A Challenge To Fate

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【私の地下ジャズ愛好癖】西海岸の不屈の即興チーム『ロヴァ・サクソフォン・カルテット』と『メタランゲージ・レコード』

2018年08月07日 00時53分02秒 | 素晴らしき変態音楽


JazzTokyo最新号にレント・ロムスが寄稿したアメリカ西海岸即興シーンのレポート『Notes from the West Coast Underground(ウェストコースト・アンダーグラウンド通信)』でロヴァ・サクソフォン・カルテットの名前を見たとき、頭に浮かんだのは「そう言えば西海岸にはロヴァが居たか、しかし未だやっていたとは驚きだ」という感慨だった。サフランシスコを拠点に活動するレント・ロムスと仲間たちのウェストコースト・アンダーグラウンド・シーンに接した時、最初に連想したのはサイケデリアやレジデンツやロサンゼルス・フリー・ミュージック・ソサエティといったロック界の地下住人ばかりで、ジャズ/インプロ界の重要レーベル「Metalanguage(メタランゲージ)」レコードのことをすっかり失念していたのである。
JazzTokyo ウェストコースト・アンダーグラウンド通信第一回
Disc Review『Rova Saxophone Quartet / In Transverse Time』

70年代末にパンクに衝撃を受け、ポストパンクやオルタネイティヴ・ミュージックに魅惑された高校時代、レジデンツに始まってポップ・グループやラウンジ・リザーズの流れから、フリージャズや前衛音楽に興味を惹かれた。オーネット、アイラー、サン・ラといったアメリカのフリージャズ・レジェンド、ベイリー、パーカー、ブロッツマンなどヨーロピアン・フリーミュージックの騎手、ケージ、ベリオ、ヴァレーズといった現音作曲家。評価の固まった歴戦の猛者が多かったが、彼らに混じって例えば吉祥寺や荻窪のライヴハウスで繰り広げられる十時劇場や即興道場に集まる無名の演奏家や、音楽雑誌の片隅で名前だけ触れられる海外の辺境ミュージシャンにも心躍ったものである。そんな新たな動きとして筆者の興味を掻き立てたのがサンフランシスコのメタランゲージ・レコードだった。パンク・ムーヴメントと同時期に頭角を現した若手即興演奏家の屈託のない笑顔と裏腹の過激な変態サウンドが印象的だった。

メタランゲージ・レコードは、1978年にカリフォルニア州バークレーでギタリストのヘンリー・カイザーとサックス奏者ラリー・オクスにより設立された自主レーベル。オクスが77年に結成したサックス四重奏団、ロヴァ・サクソフォン・カルテットのデビュー・アルバムを第一弾として、80年代前半までに20数枚のインプロ系作品をリリース。80年にはメタランゲージ即興音楽フェスティバルを開催した。

The Rova Saxophone Quartet With Henry Kaiser ‎– Daredevils
Metalanguage ‎– ML-105(1979)


1977年にジョン・ラスキン Jon Raskin(bs)、ラリー・オクス Larry Ochs(ts)、アンドリュー・ヴォイト Andrew Voigt(as)、ブルース・アックリー Bruce Ackley(ss)で結成され、4人の苗字の頭文字をとって「ROVA」と名付けられたサックス四重奏団の初期作品。ラリー・オクスと一緒にメタランゲージ・レコードを創設したギタリストのヘンリー・カイザーとの共演作。同時期にデビューしたニューヨークのワールド・サクソフォン・カルテットがブラック・ミュージックの復権を謳ったのに対し、西海岸の白人であるROVAは言わばルーツレスな立場からスタートした。故にジャズ/ロック/現代音楽/エスニックをコンフュージョンする音楽性に迷いはない。四つの管のケイオティックなアンサンブルを攪乱するカイザーのギターが壮快である。

V.A. - Metalanguage Festival Of Improvised Music 1980 - Volume 2: The Science Set
Metalanguage ‎– ML 117(1981)


1980年10月19と21日の二日間サンフランシスコで開催されたメタランゲージ即興音楽フェスティバルのライヴ・アルバム。『The Science Set』と題された本作は二日目10月21日のグレート・アメリカン・ミュージック・ホールでの録音。参加ミュージシャンはブルース・アックリーを除くROVAのメンバーとヘンリー・カイザーに加え、バークレー出身のグレッグ・グッドマン(p)、日本の近藤等則(tp)、そして欧州フリーミュージックの猛者デレク・ベイリー(g)とエヴァン・パーカー(sax)という即興界の強者揃い。ソロ、デュオ、トリオと組み合わせを変えた短めのセッションは、ベイリーらのCOMPANYに倣ったワークショップ的要素があるが、観念的な部分がなくカラッと乾いた空気がメタランゲージの特徴だろう。10月19日の1750 Arch Studiosで録音された『Volume 1: The Social Set』は若干メンバーが異なる(ベイリー抜き、アックリー入り)が、全員による集団即興演奏が『The Science Set』と趣が異なり興味深い。

ROVA Saxophone Quartet: Under the Street Where You Live


メタランゲージのもう一人の『顔』ヘンリー・カイザーは笑顔の殺人鬼殺ジャケットの『アロハ』で即興以外のニューウェイヴ/プログレファンも虜にした。カイザーについては別の機会に振り返りたい。

レコメンデッド
メタランゲージ
ラルフレコード

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