「入植者植民地主義」ということばを何度かみるようになった。その背後には、イスラエルによるパレスチナ人に対するジェノサイド的行動がある。
ユダヤ人国家であるイスラエルは、なにゆえにそんなにも残酷になることが出来るのか、と思う。
さて『世界』4月号で、酒井啓子さんがこの「入植者植民地主義」についての本を紹介している。いくつかの本を紹介しながら、イギリスがニュージーランドで行ったマオリ族に対する暴虐行為(まさにジェノサイドであった!)などを指摘し、「アメリカが、スペインが、イギリスが、新大陸で先住民を追い出して自分たちの国をつくることにまったくの罪悪感をもたない、どころか「開拓精神」などという美談に変えてしまうのなら、イスラエルが同じことをやって、何が悪い?」と書く。
本当にそう思う。ついでに記しておけば、明治初期、日本人によるアイヌ民族に対する迫害は、アメリカのその「開拓精神」を真似たものだ。だから日本人の手も汚れている。
酒井さんは、デイン・ケネディの『脱植民地化ー帝国・暴力・国民国家の世界史』から「ヨーロッパ人が海外で従属下に置いた諸人民に対し長年にわたってとり続けてきた容赦ない根本方針や政策、それとまったく同じものをヒトラーはヨーロッパというアリーナに適用した」を引き、「ユダヤ人がナチに迫害されたのは、まさに、欧米が行ってきた植民地支配が内化されたものだ」という指摘があることを記す。
なるほど。そういう考えの存在をはじめて知った。
歴史は繰り返している。人間は、歴史から学ばず、同じことを繰り返す。そこには「倫理」はない。野蛮な欲望があるばかりだ。
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やっと本を読めるようになった。仲よくしていた学者がすべて他界してしまい、知的な話をする相手がいなくなった。本を読むことでしか知的触発がなされなくなったのが悲しい。