都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
東京都美術館リニューアルオープン
東京都美術館リニューアルオープン、プレス内覧ツアーに参加してきました。
2年前より全館大規模改修工事を行っていた東京都美術館ですが、ようやくこの4月1日、無事オープンを迎えました。
1975年、前川國男設計によって建てられた東京都美術館でしたが、開館以来35年、とりわけ内部の痛みは激しく、今回全面リニューアル工事をすることになりました。
しかしながらこの美術館の外観を特徴づけるワイン色の外壁タイルなど、前川建築の佇まいは変わりません。いわゆる躯体はそのままに、今の時代に沿う展示環境、またアメニティ施設、設備の更新、さらには環境負荷軽減を目的にして、改修工事が行われました。
と言うわけで写真をご覧になっていただければお分かりいただけるかもしれませんが、正門アプローチの印象はほぼ前と同じです。かつては上野公園の動線の問題もあり、東門がメインの入口になっていた感がありますが、現在進行中の公園のリニューアルとあわせ、この正門が名実共にメインの入口として使われるようになるそうです。
旧都美館の内部はともかくバリアーフリーに難点がありましたが、それはエントランスから大幅に改善されています。ロビーへ向かうアプローチにはエスカレーター、及びエレベーターが設置され、入口そのものも自動ドアに変更されました。
ロビーでは大幅拡張したミュージアムショップがお出迎えです。以前の2.5倍の広さということですが、内容面でも美術館オリジナルなど、かなり充実しています。
またチケットブースも移動新設され、コインロッカーも増設されました。
それにともかく旧都美館では古さが否めなかったトイレが一新しています。全て新設です。また数自体もかつての階段部分を閉鎖して造るなど、かなり増えました。当然のことながら車いす用のトイレもあります。もうトイレで困ることはなさそうです。
続いて展示室です。まず公募展示室ですが、全12室の空調、照明など全て更新されています。また床面はタイル張りからカーペットに変更です。靴音が出にくく、また埃も出にくいという都美館の特注品ということでした。
また細かいところですが、稼働壁の穴の間隔がかつての4センチから10センチへと変更されています。
それに各展示室毎に入口部分が塗り分けられています。全般的にサインシステムも大幅に改善されたと言えるのではないでしょうか。
さて企画棟は躯体以外の全面改修ということで、ほぼ建て替えに近い内容となっています。
広がった入口部分こそかつての面影を残すものの、展示室内部は完全に別物です。
床面は公募展示室同様、タイルからカーペットに変更されています。また天井高も3.2メートルから4.5メートルへと高くなりました。(ただしいわゆる吹き抜けはなくなりました。)
各700平方メートル程度のフロアが3つ、それこそ新美を思わせるようなスタイリッシュなホワイトキューブに生まれ変わりました。
またかつての企画展示室で非常にネックだった上下への移動は大幅に改善されています。
LB、1、2階と、企画室の動線に沿って専用のエスカレーターでの移動です。
それに企画室にはガラス張りのミニ休憩スペースも出来ました。率直に申し上げるとかつての企画室は何やら穴蔵のような印象がありましたが、そうした面は払拭されたと言えるかもしれません。
またもう一つの展示スペース、かつての彫塑室は多目的のギャラリーへと変更です。こちらへのアプローチも以前は階段でしたが、ロビーから直接エレベーターとエスカレーターで行き来することが可能になりました。
さて今回最も変化があったのはレストランなどのある中央棟です。フロアが一つ増築され、1階部分にフリースペース、「佐藤慶太郎記念アートラウンジ」が新設されました。
いわゆる情報コーナーと休憩室の合体版です。席数は全50席、当然ながらフリーエリアということで、入館料を支払わなくても利用出来ます。
また情報コーナーでは専用端末によって展覧会情報等を引き出すことも可能です。また立派なチラシ置き場も新設されました。
ラウンジの奥の交流棟に出来たのは図書室ならぬ美術情報室です。過去展覧会のカタログの他、美術書などが揃いました。座席数は計14席です。ここでゆっくり読書というのも良いかもしれません。
さて大きな変化と言えばもう一つ、全面刷新された飲食スペースを忘れてはなりません。旧都美館ではレストランが一つあるに過ぎませんでしたが、リニューアル後は計3つのレストラン・カフェが誕生しました。
レストランは2つ、新たに美術館のグランドレストランとして生まれたのは「IVORY(アイボリー)」です。
ご覧の通りのハイグレードな内装です。(ランチコースは2500円から5000円まで。他アラカルトもあり。)営業時間は美術館に準じて平日は午後5時まで(金曜は夜8時まで)ということですが、貸し切りパーティなどにも対応可能とのことです。半個室スペースもありました。(着席84席、立食100名。)
もう一つのレストラン、中央棟の増築部分、つまり2階に出来たのが「MUSEUM TERRACE(ミュージアムテラス)」です。こちらは「アイボリー」よりもカジュアルな仕様となっています。
またテラスからは見晴らしの良い公園内の景色を見ることが出来ます。アートラウンジしかり、企画展示室の休憩スペースしかり、全体としてガラス窓を用い、外の景色を取り込んだ設計になっているように思いました。
