プーチンのロシアが、ウクライナの一部を「併合」すると宣言した。ウクライナの住民の投票により、ロシア編入賛成が多かったからという理屈である。しかしそれを国際社会は認めないだろうし、ウクライナ自身も認めることはしないだろう。何といっても、ロシア軍の占領下にその地域はあるからだ。
プーチン政権は、巨大な旧ソ連領であった独立国がロシアに従わない場合、その領域に住むロシア系住民をたき付けて混乱を引き起こし、その混乱に乗じて介入するということを、何度もしてきた。ウクライナに対して行ったことは、他の地域でもやっていたことだ。
「ドネツク人民共和国」という国家は、2014年、親ロシア系武装組織が武装蜂起して「独立」を宣言したものだが、このほどプーチンがロシアに「併合」することで、消滅することになった。この国家の初代首相はボロダイ、彼はその地域の者ではなく、モスクワの「政治技術者」(政治工作のテクニックを教えるコンサルタント)であった。
またウクライナの政治家を、プーチンが決めつけるように「ネオナチ」と一緒くたにする言説があるが、それは間違いである。
安倍晋三を射殺した山上がツイッターをしていて、その内容がネトウヨ的であったと報じられていた。統一教会に関しては被害弁連などがあり相談を受け付けていたのに、山上はそういうところにたどり着けなかった。
それと同じように、ウクライナの民衆も、「右派セクター」とともに動くしかなかったという状況があった。「共産主義」は、人びとにとって権威主義そのものであり、腐敗の象徴であった。また人びとは、「ヨーロッパ」に対して憧憬を抱いていた(ヨーロッパ製品、ヨーロッパ的生活水準・・)。「ヨーロッパ」はウクライナの人びとにとってある種の「ユートピア」だったのだ。「右派セクター」はそうした人びとに対して、「改革者」として、「ユートピア」に近づく手段を提供する集団として表象されていた。
世界的に、日本でも、人びとの欲求や不満が、右派的潮流に飲み込まれている状況がある。ウクライナでも、である。
「国家」というものに翻弄されるヨーロッパの地域。
ウクライナの西部国境地帯にあるリヴィウ、ウクライナの人びとがロシアの軍事侵攻により国外脱出しようと全国から集まったところである。この地域は、14世紀以降ポーランドの支配下であった。18世紀にポーランド分割によりオーストリア領となる。第一次世界大戦後、オーストリー=ハンガリー帝国の崩壊により再びポーランド領となり、第二次大戦後はソ連ウクライナ領となり、1991年ソ連の崩壊で、独立したウクライナの一部となった。
国家が勝手にやって来て、ここは〇〇国だ、ここは××国だ・・・・となる。人びとは、平和で、昨日よりも良い生活を望みながら日々を生きる。
「共産主義」とか「ネオナチ」というイデオロギーは嫌悪すべきものであり、人びとの生活とは縁がなく、そういうイデオロギーは人びとのアタマの上を通り過ぎるだけであってほしい、と願う(そうしたイデオロギーによって人びとがどれほど傷ついたか・・・)。
権威主義の国家、プーチンのロシアは、ウクライナを「ネオナチ」だとして、人びとを殺傷し、生活の場を破壊する。そしてここをロシア領にするとして国境を一方的に変更する。
いかなる視点でウクライナを見るか、地べたに生きる人々の目線からでないと、ほんとうのところは見えない。