窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

日本実務能力開発協会交流会(第15回)に参加しました

2018年11月11日 | 日本実務能力開発協会


  11月10日、札幌にて日本実務能力開発協会の交流会に参加させていただきました。昨年は人気アイドルグループのコンサートと日程が重なったため、ホテル・飛行機が全く予約できず、やむなく不参加となりましたが、今年は開催が1週間繰り上がったために参加することができました。実は前日まで沖縄だったのですが…。

  交流会への参加はこれで3回目ですが、いつも会場の雰囲気に独特なものを感じます。仮に初めてお会いした方であっても、開始前から不思議と会話が盛り上がっているのです。普段は自分から話しかけるのが苦手な僕も、自然と話しかけているのですから本当に不思議です。恐らく、講師の上前先生はじめ札幌の皆さんがそういう雰囲気を作り上げているからなのでしょう。これは参考になります。



  交流会は2時間の勉強会と懇親会の二部構成で行われます。今回のテーマは、「折れない『心』の作り方」。このスキルを身につければ心が折れなくなる、あるいは心が折れてはいけないということではなく、スキルを身に着けることによって誰もが遭遇するであろう「心が折れそうな時」により上手く向き合えるようになるのではないかということです。

  今回学んだそのスキルとは、以下の5つです。

1.自己効力感
2.思い込みの脱却
3.感情コントロール
4.チャレンジ精神
5.楽観視


  初めに、「折れない心チェックリスト」で、上記5つの内、どこに得手不得手があるか、自己評価による診断を行いました。

  一つ目は「自己効力感」。似た言葉に「自己肯定感」というのがありますが、後者が自分の価値や存在を肯定的に認めることであるのに対し、前者は「自分には〇〇をする能力がある」と思える能力を言います。カナダの心理学者アルバート・バンデューラが提唱しました。自己効力感は人が行動を起こす源になります。自己効力感の高め方には、次のようなものがあります。

  達成体験:当たり前かもしれませんが、自分が達成できた体験が最も自己効力感を定着させます。一度できたことなら次もできると思えるわけです。達成体験を増やすには、努力すれば手が届きそうだと思える小さな成功体験を積み重ねるのが良いそうです。

  代理経験:他者が達成した様子を観察することで「自分にもできそうだ」と感じることです。スポーツ競技などである記録が破られると、さらにそれを上回る記録が次々と生まれるのは、この代理経験によって自己効力感が高まったためでしょう。

  言語的説得:自分に能力があることを繰り返し他者から説得されたり、自ら自己暗示をかけたりすることです。前回の交流会でペップトーク(試合前のロッカールームでコーチが選手に向かって話しかける激励のスピーチのこと)の専門家とお会いしましたが、それなどは前者にあたるでしょうし、後者もテレビを観ているとよくスポーツ選手が呟いているのを見掛けます。

  生理的情緒的高揚:酒、音楽、本、セミナーなどその他の要因について気分が一時的に高揚すること。先ほどのペップトークは、こちらの要素も大きいと思われます。昔、年の離れた弟がカンフー映画を見終わるたびに僕に飛び掛かってきましたが、あれは生理的情緒的高揚だったのですね。

  逆説的かもしれませんが、心と体はひとつなので、自己効力感を高めるためにはまず行動を起こしてみることだと言えるかもしれません。

  二つ目は「思い込みの脱却」。まだ決まってもいないのに、「どうせダメだ」と思い込む思考から抜け出す能力を言います。第12回交流会のテーマがこの非合理的な思い込み(イラショナル・ビリーフ)からの脱却でしたので、詳しくはそちらのレポートをご覧ください。

  三つめは「感情のコントロール」。これが不得手と認識されている方が、結構いらっしゃいました。「心が折れそうな時」に対処するには、心が折れそうな時であるということをまず認識できなければなりませんが、前述のように心と体はひとつなので、こちらは体から心にアプローチするスキルになります。具体的な方法として、次のようなものが挙げられます。
 
  呼吸を整える:これについては、最近弟に勧められて読んだ本が経験的に感じていたことと合致して興味深かったのでご紹介します。

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  うつむかない:「目は口程に物を言う」と言います。目は解剖学的には脳の一部なのだそうで、視線を上に向けた状態で悩み続けることは難しいのだそうです。上を向いて歩くのは、涙がこぼれないからばかりではないのですね。これは普段から心掛けられそうです。

