A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

ミッシェル・アンリッツィが描く「汎」と「孤」~福岡林嗣+M.アンリッツィ『Desert Moon』/ふじゆき+M.アンリッツィ+望月治孝『白い顔』

2018年08月03日 08時34分25秒 | 素晴らしき変態音楽


8月1日(水)DOMMUNE「Plateaux of NOISE23 / 現代ノイズ進化論23」にPataphysique Records、Musik Atlach特集コーナーでアーティストのSACHIKOの相手役として出演した。1時間という短い間だったが、Overhang Party~魔術の庭を中心に、94年から現在まで24年間続く稀有なインディ・レーベルの歴史と作品、そして信念について概要だけでも伝えられたことと思う。特に印象的だったのはNO PROGRESSというタイトル通り、進化を求めるのではなく「ただやり続けるだけ=アクチュアル/現在(代)性」の発露だった。フランスのダダ/シュルレアリスト、アルフレッド・ジャリの小説に由来する「パタフィジック」、最新作『プロとコントラ』のシチュアニスト的「転用」主義、SACHIKOの民話や神話に接近したサイケデリック精神、すべてが進化なきアクチュアリティに他ならない。



Pataphysique Records/福岡林嗣と関わりの深い海外アーティストのひとりがフランスのギタリスト、ミッシェル・アンリッツィである。1959年、フランス・メス生まれのアンリッツィは88年ノイズバンド「Dustbreeders」で活動、99年から日本の地下音楽に深く関わるようになり、三上寛、友川カズキ、杉本拓、秋山徹次、浦邊雅祥、福岡林嗣といった多くの音楽家たちのヨーロッパツアーを企画。自身の運営するレーベル「Bruit Secret」からは灰野敬二、向井千惠、中村としまる、Sachiko M、杉本拓の作品をリリースする。またライターとして日本の音楽に関するエッセイを音楽誌やライナーノーツに寄稿している。そんな日本通のフランス地下音楽家ミッシェル・アンリッツィの近作を紹介する。

●福岡林嗣+ミッシェル・アンリッツィ『Desert Moon』


『プロとコントラ(pro et contra)』と同時リリースのPataphysique Records最新作。2002年からコラボする福岡/アンリッツィ・デュオの5作目に当たるアルバム。福岡がエレクトリック・フィドルとヴォーカル、アンリッツィがラップ・スティール・ギターに加え様々なエフェクトを担当。シャンソンの「暗い日曜日」にはDana ValserとJunko(非常階段)がゲスト・ヴォーカルで参加。Sachikoデザインの荒廃した月面のアートワークに相応しいダークなメランコリアが横溢したサウンドは、日仏地下音楽の精鋭が共有する終末感の反映であろう。しかし聴き終わった後に残された希望の光は、暗い日曜日を生き抜かなくてはならない人類への慈愛に満ちている。

“Desert Moon” FUKUOKA Rinji & Michel HENRITZI 5th Album



●ふじゆき+ミッシェル・アンリッツィ+望月治孝『白い顔』


フランスのAn′archivesレーベルの「Free Wind Mood 自由な風のように」シリーズの最新作。大阪のアンビエントデュオSarryの女性ヴォーカリスト、ふじゆきと静岡のサックス奏者、望月治孝とのトリオ作品。日本側がそれぞれレコーディングした素材をアンリッツィがオーバーダブしエディットする形で制作されたようだ。ふじゆきの呪術的なヴォーカル、望月のセンチメンタルなサックス・プレイ、そのどちらも日本の心の奥底にある「怨」を暴き出す演奏だが、アンリッツィが西洋的な「愁」を加えることにより、DARK SIDE OF JAPON的な幽玄が生まれている。『Desert Moon』が「汎」だとしたら、『白い顔』は「孤」の音楽と言えるだろう。

shinjuku blues - michel henritzi


八月の
濡れた砂漠の
白い影

コメント
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