都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「大英博物館 古代ギリシャ展」 国立西洋美術館
国立西洋美術館
「大英博物館 古代ギリシャ展 - 究極の身体、完全なる美」
7/5-9/25
日本初公開の「円盤投げ」(ディスコボロス)を含む、大英博物館の古代ギリシャ美術コレクションを展観します。国立西洋美術館で開催中の「大英博物館 古代ギリシャ展」へ行って来ました。
古代エジプト美術と並び、現地大英博物館でも人気の高い古代ギリシャ美術ですが、今回はその定評のあるコレクションのうち約130点が上野の西洋美術館に集まっています。
展覧会の構成は以下の通りです。
1.神々、英雄、別世界の者たち
1-1 ギリシャの神々
1-2 英雄ヘラクレス
1-3 別世界の者たち
2.人のかたち
2-1 男性の身体美
2-2 女性の身体美
3.オリンピアとアスリート
4.人々の暮らし
4-1 誕生、結婚、死
4-2 性と欲望
4-3 個性とリアリズム
古代ギリシャ美術の根幹である人間の身体にスポットを当て、彫像、レリーフ、壺絵などを紹介していました。
展示の始めに待ち構えるのは、お馴染みのゼウスやアフロディテと言ったギリシャの神々です。中でも展示室中央に立つ「擬人化した葡萄の木とディオニュソス像」には見惚れた方も多いかもしれません。まさに少年のような出で立ちして葡萄の木を纏う姿は、ギリシャ彫刻の流麗な造形美を思わせるものがありました。
オリンピアの伝説上の創始者であるというヘラクレスの頭部が迫力満点です。大きく見開かれた瞳、堀の深い目鼻立ち、そして豊かに蓄えた口ひげは、まさに英雄に相応しい姿であると言えるのではないでしょうか。なおこの彫像はハドリアヌス帝なために造られたものだそうです。時の権力者も自身とヘラクレスの偉業と重ね合わせていたのかもしれません。
「スフィンクス像」後120-140年頃 大理石
スフィンクスもお出ましです。女性の頭部とライオンの体、そしてワシの翼を組み合わた姿はやはり異様ですが、その尻尾が妙に可愛らしいのも印象に残りました。
第2章へ進むといよいよ人の身体が直接的に表現される様子を楽しむことが出来ます。右足に重心を置き、右手を前にして何かを指すような仕草をする「アポロン像」は小像ながらも見応えのある作品ではないでしょうか。
「アフロディテ(ヴィーナス)像」ローマ時代 大理石
また沐浴のために裸となったというアフロディテを象った「アフロディテ像」にも目を奪われます。当時の女性像には着衣表現も多く、こうした像は逆に人気があったそうですが、まさかこの像がそのような一種の需要で造られていたとは思いませんでした。
「役者の小像」前1世紀 テラコッタ
喜怒哀楽を誇張的に表現した像も忘れられません。突き出した顎で笑いを誘う「喜劇役者の像」をはじめ、酒杯に角の突き出したサテュロスを描いた「赤像式カンタロス」などはまるで戯画に出てくる登場人物のようでした。
「黒像式頸部アンフォラ・ヘファイストスのオリュンポスへの帰還」前520年頃 陶器
なお、今回のギリシャ展では、彫像よりも杯や壺などが多く出ています。そこに描かれた絵も見どころの一つとなりそうです。
「円盤投げ(ディスコボロス)」後2世紀 大理石
さて「円盤投げ」は階下の展示室でお待ちかねです。360度ぐるりと一周見渡せる露出展示での登場でしたが、その美しいプロポーションはどの位置から眺めても飽きません。私としてはやはり円盤が飛びしてくるような迫力のある像正面の斜め前が好みですが、ぐっと突き出した臀部に迫力もある後ろ姿もインパクトがありました。
なおこの円盤投げは他のスペースから暗幕で遮ったやや狭い空間に置かれています。後ろが全面暗幕のため、その分、像のフォルムがクッキリと浮き上がってきますが、空間自体はあまり広くありません。可能であればもう少し広い場所で見られればと思いました。