  動作を変える:個人的に、姿勢には比較的注意を払っているつもりです。2004年アテネ・パラリンピックの柔道の試合の研究により、姿勢は先天的な動作であることが確かめられています。また、姿勢と感情が結びついていることを示す論文も多数あります。

  運動をする:運動がストレス解消に良いのはよく知られていますし、経験的にもそう思います(悩んでいる時は、身体を動かす気力が湧かないというジレンマはありますが)。10年近く前に読んだ本によれば、とりわけウォーキングがストレス対策に良いようです。

  休憩をとる:悩んでいる時はそもそも休憩をとるのが難しいということもあるかもしれませんが、経験的に人生のターニングポイントとなるような思考の転換は、環境が大きく変わる時や海外のホテルで一人でいる時など、非日常的な環境の中で起こったような気がします。そういう意味では、たとえそんな気持ちになれなくても環境を変えてみるよう心掛けると良いのかもしれません。

  四つ目は「チャレンジ精神」。成功・失敗に関わらず新しいことに取り組む能力を言います。問題解決がうまくいかないのは、

①今起きている問題は何か(What)
②その問題のどこに原因があるのか(Where)
③その原因はなぜ起きているのか(Why)
④どうしたら解決するか(How)

  これら4つの要素に対する認識が曖昧であったり、どれかが抜け落ちていたりすることが多いためだそうですが、実際にロールプレイをしてみると、WhereとWhyの境界が結構不明確であることに気づきました。ハーバード大学のロバート・キーガンは、問題解決のための変革を起こすには、次の三条件が必要であると述べています。

①変革を起こすためのやる気の源
②思考と感情の両方に働きかける
③思考と行動を同時に変える

  要するに、本人が心から変わりたいと思わなければ変われない、感情も無視してはならない、そして前述のように思考だけでなく行動からもアプローチすることが必要だということです。さらにキーガンは問題行動を起こしている原因(上記のWhyの部分)には、そうした方が実は本人にとって望ましいからだという「裏の目標」があると言います。これを彼は「強力な固定観念」と呼んでおり、単に問題行動と反する行動をとっても上手くいかないことが多いのは、これに気づいていないからだと述べています。例えば、禁煙に踏み切った人の実に85%が失敗するそうですが、これはたとえ頭では喫煙による健康被害が分かっており、心から止めたいと願っていたとしても、例えば喫煙によって本人が「精神の安定を得ている」という裏の目標に気づいていないためなのだそうです。これを「変革を阻む免疫機能」と呼んでいます。

なぜ人と組織は変われないのか ― ハーバード流 自己変革の理論と実践
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   最後は「楽観視」。考えてもどうにもならないことに対して、「何とかなる」と考えられる能力を言います。楽観的に考える方法として、①未来志向、②競争しない、③今に集中、④いい加減になる、などが挙げられていましたが、自分の力で努力すれば何とかなる問題と、自分の力ではどうしようもないことを峻別することは大事だと思います。また、先日参加した「第8回筆跡アドバイザーマスターズ研究会」で発表者の方が述べておられたように、不安は過去へのとらわれや未来への恐怖から起こるので、「今」に集中することも大事だと思います。個人的により重要だと思うのは、「なんとかなる」と思えていない自分の感情を否定したり目を背けたりすることなく、受け入れることです。ネガティブな思考や感情を否定したり、克服しようとする無理なポジティブ思考は、かえってネガティブ思考・感情を強化する結果を生みかねません。ポジティブ心理学者のトッド・カシュダンは、「マインドフルネス」に対して、ポジティブ感情とネガティブ感情のバランスをとる「ホールネス」という考えを提唱しています。

ネガティブな感情が成功を呼ぶ
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  さて、第二部は懇親会。懇親会からの方も加わり、色々な話に花が咲きました。いつも明るく楽しく、上品に飲む会です。今回僕と同じ横浜から初めて参加された方も、「参加して本当に良かった」とおっしゃっていました。様々なバックグラウンドをお持ちの皆さんと、胸襟を開いて意見交換や相談のできる、僕にとっても貴重な機会となっています。札幌の皆さん、今回もありがとうございました!

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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