11月8日、mass×mass関内フューチャーセンターにおいて、第89回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。
今回の講師は株式会社バンテックセントラルの宮川哲幸様。昨今話題の「トラック業界の現状」についてお話しいただきました。
初めに、トラック業界の規模について。国内物流におけるトラック輸送の割合は、トンベースで91%、1トンの物を何キロ運んだかを示すトンキロベースでは59%を占めるそうです。事業者数6万2千件、車両数138万両、売上15兆円、従業員数185万人(内、運転手は83万人)です。車両数が138万両であるのに対し、運転手が83万人というのは、特殊車両やシャーシーなど約44万両が車両に含まれているためだそうです。
次に労働環境について。トラック運転手の長時間労働というのは、報道によるイメージとしてありましたが、僕が抱いていた認識と異なっていたのは、賃金水準も決して高くない(むしろ拘束時間に対して低い)という点です。「トラック運転手はキツいけれども儲かる」というのも今は昔のようです。実際に数字で見てみますと、以下のようになっています。
平均年収:大型(422万円)、中型(375万円)、全産業平均(480万円)
年間労働時間:大型(2,592時間)、中型(2,580時間)、全産業平均(2,124時間)
こうした現状に対し、国からも改善基準告知がなされ、業界としても2019年に向けて改善努力を行っているようです。しかし、現実としてはトラックの積載効率は昭和63年時には57.9%だったものが、平成27年には40.5%に低下しており、パイの奪い合いとなっています(注:積載効率については平成21年に算出方法が見直され、軽車両が除外されています)。
背景としてはパレット輸送の増加、そして近年では報道でも目立ってきているように、EC市場の急成長による宅配便の増加があります。宅配便の取り扱い件数はこの5年で12%増加したと言われ、今後も増えるものと見込まれています。また、不在再配達も全体の2割を占めているそうです。こうした変化が、過酷な労働環境、配送料引き下げ、運賃低下に拍車をかけています。
長時間労働、低い賃金水準により、業界は深刻な人手に悩まされています。ボストンコンサルティングの試算によると、2027年には運転手は25%の需要不足になると見込まれているそうで、96万人の需要に対し(現状でも83万人)、24万人不足するであろうということです。そうしたことから、業界としても女性運転手の雇用に力を入れていますが、まだ18.4%に過ぎません。加えて運転手の年齢構成を見ると、40代~50%が実に46.4%を占め、40歳未満は28%という高年齢化の問題も起きています。
運転手の高年齢化の背景には、相次ぐ運転免許制度の改訂があります。2007年6月1日以前の免許であれば、普通免許で4トン車まで運転できたのが、2007年の改訂で4トン未満となり、さらに2017年3月12日の改訂で2トン未満となりました。ただでさえ弱年齢層の車離れが言われている上、所得水準の低い層がお金をかけて準中型や中型・大型の免許を取得するインセンティブがあるとも思えません。
こうした問題は、トラック業界に限らず企業数で99.7%、従業員数で75.8%を占める中小企業(小規模企業含む:2014年)の多くが直面していることのように思えます。
長時間労働、人材不足という構造的課題に対し、業界としてはダブル運転トラック(連結車両)、トラック隊列走行(先頭車両を無人の後続車両がセンサーで追尾する)、異業種間で共同運送を行う中継輸送などの試みがなされています。こうした技術の発達は物流の効率化、省力化、交通事故減少などに貢献しますが、一方でモバイル機器やデジタルタコグラフが運転手にもたらすストレスも課題になっているようです。
さて次回は節目の第90回YMS。YMSとして8回目の忘年会になりますが、前々回第87回YMSの流れを受け、「横浜市民酒場」の元祖「忠勇」さんで開催の予定です。
過去のセミナーレポートはこちら。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした