11月3日、日本交渉協会が主催する、「微表情・しぐさから相手の心理を見抜く-情報収集テクニック研修」に参加してきました。講師は同協会の特別顧問でもある、表情分析の専門家、清水建二先生。協会としては昨年、第11回ネゴシエーション研究フォーラムで初めてお話しいただきましたが、当ブログでは過去に何度か先生のセミナーを取り上げています。
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同協会が追求するWin-Win交渉を導くにあたり、微表情と動作観察、戦略的質問を駆使してより深い他者理解の可能性に触れるというのが今回の趣旨です。10:00から17:00までという表情分析の講座としては、僕も今まで経験のない時間の集中講座でした。
対面する相手から直接得る、相手に関する情報は言語による「言語情報」と表情・声・しぐさなどの「非言語情報」に大別されます。今回扱うのは、後者の「非言語情報」です。この非言語情報をさらに「表情」、「声」、「身体」に分類した時、最も細かい情報が得られ、かつ最も研究が進んでいるのは表情であり、表情>声>身体の順であると言われています。ところが、操作のしやすさということになると、逆に表情<声<身体の順となります。つまり、最も多くの感情漏出があるけれども誤魔化すのも容易であるのが表情であり、操作しにくい代わりに大雑把な情報しか分からないのが身体(しぐさ)ということになります。
第一部として初めに、数ある表情の中でも「熟考中」の眉の動きに着目し、これを体験するロールプレイを行いました。具体的には、話し手の台詞の中にわざと不明瞭な言葉を挿入し、その時に表れる聴き手の眉毛の動きを観察するというものです。そして観察した話し手は、聴き手が説明を理解できていないのだと察知し、かみ砕いた説明を行わなければなりません。
次に、表情分析の基礎である「7つの普遍表情」についてその微表情トレーニングを体験的に行いました。微表情というのは、0.2秒以下という短い時間で起こる、抑制された感情が無意識のうちに表れた微細な顔の動きをいいます。そして、これら微表情が実際の会話の中でどのように表れ、そこにどのような感情機能があるのかを理解し、適切な対応を行うケーススタディを行いました。
三番目は身体動作について。音声のない会話の動画を見て、話者のしぐさからどのような話題について話しているのかを推測するエクササイズを行いました。
午後に入り第二部は、第一部で学んだ表情としぐさの観察法に質問法を加え、中古車販売交渉のロールプレイを行いました。やってみて感じたことは、非言語情報については確かに表情よりもマニピュレータのようなしぐさが出やすいこと、そして交渉学の視点で言えば同じ内容でも各チームの合意点にはかなりのバラツキがあり、かつ初期提示を行った側の価格にアンカリングされやすいということです。
最後は、一般に高い関心事である嘘検知について。実は嘘検知は我々が思うほど容易なものではなく、訓練を受けた人であってもその検知率は偶然の域をでないと言われています。その精度を少しでも高めるため、これまで学習してきた様々な観察法と質問法を駆使するのですが、そのエクササイズとして、ある人が行う画像の説明(こちらからは画像は見えない)について、それが嘘か本当かを当てるということを行いました。ここから分かったことは、嘘を見抜くということはやはりかなり難しいということ、効果的な情報を引き出すための質問法も相当訓練を積む必要があること、そして冒頭述べたように表情は操作しやすいので、その真偽を判断するには言語および非言語情報を総合的かつ瞬時に判断する必要があるということです。
今回の研修では、非常に幅広い領域のエッセンスに触れましたが、微表情、しぐさ、そして質問法についてより詳しくお知りになりたい方は、清水先生のご著書が参考になります。
微表情を見抜く技術 | |
クリエーター情報なし | |
飛鳥新社 |
「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く | |
クリエーター情報なし | |
フォレスト出版 |
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした