「樫木知子 展」 オオタファインアーツ

オオタファインアーツ中央区勝どき2-8-19 近富ビル4階B)
「樫木知子 展」
3/13-4/17



本年のVOCA奨励賞に輝いた樫木知子の近作を紹介します。オオタファインアーツで開催中の個展へ行ってきました。



見ているとすっと消えてしまいそうな事物の希薄感こそ大きな魅力です。細密な線で示された女性はまるで影絵のように虚ろで、それらが屋内外を問わず、場所の連続性の失われたシュールな空間を静かに泳いでいました。精緻な木目の床に転がる女性は一体何を戯れているのでしょうか。目覚め、そして微睡んでしまうような白昼夢の光景が浮かび上がってきます。木の柱で囲まれた家屋が一転して、いつの間にかコンクリートの室内や外の庭へと繋がっていく様子は、彼女らが居場所を常に変えて漂うかげろうのような存在だからなのかもしれません。そこには爽やかな風が吹き抜けるような心地良さがあると同時に、どこか寂し気な気配が漂っていました。

人物の手足の指にも要注目です。通常ではまず考えられない歪んだ形をしています。二人が指相撲でもするかのように向かい合って手を取り合う「影あそび」(最上段DM画像)には驚かされました。変形された指先はエロティックに絡み合い、互いの感情を確かめるかの如く執拗に求め合っています。組紐のようにがっちりと結ばれていました。



ベージュを基調とした滑らかで透明感のあるアクリルの色彩は、やはり表面をやすりで削ることに由来しているのかもしれません。あくまでもフラットに仕上げられた画肌には、爪楊枝の先ほどの線が軽やかに走っていました。解説冊子には松園や栖鳳を彷彿云々との記載がありましたが、確かにそうした面(とりわけ後者。)は見て取れるかもしれません。



まるで布が垂れるかのようにしてダランと立つ女性像には目を奪われました。この雅やかでかつ幽玄な様は、面相筆を駆使したフジタの表現を思わせるものがあります。

ズバリ一推しの展覧会です。17日の金曜日まで開催されています。

*関連エントリ
「受賞作家トークVol.2『樫木知子・高木こずえ』」(VOCA展のトークセッションの様子を一部まとめてあります。)
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