人々の生活にむすびついた像などで断然に面白いのは第4章の2つ目のセクション、「性と欲望」です。ここではそれこそ西美常設のロダンと見間違えんばかりの激しいエロスに溢れた像などが展示されています。
ニンフがサテュロスと重なり合いながらも離れようとする「サテュロスから逃げようとするニンフの像」は強烈です。
また杯や壺の絵においても性的なモチーフの作品がいくつか登場しています。多産や豊穣を願うために男性の性器に水をやる人物を描いた「赤像式ペリケ」や、ギリシャでは良く出てくる男性の同性愛の姿を表した「赤像式鐘形クラテル」などは衝撃的でした。
最後にやや毛色の異なった作品をご紹介したいと思います。それが他の作品より断然に古い、紀元前2600年頃に造られたという「後期スペドス型女性像」です。
「後期スペドス型女性像」前2600-2400年頃 大理石
そのモニュメンタルな出で立ちを見て土偶を連想された方も多いのではないでしょうか。すっとのびる鼻筋と、少し膨らんだ乳房、そして2つに折れた手を前で組んで起立する様は何とも神秘的でした。
「耳飾り」前330-前300年 金
既に先行した神戸展の評判も上々なのか、館内はなかなか混雑していました。そして先ほど触れた「円盤投げ」の展示室と同様、会場は西美にしてはやや混み合った作りです。所狭しと彫像や壺などが並ぶせいか、動線もあまり広くありません。近寄らないと楽しめない細かな金細工なども出ています。なるべく混雑する時間帯(土日の午後など)は避けた方が良いかもしれません。
9月25日までの開催です。
「大英博物館 古代ギリシャ展 - 究極の身体、完全なる美」 国立西洋美術館
会期:7月5日(火)~9月25日(日)
休館:月曜日 *但し7/18、8/15、9/19は開館。7/19と9/20(ともに火曜)は休館。
時間:9:30~17:30 *毎週金曜日は20時まで開館。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成電鉄京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
「大英博物館 古代ギリシャ展 - 究極の身体、完全なる美」
7/5-9/25
日本初公開の「円盤投げ」(ディスコボロス)を含む、大英博物館の古代ギリシャ美術コレクションを展観します。国立西洋美術館で開催中の「大英博物館 古代ギリシャ展」へ行って来ました。
古代エジプト美術と並び、現地大英博物館でも人気の高い古代ギリシャ美術ですが、今回はその定評のあるコレクションのうち約130点が上野の西洋美術館に集まっています。
展覧会の構成は以下の通りです。
1.神々、英雄、別世界の者たち
1-1 ギリシャの神々
1-2 英雄ヘラクレス
1-3 別世界の者たち
2.人のかたち
2-1 男性の身体美
2-2 女性の身体美
3.オリンピアとアスリート
4.人々の暮らし
4-1 誕生、結婚、死
4-2 性と欲望
4-3 個性とリアリズム
古代ギリシャ美術の根幹である人間の身体にスポットを当て、彫像、レリーフ、壺絵などを紹介していました。
展示の始めに待ち構えるのは、お馴染みのゼウスやアフロディテと言ったギリシャの神々です。中でも展示室中央に立つ「擬人化した葡萄の木とディオニュソス像」には見惚れた方も多いかもしれません。まさに少年のような出で立ちして葡萄の木を纏う姿は、ギリシャ彫刻の流麗な造形美を思わせるものがありました。
オリンピアの伝説上の創始者であるというヘラクレスの頭部が迫力満点です。大きく見開かれた瞳、堀の深い目鼻立ち、そして豊かに蓄えた口ひげは、まさに英雄に相応しい姿であると言えるのではないでしょうか。なおこの彫像はハドリアヌス帝なために造られたものだそうです。時の権力者も自身とヘラクレスの偉業と重ね合わせていたのかもしれません。
「スフィンクス像」後120-140年頃 大理石
スフィンクスもお出ましです。女性の頭部とライオンの体、そしてワシの翼を組み合わた姿はやはり異様ですが、その尻尾が妙に可愛らしいのも印象に残りました。
