「ボストン美術館 浮世絵名品展」 江戸東京博物館

江戸東京博物館墨田区横網1-4-1
「ボストン美術館 浮世絵名品展」
10/7-11/30



話題の浮世絵展も間もなく会期末です。世界一とも名高いボストン美術館所蔵の浮世絵コレクションを概観します。江戸東京博物館で開催中の「ボストン美術館 浮世絵名品展」へ行ってきました。



黎明期より江戸末期まで、浮世絵の通史を一挙に辿ることの出来る豪華な展覧会です。これほどのビックネームの揃う浮世絵展を楽しめる機会など、そう滅多にあるものではありません。以下、春信がメインになってしまいましたが、印象に残った作品を写真ともに10点ほど挙げてみました。(写真については許可をいただいています。)





無款(奥村政信)「駿河町越後屋呉服店大浮絵」
江戸のにぎわいを肌で感じ取れる一枚です。店の奥行きや広がりを、浮絵と呼ばれる独特の遠近法にて巧みに表しています。舞台は越後屋、つまりは日本橋の三越ですが、その慌ただしく行き交う人々の熱気は、現在の光景をゆうに上回っているのではないでしょうか。思わず、絵の中の細部へと入ってしまうような臨場感でした。



鈴木春信 「雨中美人」
急な嵐に慌てたのか、脱げた下駄に気をとられながらも、何とか洗濯物を取り込もうとする女性が描かれています。雲や風の表現はとってつけたように不自然ですが、風になびいて裾を揺らす姿はどこか艶やかでした。





鈴木春信「坐鋪八景 ぬり桶の暮雪 」
見立てのぬり桶の他、壁の文様にも春信得意のきめ出しが用いられています。綿の質感までが伝わるかのような立体感を見せていました。



鈴木春信「飛雁を見る二美人」
欄干越しに望む梅に春を感じる一枚です。二人はその先に飛ぶ雁を見つめていますが、その寄り添う姿は何かエロティックな様相さえ感じさせています。

 



鈴木春信「女三の宮と猫」
女三の宮が猫を連れて歩くお馴染みのシーンです。猫の細やかな表現に目が奪われます。また春信は摺の状態如何で魅力が半減してしまいますが、この作品は畳の草色の発色なども見事でした。



鈴木春信「伊達虚無僧姿の男女」
二人の女性が歩いているのかと思いきや、黒い装束を着た人物は男性でした。春信の黒の使い方には粋を感じます。



司馬江漢「広尾親父茶屋」
まるでドイツロマン派の風景絵画です。今の広尾からは想像もつかないような、長閑な里山の景色が広がっていました。



喜多川歌麿「青楼仁和嘉女芸者之部 扇売 団扇売 麦つき」
歌麿の大首絵美人画の魅力を手軽に楽しめる一枚です。単なるグラビアではなく、三者の動きにどことない緊張感を与えているのが歌麿流なのでしょう。雲母の剥落も殆どありませんでした。



歌川国貞「星の霜当世風俗」
国貞美人画の傑作として名高い10点揃いの一つです。蚊帳や衣装の精緻な表現に国貞の高い画力を見ることが出来ました。蚊帳の下から覗く団扇が不気味です。



歌川国芳「布引ノ瀧悪源太打難波」
この迫力こそ国芳ならではと言えるのではないでしょうか。衣装がまるで紙細工のようです。造形的な描写が光ります。

浮世絵の面白さは上に並べた写真や図版では殆どわかりません。つまりは春信に代表されるように、その瑞々しい色味に接してからこそ初めて感激を得ると言えるものでしょう。ここ最近、ミネアポリスやベルギーロイヤルと見応えのある里帰り展が続いていますが、その系譜に連ねても何ら問題のない充実した浮世絵展でした。



今月末、30日までの開催です。改めてお見逃しなきようおすすめします。
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