晩聲社はまだあるのだろうか。社長の和多田進さんは今はもう亡い。
この本の出版は、1994年。浅見定雄は、統一教会(浅見さんは「統一協会」と表記する。私も以前はそう表記していたが、最近はメディアの報じ方にあわせている。)とずっと闘い続けた人で、旧約聖書や古代イスラエル宗教史専攻の学者である。
統一協会がキリスト教を名乗り、アダムやイブを都合のよいように改竄・解釈していることから、その点を厳しく追及してきた方である。本書は、浅見が折に触れて書いてきた小文をまとめたものである。
この本が刊行された頃、私は統一協会関係の本をたくさん買い込み、そのなかには浅見の本も何冊かある。しかしその後統一協会に関する報道がなくなり、もう彼らの陰謀・策動は問題にならないほどになったと勝手に思い込み、関連本の多くは処分した。書庫の中には、まだ残っているものもあり、これがその一冊である。久しぶりに読み、統一教会がまったく変わっていないこと、浅見がこの本で指摘していたこともそのままのかたちで存続している。
「政治権力との癒着」の項目には、岸信介、福田赳夫、中曽根康弘、金丸信の名があげられ、「三桁にのぼる国会議員や膨大な数の地方議会議員たちとの癒着。そして革新自治体つぶし。スパイ防止法の策動。教科書「偏向」キャンペーン等々。」と記され、まさに現在の状態を記しているようで、まったく彼ら、ならびに政治家との癒着は変わっていないことがわかる。
「統一協会の「愛」と「性」について」では、協会の「愛」が「性愛」、つまりセックスと同義であり、またセックスは「子女を生み殖やす」のみのものとして扱われることなど『原理講論』を引用して端的にその問題点を指摘しているが、引用された『原理講論』は、あえて難解な表現にして、その内容のいかがわしさを隠しているように思える。
いずれにしても、統一協会とは「日本の若者たちを洗脳して、奴隷にして、ぼろぼろになるまで働かせる」宗教だということが書かれている。
統一協会を追い詰めていく好機だと思う。メディアもあくなき追及を展開すべきである。私たちも、その一翼である必要があるだろう。
わかりやすい小文が並ぶ。統一協会の本質を衝くこういう本をやはり読んでおくことが必要である。