「特集陳列 平成21年新指定国宝・重要文化財」(平常展) 東京国立博物館

東京国立博物館・本館 特別1室、特別2室(台東区上野公園13-9
「特集陳列 平成21年新指定国宝・重要文化財」(平常展)
4/28-5/10

本年に国宝、重要文化財に指定された美術工芸品を展覧します。東博本館、平常展内で開催中の「特集陳列 平成21年新指定国宝・重要文化財」を見てきました。

出品リスト(縄文時代の土偶より飛鳥、鎌倉期の仏像、室町、江戸の絵画から明治の映画フィルムなど、一部写真パネルを含め、全39点が登場します。)





まずおすすめなのが、数年前に栃木で発見され、おそらく東京では初めての公開になるであろう伊藤若冲の大作図巻、「菜蟲譜」(江戸時代)です。この作品については一昨年、当地の佐野の美術館まで追っかけたことがありましたが、今回は全11メートルのうちの最後、虫の楽園の描かれた約2メートルの部分のみが公開されていました。(ちょうど上の図版部分です。現時点で巻き替えの予定はありません。)趣旨は異なるとは言え、これほどの超名品をごく一部だけ紹介にとどめるのはいささか寂しい面もありますが、まずは東京に出たということだけでもあり難く受け止めるべきではないでしょうか。薄暗い照明でやや見づらい部分もありましたが、久々の再会の感激はひとしおでした。



しかしながら若冲を除いても、見るべき点が多数あるのが本展示の侮れないところです。二点の国宝のうちの一点、対決展でも印象深かった蕪村の「夜色楼台図」は残念ながらパネルでしたが、手足の縄のような模様も克明に残り、驚くほど状態の良い「土偶」(縄文時代)には惹かれるものがありました。ちなみにこの作品は制作後、同じく縄文期に一度、修復がなされていることが分かっているそうです。手は確かに合掌していますが、まるで唄を口ずさむ歌人のようにも見えました。どことなく楽しそうです。



絵画では縦4メートル、横3メートルほどはある東福寺所蔵の「白衣観音図」(室町時代)が圧巻です。ダイナミックな墨線が岩窟と荒々しい波頭を象り、その中をさも涼し気に観音様が座る姿が描かれています。またその他では、笙を奏で、鳳凰を呼び寄せるという逸話に基づく、岩佐勝以、ようは又兵衛の「弄玉仙図」(江戸時代)も見逃せません。ソフトタッチの描線が仄かな墨の濃淡と共鳴して、頭上には鳳凰も舞う優雅な景色を巧みに表していました。うっすらとした蔦や草の様子もまた趣があります。



工芸関連では長次郎による獅子の楽焼、「二彩獅子」(安土桃山時代)と、三井記念の森川如春庵展でも出品のあった光悦の「赤楽茶碗 乙御前」が一推しです。ぐっと前屈みになり、今にも駆け出しそうな獅子の様子はコミカルで親しみが持てます。また光悦は切れ味の鋭い口縁から開かれる、ちょうど丸いおむすびを象ったような独特のフォルムが印象に残りました。光沢のある朱色の釉薬も端正です。まるで何かを包み込むマントのようでした。



このペースで書いていくとキリがありません。最後には表面に鍍金がまだ残り、法隆寺金堂壁画との関連も指摘されるという「観音菩薩立像」(飛鳥時代)、また以前、真如苑が十数億円で購入したことで話題ともなった「大日如来坐像」(鎌倉時代)などの仏像も見応えがあったことを付け加えておきます。それにしても例えばお寺の文物などは、次にいつ公開されるか見当もつきません。その点でも興味深い展示であることは間違いなさそうです。

なお本展は言うまでもなく東博平常展の一部です。入館料のみで観覧可能です。(ただし撮影は不可です。)この日(19日)も阿修羅は40分待ちでしたが、こちらは悠々と楽しむことが出来ました。

GW期間中のみの特別公開です。5月10日まで開催されています。
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