第2章へ進むといよいよ人の身体が直接的に表現される様子を楽しむことが出来ます。右足に重心を置き、右手を前にして何かを指すような仕草をする「アポロン像」は小像ながらも見応えのある作品ではないでしょうか。
「アフロディテ(ヴィーナス)像」ローマ時代 大理石
また沐浴のために裸となったというアフロディテを象った「アフロディテ像」にも目を奪われます。当時の女性像には着衣表現も多く、こうした像は逆に人気があったそうですが、まさかこの像がそのような一種の需要で造られていたとは思いませんでした。
「役者の小像」前1世紀 テラコッタ
喜怒哀楽を誇張的に表現した像も忘れられません。突き出した顎で笑いを誘う「喜劇役者の像」をはじめ、酒杯に角の突き出したサテュロスを描いた「赤像式カンタロス」などはまるで戯画に出てくる登場人物のようでした。
「黒像式頸部アンフォラ・ヘファイストスのオリュンポスへの帰還」前520年頃 陶器
なお、今回のギリシャ展では、彫像よりも杯や壺などが多く出ています。そこに描かれた絵も見どころの一つとなりそうです。
「円盤投げ(ディスコボロス)」後2世紀 大理石
さて「円盤投げ」は階下の展示室でお待ちかねです。360度ぐるりと一周見渡せる露出展示での登場でしたが、その美しいプロポーションはどの位置から眺めても飽きません。私としてはやはり円盤が飛びしてくるような迫力のある像正面の斜め前が好みですが、ぐっと突き出した臀部に迫力もある後ろ姿もインパクトがありました。
なおこの円盤投げは他のスペースから暗幕で遮ったやや狭い空間に置かれています。後ろが全面暗幕のため、その分、像のフォルムがクッキリと浮き上がってきますが、空間自体はあまり広くありません。可能であればもう少し広い場所で見られればと思いました。
人々の生活にむすびついた像などで断然に面白いのは第4章の2つ目のセクション、「性と欲望」です。ここではそれこそ西美常設のロダンと見間違えんばかりの激しいエロスに溢れた像などが展示されています。
ニンフがサテュロスと重なり合いながらも離れようとする「サテュロスから逃げようとするニンフの像」は強烈です。
また杯や壺の絵においても性的なモチーフの作品がいくつか登場しています。多産や豊穣を願うために男性の性器に水をやる人物を描いた「赤像式ペリケ」や、ギリシャでは良く出てくる男性の同性愛の姿を表した「赤像式鐘形クラテル」などは衝撃的でした。
最後にやや毛色の異なった作品をご紹介したいと思います。それが他の作品より断然に古い、紀元前2600年頃に造られたという「後期スペドス型女性像」です。
「後期スペドス型女性像」前2600-2400年頃 大理石
そのモニュメンタルな出で立ちを見て土偶を連想された方も多いのではないでしょうか。すっとのびる鼻筋と、少し膨らんだ乳房、そして2つに折れた手を前で組んで起立する様は何とも神秘的でした。
「耳飾り」前330-前300年 金
既に先行した神戸展の評判も上々なのか、館内はなかなか混雑していました。そして先ほど触れた「円盤投げ」の展示室と同様、会場は西美にしてはやや混み合った作りです。所狭しと彫像や壺などが並ぶせいか、動線もあまり広くありません。近寄らないと楽しめない細かな金細工なども出ています。なるべく混雑する時間帯(土日の午後など)は避けた方が良いかもしれません。
9月25日までの開催です。
「大英博物館 古代ギリシャ展 - 究極の身体、完全なる美」 国立西洋美術館
会期:7月5日(火)~9月25日(日)
休館:月曜日 *但し7/18、8/15、9/19は開館。7/19と9/20(ともに火曜)は休館。
時間:9:30~17:30 *毎週金曜日は20時まで開館。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成電鉄京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
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