「20世紀の写真」 千葉市美術館

千葉市美術館千葉市中央区中央3-10-8
「国立美術館所蔵による 20世紀の写真」
11/1-12/14



国立美術館(京都、東京、国際)、及び千葉市美術館所蔵の約180点の写真にて、20世紀の写真史を振り返ります。「20世紀の写真」へ行ってきました。



展示はオーソドックスに写真を時系列に追っていくものでしたが、まず登場したのはお馴染みのスティーグリッツなどに代表される『ストレート・フォトグラフィー』でした。これらは先行する絵画的なピクトリアリズムに対して文字通り、ストレートに写真を撮るあり方を進展させたグループですが、例えば上に挙げたストランドの「フォトグラフ」のように、実景をそのまま切り取りながらもどこか非現実的な光景を生み出しているという、まさに写真だからこそ得られる未知のイメージを見ることが出来ます。その文脈に沿えば、後に興る『アバンギャルド』の意味も同じなのかもしれません。マン・レイらも現実の事物を用いながら、やはり実際の目では望みようもないシュールなイメージを作り上げていました。とすると第三の『ドキュメンタリー写真』はどうなのでしょうか。「共和軍兵士の死」(下段)における迫真の光景は、痛ましい事実の記憶として見る者の心を強く打ってきます。写真における芸術性とは何かを自問させられるような作品と言えるかもしれません。



最後に登場する「現代アートと写真」は、不思議と肩の力を抜いて楽しめるコーナーです。モノクロの画面に光と影の美しい対比を見る森山大道、そしてシンメトリーな海景に時間を閉じ込めた杉本博史と、点数こそ足りませんが、見応えのある作家も何点か紹介されていました。また虚と実の間を揺さぶるトーマス・デマンドの「木漏れ日」、そして写真も作品全体の素材の一つでしかないジャン=マルク・ビュスタモントの「無題」など、写真を超えた表現にまで踏み込む作品もいくつか揃っています。写真の新たな可能性を見る思いがしました。



100年の流れを一挙に回顧するだけあってか、全体としての総花的な印象は拭えませんが、丁寧なキャプションなど、企画力に長けた千葉市美術館の努力は随所に伺うことは出来ます。個々の作家の魅力を追いかけるには不十分ですが、史的展開をさらっと楽しむには悪くなさそうです。



12月14日まで開催されています。
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