「家の外の都市(まち)の中の家」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー
「家の外の都市(まち)の中の家 Tokyo Metabolizing 第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展帰国展」
7/16-10/2



東京オペラシティで開催中の「家の外の都市(まち)の中の家」展へ行ってきました。

タイトルにもあるように、本展は第12回ヴェネチア・ビエンナーレの国際建築展(2010年)日本館の帰国展ですが、その展示にプラスして日本館のコミッショナーをつとめた北山恒の作品も紹介されています。

構成は以下の通りです。

イントロダクション
アトリエ・ワン「ハウス&アトリエ・ワン」
西沢立衛「森山邸」
北山恒「祐天寺の連結住棟」
あたらしい都市のインデックス


アトリエ・ワン、西沢立衛、北山恒の3組の建築家による住宅モデルを出発点に、東京における住宅建築を、都市全体と人々の生活の観点から問い直す内容となっていました。


第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示風景 2010年

イントロダクションは映像です。東京の街が約120万にも及ぶという所有者に分割され、その中の無数のグリットに家屋が密集、そして人々の生活が送られているのかが語られていきます。ようはその細かなスペースの中で都市全体との関係に配慮しながら、いかにして建築が生活の場を提供していくのかというのが一つのテーマというわけでした。

アトリエ・ワンはそうした問いに対して、職住一体となった自宅兼オフィスを提案します。実物の2分の1スケールによる「ハウス&アトリエ・ワン」はオレンジ色のボックス、つまりは住宅の中で、一つの連続したオフィススペースを生み出しました。外部への開かれたスペース、そして見通しの良い内部など、総じて空間としての軽快な印象が心に残りました。


第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示風景 2010年

西沢立衛と北山恒の提案は集合住宅です。西沢は各ユニットを「離散配置」(解説冊子より引用)した6戸の住宅を、また北山は3つの分棟がバルコニーなどで繋がった46戸の住宅をそれぞれ手がけています。

北山の「連結住棟」はむしろプライバシーに対する認識が意図的に薄められているかもしれません。各住戸の壁は可動式のものを用い、相互の住戸における視線を完全に遮断させないなど、住民同士の関係性を半ば強化させるような手法は興味深いものがありました。

ところでこの展覧会、アトリエ・ワンの模型を除くと、展示自体のボリュームに極めて乏しく、率直なところ物足りなく思えましたが、東京の住宅、また地域の諸問題について触れたパネルや映像は思いの外に見応えがあります。そちらは楽しめるかもしれません。



同時開催中のコレクション展、「保田井智之 長円の夜」は見事な内容でした。前々からオペラシティで惹かれていた保田井の彫刻を一挙30点ほど見られるとは思いもよりません。私にとっては忘れられない体験となりました。

なお本展では関連のトークイベントが充実しています。

「ゲストトーク・サイクル」(事前申込制)
8/11(木)19:15~  内藤廣(建築家)×北山恒 *受付終了
8/14(日)19:15~  山本理顕(建築家)×北山恒 *受付終了
8/28(日)19:15~  北山恒×西沢立衛 *受付終了
9/4(日) 9:30~ 柳澤田実(哲学者)×塚本由晴(アトリエ・ワン) *受付終了
9/6(火) 19:15~ 大野秀敏(建築家)×北山恒
9/15(木)19:15~  陣内秀信(建築史家)×北山恒
9/18(日)19:15~  西郷真理子(都市計画プランナー)×貝島桃代(アトリエ・ワン)

全7回のうち、既に4回は受付を終えていますが、残りの3回は現在申込み受付中です。聴講は展覧会入場券のみとのことで、そちらのトークとあわせればまた展示への理解も深まるのではないでしょうか。

10月2日までの開催です。

「家の外の都市(まち)の中の家 Tokyo Metabolizing 第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展帰国展」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:7月16日(土)~10月2日(日)
休館:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
時間:11:00~19:00 *金・土は20時まで開館。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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