都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「福富太郎コレクション 近代日本画にみる女性の美」 そごう美術館
そごう美術館(横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店6階)
「福富太郎コレクション 近代日本画にみる女性の美 - 鏑木清方と東西の美人画」
2/24-3/21
鏑木清方を中心に、近代の日本画による女性像を展観します。そごう美術館で開催中の「福富太郎コレクション 近代日本画にみる女性の美 - 鏑木清方と東西の美人画」へ行ってきました。
定評のある福富太郎氏の近代日本画コレクションをまとめて拝見出来る展覧会です。タイトルにもあるように日本画の中から「女性の美」に焦点をあて、東京と京都・大阪で活躍した画家たちによる美人画を約70点ほど紹介していました。
冒頭は鏑木清方の名品展です。ずらりと15点ほど清方が並ぶだけでも美人画ファンには嬉しくなってしまいますが、サントリー美術館の回顧展でも圧巻だった「妖魚」(1920)に再会出来たのは感無量でした。
鏑木清方「妖魚」1920年
強烈なエロスが発露する、一種の危な絵とも言えるスタイルこそ、今回の福富太郎コレクションの美人画に共通する要素ではないでしょうか。
鏑木清方「刺青の女」1913年
そしてもう一点、刺青をした女性を描いた「刺青の女」(1913)も、そうした妖しき清方の魅力を味わえる作品に他なりません。乳房を露に、背中から腕にかけて蝶や草花の入った刺青を見せる姿は、まさにゾクゾクするような艶やかさをたたえています。実はこの作品は前述のサントリーの回顧展では出なかっただけに、今回横浜へ出かけた甲斐があったというものでした。
展示では東京と関西で活躍した画家を分けて紹介していますが、比較的知名度の低い画家の作品に魅力がある点も見逃せません。中でも私がおすすめしたいのは6~7点ほど展示されていた池田輝方です。
彼は清方、そして鰭崎英朋の設立したグループ「鳥合会」に参加し、浮世絵的画風の日本画を多数描きましたが、ともかく半ば乱れた女性の姿に何とも言えない色気を感じます。虚ろな表情をして、地べたに崩れ落ちるように座る女性を描いた「お夏狂乱」(1914)などには強く惹かれました。
北野恒富「道行」1913年
後半はデカダン色の濃い関西の画家たちが待ち構えています。お馴染みの北野恒富ではともかく「道行」(1913)が圧巻の一言です。二曲一双の屏風の右隻には、寄り添いつつも何か覚悟を決めたように彼方を見やる男女の姿が登場しています。そして興味深いのは左隻に描かれた二羽のカラスです。一面の余白を背景に、あたかもバタバタと音を立てるかのように翼を広げる様子は、どこかこの男女に不吉な気配を与えていました。本作こそ今回のハイライトと言えるかもしれません。
甲斐庄楠音「横櫛」1918年
最後にはデロリの甲斐庄楠音の「横櫛」(1918)も控えています。その不気味な微笑みを見ていると何やらモナリザを思い出してしまいました。
「甲斐庄楠音画集 ロマンチック・エロチスト/甲斐庄楠音/求龍堂」
照明が今ひとつであるのと、リストがないのは残念でなりませんが、見終えた後、久々に美人画を見てめろめろになった自分に気がつきました。またミュージックホールの楽屋を群像表現的に表した伊東深水の「戸外は春雨」(1955)など、既知の画家の思いもよらない作品も見どころの一つです。
「美人画の系譜 鏑木清方と東西の名作百選/内山武夫/青幻舎」
展示替えはありません。3月21日まで開催されています。おすすめします。
*開館日時:会期中無休 10:00~20:00(入館は閉館の30分前まで)
「福富太郎コレクション 近代日本画にみる女性の美 - 鏑木清方と東西の美人画」
2/24-3/21
鏑木清方を中心に、近代の日本画による女性像を展観します。そごう美術館で開催中の「福富太郎コレクション 近代日本画にみる女性の美 - 鏑木清方と東西の美人画」へ行ってきました。
定評のある福富太郎氏の近代日本画コレクションをまとめて拝見出来る展覧会です。タイトルにもあるように日本画の中から「女性の美」に焦点をあて、東京と京都・大阪で活躍した画家たちによる美人画を約70点ほど紹介していました。
冒頭は鏑木清方の名品展です。ずらりと15点ほど清方が並ぶだけでも美人画ファンには嬉しくなってしまいますが、サントリー美術館の回顧展でも圧巻だった「妖魚」(1920)に再会出来たのは感無量でした。
鏑木清方「妖魚」1920年
強烈なエロスが発露する、一種の危な絵とも言えるスタイルこそ、今回の福富太郎コレクションの美人画に共通する要素ではないでしょうか。
鏑木清方「刺青の女」1913年
そしてもう一点、刺青をした女性を描いた「刺青の女」(1913)も、そうした妖しき清方の魅力を味わえる作品に他なりません。乳房を露に、背中から腕にかけて蝶や草花の入った刺青を見せる姿は、まさにゾクゾクするような艶やかさをたたえています。実はこの作品は前述のサントリーの回顧展では出なかっただけに、今回横浜へ出かけた甲斐があったというものでした。
展示では東京と関西で活躍した画家を分けて紹介していますが、比較的知名度の低い画家の作品に魅力がある点も見逃せません。中でも私がおすすめしたいのは6~7点ほど展示されていた池田輝方です。
彼は清方、そして鰭崎英朋の設立したグループ「鳥合会」に参加し、浮世絵的画風の日本画を多数描きましたが、ともかく半ば乱れた女性の姿に何とも言えない色気を感じます。虚ろな表情をして、地べたに崩れ落ちるように座る女性を描いた「お夏狂乱」(1914)などには強く惹かれました。
北野恒富「道行」1913年
後半はデカダン色の濃い関西の画家たちが待ち構えています。お馴染みの北野恒富ではともかく「道行」(1913)が圧巻の一言です。二曲一双の屏風の右隻には、寄り添いつつも何か覚悟を決めたように彼方を見やる男女の姿が登場しています。そして興味深いのは左隻に描かれた二羽のカラスです。一面の余白を背景に、あたかもバタバタと音を立てるかのように翼を広げる様子は、どこかこの男女に不吉な気配を与えていました。本作こそ今回のハイライトと言えるかもしれません。
甲斐庄楠音「横櫛」1918年
最後にはデロリの甲斐庄楠音の「横櫛」(1918)も控えています。その不気味な微笑みを見ていると何やらモナリザを思い出してしまいました。
「甲斐庄楠音画集 ロマンチック・エロチスト/甲斐庄楠音/求龍堂」
照明が今ひとつであるのと、リストがないのは残念でなりませんが、見終えた後、久々に美人画を見てめろめろになった自分に気がつきました。またミュージックホールの楽屋を群像表現的に表した伊東深水の「戸外は春雨」(1955)など、既知の画家の思いもよらない作品も見どころの一つです。
「美人画の系譜 鏑木清方と東西の名作百選/内山武夫/青幻舎」
展示替えはありません。3月21日まで開催されています。おすすめします。
*開館日時:会期中無休 10:00~20:00(入館は閉館の30分前まで)
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