『週刊金曜日』1月3日号が届いた。その雑誌と一緒に、一枚の紙が入っていた。『週刊金曜日』の価格改定のお知らせだった。背景には、印刷製本費の上昇がある。たしかに、紙代、インク代・・・など印刷にかかる経費が大きく上昇してきていたことは、この2013年から2023年まで11号の冊子を発行してきた経験から、よく理解できる。すべての物価が高騰している。価格改定もやむを得ないと思う。
その一枚の紙にもうひとつ、創刊時、定期購読者が5万部あったものが、今や1万部となっているということが書かれていた。人びとは、いま、新聞を読まず、本を読まず、雑誌を読まず・・・・という、紙媒体に接することがなくなっている。人類が文明社会に入ってから、紙は大きな、大きな役割を果たしてきたにもかかわらず・・・。
わたしが購読している『週刊金曜日』、『世界』、『地平』を読む人は、おそらく多くはないだろう。多くはない、というところに、現在の悲しい現実があるように思う。これらの雑誌には、市民として生きているなかで、知るべきこと、考えるべきこと、気付くべきこと・・・・・が書かれている。これらを栄養にして、わたしはみずからの精神を養ってきた。ほかの人びとにそれを強いるつもりはないけれども、読んで欲しいとは思う。
なぜか。今週号の『週刊金曜日』の特集は、谷川俊太郎である。彼は11月に亡くなった。新聞でも、彼のことが紹介されていた。彼は、多くの学校の校歌を作詞していたからでもある。いくつかを調べてみたが、よい詩であった。彼の詩には、希望がある。いのちの讃歌がある。
わたしはあまり詩を読まないのだが、今週号では、フォークシンガーの小室等が、谷川を回想していた。それがいいんだ。小室と谷川が、「プロテストソング2」というアルバムを出していた。すぐにアップルミュージックでそれをダウンロードした。いいんだな、それが。じんわりと、しみじみと、こころに響いてくる。
そのなかで、いちばんよかったのが、これ。「風と夢」。
どこから吹いてくるのだろう
やさしい風 むごい風
どこへ吹いてゆくのだろう
風は怒り 風はほほえむ
傷ついた大地の上に
風が夢を運んでくる
苦しみの昨日から
歓びの明日へと
誰のこころに住むのだろう
楽しい夢 つらい夢
どんな未来見るのだろう
夢は実り 夢ははじける
よみがえる大地の上に
夢が風を巻き起こす
こころからこころへと
ひとりからひとりへと
とりわけ紙に印刷されたものからは、気付かせられるものがある。谷川俊太郎というひとりの詩に出会わせてくれた。そして新たな発見へとつながっていく。
このブログのテーマも、谷川の詩の一節である。『週刊金曜日』のこの特集が、谷川俊太郎という詩人を知るということへと誘ってくれた。『週刊金曜日』はよい雑誌である。
ついでに、谷川の「生きる」もすばらしい詩だ。
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