家的にはオーネット・コールマンやアルバート・アイラーの金管パートナーのドン・チェリーでペットの快感を学んだ。「ロンリー・ウーマン」でのオーネットとの千鳥足デュエットもいいが、ココはやはりジョン・コルトレーンとの『アヴァンギャルド』に注目してみたい。オーネットのリズム隊=チャーリー・ヘイデン(b)、エド・ブラクウェル(ds)をそのまま流用して、王者トレーンに咬ませ犬の如く組まされたドンチェは、凹むこと無く魂プレイを鳴らしている。トレーンの完璧すぎる感性の限界に風穴を開けるべく不断の挑戦が果たして報われたかどうかは聴き手の愛情次第。筆者的にはFU●K TRANEスタンスがもっとあってもいいかも。
●レスター・ボウイ
弟のジョセフはトロンボーンという金管兄弟。アート・アンサンブル・オブ・シカゴでは白衣やスーツ姿で、ロスコー・ミッチェルやマラカイ・フェイヴァース、ドン・モイエの原住民ファッションに対抗した人呼んで金管王子。AEOC以上にリーダー作でのカッコマンぶりが鬼畜かも。ブルージーな土器色アンブッシャーからファンタジックな浮遊プレイまで、変幻自在なペット模様はグラム時代のデヴィッド・ボウイと紙一重。筆者的には井野信義と笑顔で交歓した『デュエット』のゆるキャラぶりに軍配を上げたい。収録曲のタイトル通り「二人三脚」の「獏の欠伸」である。
●沖至
間章と並ぶ漢字二文字フリージャズ者の代名詞。富樫雅彦・佐藤允彦とESSGで同胞ながら74年に渡仏し、現在もパリの空の下に住まいを定め活動する。その当時から浮遊感に溢れたペット吹きとして他を圧倒する。『しらさぎ』の渡り鳥が一斉に飛び立つような広大な音宇宙の創出は、世界に飛び出すジャズ戦士の魂が求めた桃源郷の調べ。その感性が至る先には沖のカモメが羽を休める岩礁が広がっている。何処までも続く空は41年前と同じように晴れ渡っている。空気染み渡る金管の音色は白鷺になって世界へ羽ばたく。
●近藤等則
沖と並ぶ自由ジャズペッター。世界を相手に闘ってきた即興戦士が自然を相手に孤独なペット人生を送ったことは、やはり闘士の心意気が成せるワザだろう。筆者的には法政大学学生会館で長い竹竿を床に叩きつけながらフロアを闊歩する姿が鮮明に思い浮かぶ。新体道で培った壮観な面持ちには、常に闘い常に交歓してきた男=漢の生き様が皺のように刻み込まれている。無伴奏ソロ作『Fuigo From A Different Dimension』(79)に於けるペットの可能性と不可能性を暴露するかのような挑戦は、今となっては忘れかけた過去かもしれないが、世界の中の日本に少しだけ引っ掻き傷を残した功績は後の世に語り継ぐべきだと信じている。
マンションは
ペット禁止だ
ご無体な
●Sun Ra All Stars and the Sun Ra Arkestra with Archie Shepp Berlin 10/291983
★Don Cherry & Lester Bowie参加!