都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「シェル美術賞展 2008」 代官山ヒルサイドフォーラム
代官山ヒルサイドフォーラム(渋谷区猿楽町18-8 ヒルサイドテラスF棟1階)
「シェル美術賞展 2008」
11/12-24

心なしか去年よりも波長の合う作品が多かったような気がします。40歳以下たちのアーティストが、平面作品というカテゴリーの中にて思い思いな表現を繰り広げました。シェル美術賞展へ行ってきました。
早速、以下、私が印象に残った作家を順に挙げていきます。
西尾真代「室内風景天井」
和室の天井を見上げた光景を描いたのだろうか。照明のリングと天井の木目が緩やかなタッチで描かれている。日常に潜みながらも、見逃してしまうような光景をあえて切リとる様に好感が持てた。
前川瑞江「君のために捧げる歌」
ビルの屋上のような場所で兵士が片隅から飛び降りようとしている。その左にはライフルを兵士へ向けた主婦風の女性と子ども。ミニチュアの飛行機は兵士が乗ってきたものなのだろうか。シンプルな構図とモチーフから物語の多様なイメージが広がる。
江川純太「あの優雅な投げやり」
黒い空の下に広がる深緑色のコートでテニスをしている様子が描かれている。太いストローク、もしくは暗がりの色彩感が不気味な感触を生み出した。
サガキケイタ「ウゴメクヨル」
昨年の展示でも印象に残ったサガキケイタの一枚。ペン画による細密なおどろおどろしい表現と、全体として出来上がる風景のギャップが強烈。現代社会とは往々にしてこのような魑魅魍魎の世界なのかもしれない。なおサガキケイタは現在、馬喰町のCASHIで個展開催中。
新垣真奈「帰り道の通過点」
都会の夜を横切る電車の車窓を描く。窓から差し込む明かりと乗客が平面的に示されている。その場限りで行き交う人々の一瞬の邂逅。乗客たちの優しい笑顔に癒された。
井上佳香「みどりと白」
岩絵具による雪原の質感が秀逸。所々、地表が露出にしているように見えるのは、地の素材を巧みに利用しているからなのか。対比的な草色もまた良かった。大地の広がりを体で感じる。
小川暁雄「一山図」(本江邦夫審査員奨励賞)
紙本墨画にアクリルを用いた現代日本画。奇妙にせり出す南画風の山に動きを感じる松が二本。その下には小さな家々や人々が見える。半ば破綻した構図が逆に新鮮に感じられる興味深さ。(地震の動きを表したものだそう。)

笠井麻衣子「トレーニング1」(準グランプリ)
流れるようで崩れ落ちそうなストロークが特異。髪を大きく靡かせて立つ女性は妖気すら漂うかのような存在感。殆ど乱雑なタッチで配された白や黄色の色遣いが、画面の構成感を崩壊する限界の場所で危うくとめている。そのスリリングさがたまらない。
高島麻世「水鏡」
深い緑色をたたえた澱む水の中に沈み込んだ二人。手と足をのばして互いを静かに求め合う。思わずこちらも吸い込まれそうになった。
代官山の展示は本日で終了です。なお来年1月(1/6-11)より、京都市美術館へと巡回します。(東京、京都、共通無料入場引換券)
「シェル美術賞展 2008」
11/12-24

心なしか去年よりも波長の合う作品が多かったような気がします。40歳以下たちのアーティストが、平面作品というカテゴリーの中にて思い思いな表現を繰り広げました。シェル美術賞展へ行ってきました。
早速、以下、私が印象に残った作家を順に挙げていきます。
西尾真代「室内風景天井」
和室の天井を見上げた光景を描いたのだろうか。照明のリングと天井の木目が緩やかなタッチで描かれている。日常に潜みながらも、見逃してしまうような光景をあえて切リとる様に好感が持てた。
前川瑞江「君のために捧げる歌」
ビルの屋上のような場所で兵士が片隅から飛び降りようとしている。その左にはライフルを兵士へ向けた主婦風の女性と子ども。ミニチュアの飛行機は兵士が乗ってきたものなのだろうか。シンプルな構図とモチーフから物語の多様なイメージが広がる。
江川純太「あの優雅な投げやり」
黒い空の下に広がる深緑色のコートでテニスをしている様子が描かれている。太いストローク、もしくは暗がりの色彩感が不気味な感触を生み出した。
サガキケイタ「ウゴメクヨル」
昨年の展示でも印象に残ったサガキケイタの一枚。ペン画による細密なおどろおどろしい表現と、全体として出来上がる風景のギャップが強烈。現代社会とは往々にしてこのような魑魅魍魎の世界なのかもしれない。なおサガキケイタは現在、馬喰町のCASHIで個展開催中。
新垣真奈「帰り道の通過点」
都会の夜を横切る電車の車窓を描く。窓から差し込む明かりと乗客が平面的に示されている。その場限りで行き交う人々の一瞬の邂逅。乗客たちの優しい笑顔に癒された。
井上佳香「みどりと白」
岩絵具による雪原の質感が秀逸。所々、地表が露出にしているように見えるのは、地の素材を巧みに利用しているからなのか。対比的な草色もまた良かった。大地の広がりを体で感じる。
小川暁雄「一山図」(本江邦夫審査員奨励賞)
紙本墨画にアクリルを用いた現代日本画。奇妙にせり出す南画風の山に動きを感じる松が二本。その下には小さな家々や人々が見える。半ば破綻した構図が逆に新鮮に感じられる興味深さ。(地震の動きを表したものだそう。)

笠井麻衣子「トレーニング1」(準グランプリ)
流れるようで崩れ落ちそうなストロークが特異。髪を大きく靡かせて立つ女性は妖気すら漂うかのような存在感。殆ど乱雑なタッチで配された白や黄色の色遣いが、画面の構成感を崩壊する限界の場所で危うくとめている。そのスリリングさがたまらない。
高島麻世「水鏡」
深い緑色をたたえた澱む水の中に沈み込んだ二人。手と足をのばして互いを静かに求め合う。思わずこちらも吸い込まれそうになった。
代官山の展示は本日で終了です。なお来年1月(1/6-11)より、京都市美術館へと巡回します。(東京、京都、共通無料入場引換券)
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