A Challenge To Fate

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【クラシックの嗜好錯誤】第二回:シェーンベルクはパレ・シャンブルクではないが、十二音音楽は十二弦ギターで弾ける。

2018年08月09日 01時43分37秒 | こんな音楽も聴くんです


クラシック音楽を時代順に聴いてくると必ず躓く言葉、それがが「十二音技法」である。無調音楽なら調性のない音楽と分かる。電子音楽も読んで字の如し。では十二音(英Twelve-Tone)とは?オクターヴが12の音から出来ていることはピアノの鍵盤を数えればわかる。ド・ミ・ファ・ソ・シ・ドの5音で構成される琉球音楽なら別だが、特に西洋音楽はすべて十二音ではないのか?子供の頃から半音階が好きだったこともあり、半音ずつ上がったり下がったりするグリッサンドは限りなく美しい音楽だと感じる。たぶん人生の中で最も十二音音楽に接近したのは、大学の卒業論文『終止音導出を手手掛かりとしたメロディ認知における調性感の研究』の実験であろう。オクターヴの十二の音をコンピューターの乱数でランダムな音列にしてMIDI音源で被験者に聴かせ、メロディらしく聴こえるかどうか、1〜5の点数を付けされる。ひとり50回×100人×3種類=15000通りの音列を点数ごとに分類しメロディを如何にして認知しているかの過程を分析するのである。経緯や背景については下記ブログに詳しいが、結果については大学の心理学研究室の卒業生終了論文データベースをあたっていただくしかあるまい。いずれにせよ、1986年を最後に十二音とはオサラバしたつもりであった。

Zwölftonwerbung - Twelve tone commercial

まずは 音で虚無に色をつけようか!!~.es「void」(ドットエス「ヴォイド」)

話は前後するが、高校時代にストラヴィンスキーやバルトークに触れて現代音楽に心ときめかした筆者は、大学へ入学するとフリーインプロヴィゼーションに夢中になって、晦渋な音楽理論で武装された現音から距離を置くようになった。その一方でフランク・ザッパやレコメン系チェンバーロックの影響でバルトークやメシアンやヴァレーズは『ロック』として聴いていた。大学2年生の頃、某歯科大のバンドマンと知り合いノイエ・ドイチェ・ヴェレ(ジャーマン・ニュウェイヴ)を教えてもらった。それまでドイツのロックと言えばニナ・ハーゲンとクラウス・ノミ、もしくはファウストやグルグルやCANしか知らなかったので、鋭角的なビートと素っ頓狂なエフェクト、そして躁鬱症のドイツ語ヴォイスに衝撃を受けた。特に驚いたのはPalais Schaumburg(パレ・シャンブルク)であった。

Palais Schaumburg - live - Wir bauen eine neue Stadt - 1981

百鬼夜行の回想録~洋楽ロック編第2回:パレ・シャンブルクと歯科大の思い出

パレシャンのサウンドに新鮮な面白さを感じる一方で、何処かで聴いたことがあるという確信めいたデジャヴを覚えた。ふと思い立って親父の古いレコード棚を開けてみて発見したのが、Arnold Schönberg(アルノルト・シェーンベルク)のレコードだった。曲名はフランス語の『Pierrot Lunaire(月に憑かれたピエロ)』。女性ソプラノ歌手が室内アンサンブルでキャバレー風のシャンソンをドイツ語で歌う、オシャレなのか野暮ったいのか分からない境界線上の音楽だった。同時期にベルトルト・ブレヒト&クルト・ワイルの『三文オペラ』のゼミを取っていたので、親近感を覚えると同時に、ワイルに比べて地に足が付いていない華奢な演奏スタイルは、クリムトやエゴン・シーレに通じる世紀末ウィーンの香りがした。

Complete performance: Schoenberg's Pierrot lunaire


また、イタリアに同名のPierrot Lunaireという凄まじい前衛プログレバンドが居ることを音楽雑誌『マーキー・ムーン』で読んだが、簡単に手に入らないアルバムだったので、シェーンベルクを聴いて勝手に想像していたことは懐かしい思い出である。後にCD化さた『Gudrun』を聴いたとき、シェーンブルクと近くはないが決して的外れでもないと感じ、名は体を表すという格言の正しさを知った。

Pierrot Lunaire - Gudrun (1977) Full Album


そんな訳でSchönbergを今でも「シェーンブルク」と読んでしまう癖が抜けないが、レコード店の現代音楽コーナーの隣にある「新ウィーン学派」コーナーに眠るシェーベルク、アルバン・ベルク、アントン・ヴェーベルンという三羽烏のレコードを発掘するのが密かな楽しみなのである。総じてオペラや歌曲は苦手だが、シェーンベルクの『ピエロ』や『グレの歌』をはじめ、ベルクのオペラ『ルル』『ヴォツェック』まで十二音/無調の歌ものは聴いていていも苦にならない。デヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』の音楽キャバレーが19世紀末にあったなら、流れていた歌はこんな感じに違いない。そんなことを考えながら十二弦ギターのチューニングを半音ずつずらせば、十二音音楽が簡単にできるじゃないかと思いつき、ひとり昂奮して眠れない台風十三号来襲の夜である。

Arnold Schoenberg - Transfigured Night for String Sextet, Op. 4


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