沖縄電子少女彩:生誕祭
夜の部:アヴァンギャルドステージ
18:00 open 18:30start
前売:3,500円 当日:4,000円(+1d)
出演:沖縄電子少女彩/ドラびでお/灰野敬二/ASTRO/美川俊治/galcid/マキノユキ
2016年6月に15歳で沖縄アイドルグループTincyのメンバーとしてデビュー。2017年3月からソロ活動を開始した沖縄電子少女彩。ノイズ演奏を始めたキッカケは、元オルタナノイズ系ミュージシャンだったプロデューサーが聴かせたSPKを面白いと言ったことだったという噂。アイドル活動と並行して、というより「融合して」エレクトロノイズ演奏や路上ノイズライヴを行い、現在はアヴァンギャルドアイドル&ノイズミュージシャンとして活躍中。8月7日に19歳の誕生日を迎えた彩の生誕イベントは、昼の部は「アイドルステージ」としてキスエクやめろん畑、リリカオなどが出演し、アイドルらしい華やかなイベントになった。夜の部は打って変わって「アヴァンギャルドステージ」として、日本の地下音楽の重鎮中心に、ドラびでお主催の「GIGANOISE」の番外編のようなコア中のコアなラインナップ。昼と夜/白と黒/陽と陰/光と闇/表と裏/生と死・・・真逆のイメージが列挙できるが、現実世界では二つの世界はメビウスの輪のように繋がっている。どちらがどちらに転じるかも分からない呉越同舟は、まさに筆者の頭の中ではないか。夜に生きる者たちが集う「アヴァンギャルドステージ」はまるで闇の表現者の百鬼夜行であった。
●マキノユキ
高校時代に学研『大人の科学』のシンセサイザーを買ったことがキッカケでモジュラーシンセにハマったという女子ノイジシャン。腰に響く重いビートのテクノイズで前衛生誕祭の幕開けをダークに飾った。
●ASTRO
80年代に日本のノイズバンドの草分けC.C.C.Cを結成すると共にASTRO名義でソロ活動を始めた長谷川洋に2013年女性ノイジシャンRohcoが加わりデュオとして活動中。スペーシーなエレクトロノイズとデュオならではの音の厚みが会場を暗黒のブラックホールに導いた。
●galcid
GIGANOISEではお馴染みのはっちゃけたテクノイズ女子Lenaによるワンマンユニット。高速テクノビートにモジュラーシンセのパラノイアノイズが炸裂するダンス天国で、バースデー・イベントに相応しい祝祭を産み出した。
●美川俊治
最近海外で過去の作品のリイシューが盛んなインキャパシタンツの美川俊治のソロパフォーマンス。一見玩具かガラクタに見えるオリジナル機材を駆使して産み出すサウンドは、単なるハーシュノイズとも雑多なミュージックコンクレートとも異なるノイズ美学の結晶体。音が1ヵ所に留まらず、常に動き回るので飽きることがない。ただし耳が殺られる。
●灰野敬二
エレクトロニクス中心の出演者の中で、アンプ4台を総動員してギターの爆音を響かせる灰野敬二はロック美学の体現者である。エフェクターを踏む度にヴォリュームが増し聴覚を圧迫する。「義務より礼儀正しく」と歌い、音を左右に分断するエフェクターとエアシンセの電子音がノイズの壁の中で飛び回る。再びギターを手にして「誕生日おめでとう」のMCのあとを爆音で締めくくった。
●ドラびでお
レーザー光線が描く幾何学模様が、銃声のようなエレクトロニクスと同期し聴覚と視覚を刺激する。機材のライトとレーザー光線の明かりに浮かぶ顔が鬼のように見えた。ドラびでおのレーザーショーはTDLやTDSやUSJの平和ボケした生半可な“アトラクション”を焼き尽くし、喜怒哀楽/創造と破壊/希望と絶望すべてを含む真の“エンターテインメント(スルー・ペイン)”を構築するのにピッタリだと思う。
●沖縄電子少女彩
ヴォーカル無しのエレクトロニクス一本勝負。レーザー光線の描く模様が、ドラびでおのときより優しくなった気がする。空気の重さを忘れさせるピンクノイズの無重力感は、19歳の彩ならではのフットワークの軽さと思考力の自由さの証である。俯くと機材の半分を覆い隠すブロンドの髪の美しさに魅了された。
●沖縄電子少女彩&ドラびでお+ASTRO+T.MIKAWA 『アルバム黒の天使セッション』
総勢5人全員エレクトロニクスのセッションは、誰がどの音か分からなくなり混乱することもなく電子音アンサンブルとして聴き手に心地よい時間をプレゼントした。個々のミュージシャンが誕生日を祝うスペシャルムードに包まれていたことが演奏に反映され、夢と愛に任せた信頼関係の中結ばれた友情の徴である。
沖縄電子少女彩&ドラびでお&ASTRO&T.Mikawaセッション20180811
Okinawa Electric Girl Saya & doravideo & Astro & T.Mikawa
最後に彩の実の母親から花束贈呈のサプライズ。アイドル女子に囲まれ華やかだった昼の部とは趣向が異なるが、彩の19歳の誕生日を祝う気持ちは同じ。爆音の連続で毛布をかけられたように熱を帯びた聴覚を、慈愛が優しく醒ましてくれた。
昼の部に
ビッグサプライズ
発表された
▼昼の部:アイドルステージのフィナーレ。
*初出時に不十分な表現があり関係各位にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。