「アンドレ・ボーシャン」 ニューオータニ美術館

ニューオータニ美術館千代田区紀尾井町4-1
「アンドレ・ボーシャン - いのちの輝き - 」
1/31-4/12



世田谷、及びハーモ美術館(長野)、また館蔵品にてボーシャンの画業を概観します。ニューオータニ美術館で開催中の「アンドレ・ボーシャン - いのちの輝き - 」へ行ってきました。

作品は以下のテーマ別に紹介されています。ニューオータニらしく構成は至ってシンプルでした。*()内は出品数。

『風景』(5)、『花』(7)、『神話・聖書』(6)、『人物』(5)

初めの『風景』では、前景に果物や花、そして後景に山並みや街を描くお馴染みの構図の「フルーツのある風景」なども印象に残りましたが、それよりもセザンヌの連作でも有名なかの山を描いた「サント=ヴィクトワール山」には目を奪われるものがありました。後方には岩山がそそり立ち、裾野には積み木細工のように並ぶ家々がひしめき合って連なっています。画家の目を通せば同じ場所とは言えども景色は全く異なるものです。『不器用』だからこそ微笑ましくもあるボーシャンの魅力を見て取ることが出来ました。



いわゆる素朴派で神話主題の作品を描いたのは唯一、ボーシャンだけということをご存知でしょうか。ここでは横3メートル、縦3メートルにも及ぶ大作、「ドムレミのジャンヌ・ダルク」が圧巻でした。可愛らしい羊をはじめ、森の中で立ち並ぶ人々は、単なる農村の一コマを描いたようにも見えますが、少女ジャンヌは母の手の方向によってその運命を暗示させられています。まじまじと見入ってしまいました。



ボーシャンで一番有名なのはやはり花の絵です。彼は父が苗木栽培業を営んでいたこともあり、元来より草花に並々ならぬ関心を持っていましたが、それが花を単純な静物として捉えず、半ばポートレートのように仕立てて魂を吹き込んだことと何か関係があったのかもしれません。また構図から言えば不自然なほどに花びらの全てを開かせた上、満遍なく光を行き渡らせた点に、ボーシャンの生き物に対する温かい眼差しを感じました。

最後には人物肖像画が登場します。またボーシャンの絵を最初に購入した人物がコルビュジエとは知りませんでした。二人の感性の間には一体、どのような共通点があったのでしょうか。

点数(全23点)こそ望めませんが、私としては好きなボーシャンを一定数見られて満足しました。

次の日曜までの開催です。
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