浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

「時流」に抗して

2012-12-31 17:07:06 | 日記
  ※ 某紙へ載せた文


「時流」が押し寄せる!

「時流」、『広辞苑』では、その意味を「その時代の風潮・傾向」とする。しかし私は、「その時代」という長い期間ではなく、もっと短期的なもの、つまり「ある一定の時期を支配する政治的・社会的な思潮」として使用している。

 その「時流」の多くは支配層がつくりだすものであって、それがマスメディアを通して、圧倒的な力で流れてくる。マスメディアが、ジャーナリズムの精神を失い、権力機構の一翼を担う機関として存在している今、人びとの意識は、「時流」によって大きく影響を受ける。最近の事例としては、陸山会事件がある。

 民主党政権が成立した頃、小沢一郎という政治家が激しく攻撃された。小沢に関わる陸山会事件は、検察による違法な捜査であり、検察審査会での議決もきわめて不透明なものであり、無罪判決は当然であった。しかし、マスメディアは総力を挙げて、小沢を犯罪者扱いした。私は小沢という政治家は好きではないが、しかしこの事件については当初からその不当性を認識していた(郷原信郎『検察崩壊』、毎日新聞社、2012年を参照されたい)。ここでつけ加えておけば、民主党政権への国民の「失望」も、この事件により増幅されたはずである。

今回の総選挙と小選挙区制

 今回の総選挙は、自民党の圧勝に終わった。しかし、すでに各所で論じられているように、自民党への投票は決して多くはなかった。投票率は59.3%、比例での自民党の得票数は1635万票で、1996年からの小選挙区比例代表並立制の総選挙での第一党得票数、得票率で今回の自民党は最低を記録している。また自民党の小選挙区での得票率が43.01%。これは投票した人の中での比率、全有権者に占める比率は24.67%でしかない。「選挙区でも比例代表でも自民党候補や党名を書いた有権者は「少数派」だ」(『中日新聞』12月18日付)。この世論と議席数の乖離は、小選挙区制がつくりだしたものだ。

 小選挙区制が民意を反映しないということは最初からわかっていた。だが、1994年の細川内閣時の「政治改革」推進の「時流」は、この反民主的制度を成立させてしまったのである。日本社会党も、この「時流」に乗って賛成票を投じた。

 今回、極悪の選挙制度により最悪の結果が生じたことについて、私たちは責任を感じなければならないだろう。権力やマスメディアが流す「時流」に抗する、私たちの側の「情報」(言説)を、国民に伝えきれなかったからだ。

「時流」に抗する言説を伝えること

「時流」に抗することは、実はとても難しいことだ。
まず「時流」は、国民の耳目になじむような、まことしやかな言説を流してくる。さらにその言説を、マスメディアも頻繁に流してくる。たとえば関西財界の支持を得た「維新」を、テレビなどは積極的に取り上げていた。あたかも、民主党、自民党のかわりになり得る政治勢力であるかのように。そうなると、国民も「維新」に期待するようになる。

 私たちは、「時流」の言説を「腑分け」しなければならない。そこに含まれている言説の「ウソ」を見抜かなければならない。そのためには、私たちは「腑分けする」力、「ウソ」を見抜く力を養わなければならない。

 そして、選挙の時だけではなく、「時流」に抗する私たちの言説を、人びとに伝える努力をしなければならない。今、「時流」以外の言説は、インターネットで獲得することはできるが、インターネット環境にない人びとは、そうした言説を入手できていない。圧倒的な「時流」に無防備のままさらされているのだ。これでは、勝てない。
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