「アーティスト・ファイル 2009」 国立新美術館

国立新美術館港区六本木7-22-2
「アーティスト・ファイル 2009 - 現代の作家たち」
3/4-5/6



同館の学芸スタッフが注目する作家、計9名の制作を個展形式で紹介します。(ちらしより引用。一部改変。)国立新美術館で開催中の「アーティスト・ファイル2009」へ行ってきました。

本年の出品作家は以下の通りです。

ペーター・ボーゲルス(1956~)
平川滋子(1953~)
石川直樹(1977~)
金田実生(1963~)
宮永愛子(1974~)
村井進吾(1952~)
大平實(1950~)
齋藤芽生(1973~)
津上みゆき(1973~)

では早速、会場の展示順に沿って、各作家の印象を手短かに書いていきます。

大平實
南国の家屋を思わせるような巨大な木製のオブジェ。「自然を思い起こさせ」(解説冊子より。)るかどうかは難しいところだが、その気配よりも、表面をハリネズミのように覆う木材自体の質感に目が向いた。壁から突き出す「サンタ・アナの風」はまるで水道の蛇口のよう。ただし真っ白で無機質な新美展示室にはあまりにも唐突な印象が否めなかった。

カメラの謂れは→(ともに拡大します。)

石川直樹
SCAIの個展や目黒のグループ展でも出ていた作品が集大成的に揃う。私としては写真よりも、アートナイト関連で屋外に展示されていたカメラ(上写真)の方が興味深い。長時間漂流して朽ち果てたカメラは、まるで化石のようだった。



金田実生
ぼんやりとした色彩に斑紋のようなモチーフがたゆたうペインティング。目を閉じた時に頭に浮かぶような夢心地の景色が広がっていた。



齋藤芽生
アクの強い画風は好き嫌いが分かれそう(私は苦手)だが、インパクトにかけては間違いなく本展覧会で一番ではないだろうか。不気味な花輪やくたびれた団地の景色が、精緻な描写でかつドギツイ色彩にてシュールに表されていた。ただ怖いもの見たさという点においても、もう少しコンパクトな展示に接したい。

津上みゆき
絵具の色面が水の上を自由に流れて混じり合うような絵画群。一見、抽象にも思えるその画面の向こうには、作家自身の見た風景が包まれているとのこと。しかしながらそれを共感するのは極めて困難だった。

村井進吾
直方体の黒御影石のオブジェが広々とした空間に点在する。これまた新美の展示室に入るとイマイチ良さが伝わらないように思えるが、切り込まれた石の中でたまる水は、あたかも添水を受ける石の器のようだった。それにしても借景が欲しい。



ペーター・ボーゲルス
スクリーンを格子状の曲線に区切り、時間と場所に異なった映像を並列的に映し出す。斎藤のみくじからのギャップが激しく、その作品世界へ入り込むことは出来なかった。

宮永愛子
古びたたんすや化粧箱を堆く積み上げ、その引き出しの中に鉄道模型から小物までを用いたナフタリンのオブジェを隠して見せる。空間を埋める力は流石。もう一点は音をテーマにした作品。新作との記載があったが、私には以前、浅草の個展で聞いたものの焼き直しにしか見えなかった。

屋外の光合成の木

平川滋子
新美屋外のテラスなどに設置した「光合成の木」をスクリーンに映し出す。それにしても何故に映像の展示なのか。外の木をメディアで捉えることの意義がまるで分からなかった。

アートナイト開催日に無料で入場したので細々とした文句は言いません。ただしカロンズネットの桝田氏のレビューに賛成であるということだけを付け加えておきます。

まずは図録を分冊で発売することからはじめなくてはならないのかもしれませんが、一層のこと入場料金も作家別にとれば良いのではないでしょうか。個々の作家に面白さはあるとは言え、キュレーションの殆ど存在しない本展覧会に「全体」がない以上、入場料を一つの括りで固定するのにもはや意味はありません。

5月6日までの開催です。
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