カフェは1階のアートラウンジ横の「M cafeエム・カフェ」です。座席数は60席、コーヒー(430円~)やサンドイッチやパフェなどのデザート、いわゆる軽食類が充実していました。こちらは展覧会後にでも気軽に利用出来そうです。
最後に大きく変化したのは北側からのアプローチです。これまでは正門と東門のみで、北側から入れませんでしたが、リニューアル後は北側にもエントランスが出来ました。
これで芸大方向から北門をくぐり都美館内を通って上野公園、もしくはその逆の通行が可能です。上野公園内の新たな動線が誕生したと言えるかもしれません。
一見、外観は殆ど変わりませんが、中はかなり変化しています。躯体を残してのこれほど大規模な改修は珍しいとのことですが、工事に携わった前川建築事務所の所長の橋本氏によれば「国内の70年代の建築物の改修工事の模範的例になるのではないか。」とのことでした。
震災の影響により、一時は2ヶ月ほど工事の進行が遅れたこともあったそうです。工事には相当の苦労があったとのお話もありました。
【東京都美術館、リニューアル後の特別展スケジュール】
マウリッツハイス美術館展 6/30~9/17
メトロポリタン美術館展 10/6~2013/1/4
エル・グレコ展 2013/1/19~4/7
既に4月1日にリニューアルオープン済みです。特別展は準備の都合もあり7月からのマウリッツハイス展ですが、公募展は既に始まっています。
上野へお出かけの際にはまず一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
2年前より全館大規模改修工事を行っていた東京都美術館ですが、ようやくこの4月1日、無事オープンを迎えました。
1975年、前川國男設計によって建てられた東京都美術館でしたが、開館以来35年、とりわけ内部の痛みは激しく、今回全面リニューアル工事をすることになりました。
しかしながらこの美術館の外観を特徴づけるワイン色の外壁タイルなど、前川建築の佇まいは変わりません。いわゆる躯体はそのままに、今の時代に沿う展示環境、またアメニティ施設、設備の更新、さらには環境負荷軽減を目的にして、改修工事が行われました。
と言うわけで写真をご覧になっていただければお分かりいただけるかもしれませんが、正門アプローチの印象はほぼ前と同じです。かつては上野公園の動線の問題もあり、東門がメインの入口になっていた感がありますが、現在進行中の公園のリニューアルとあわせ、この正門が名実共にメインの入口として使われるようになるそうです。
旧都美館の内部はともかくバリアーフリーに難点がありましたが、それはエントランスから大幅に改善されています。ロビーへ向かうアプローチにはエスカレーター、及びエレベーターが設置され、入口そのものも自動ドアに変更されました。
ロビーでは大幅拡張したミュージアムショップがお出迎えです。以前の2.5倍の広さということですが、内容面でも美術館オリジナルなど、かなり充実しています。
またチケットブースも移動新設され、コインロッカーも増設されました。
それにともかく旧都美館では古さが否めなかったトイレが一新しています。全て新設です。また数自体もかつての階段部分を閉鎖して造るなど、かなり増えました。当然のことながら車いす用のトイレもあります。もうトイレで困ることはなさそうです。
続いて展示室です。まず公募展示室ですが、全12室の空調、照明など全て更新されています。また床面はタイル張りからカーペットに変更です。靴音が出にくく、また埃も出にくいという都美館の特注品ということでした。
また細かいところですが、稼働壁の穴の間隔がかつての4センチから10センチへと変更されています。
それに各展示室毎に入口部分が塗り分けられています。全般的にサインシステムも大幅に改善されたと言えるのではないでしょうか。
さて企画棟は躯体以外の全面改修ということで、ほぼ建て替えに近い内容となっています。
広がった入口部分こそかつての面影を残すものの、展示室内部は完全に別物です。
床面は公募展示室同様、タイルからカーペットに変更されています。また天井高も3.2メートルから4.5メートルへと高くなりました。(ただしいわゆる吹き抜けはなくなりました。)
各700平方メートル程度のフロアが3つ、それこそ新美を思わせるようなスタイリッシュなホワイトキューブに生まれ変わりました。
またかつての企画展示室で非常にネックだった上下への移動は大幅に改善されています。
LB、1、2階と、企画室の動線に沿って専用のエスカレーターでの移動です。
それに企画室にはガラス張りのミニ休憩スペースも出来ました。率直に申し上げるとかつての企画室は何やら穴蔵のような印象がありましたが、そうした面は払拭されたと言えるかもしれません。
またもう一つの展示スペース、かつての彫塑室は多目的のギャラリーへと変更です。こちらへのアプローチも以前は階段でしたが、ロビーから直接エレベーターとエスカレーターで行き来することが可能になりました。
さて今回最も変化があったのはレストランなどのある中央棟です。フロアが一つ増築され、1階部分にフリースペース、「佐藤慶太郎記念アートラウンジ」が新設されました。
いわゆる情報コーナーと休憩室の合体版です。席数は全50席、当然ながらフリーエリアということで、入館料を支払わなくても利用出来ます。
また情報コーナーでは専用端末によって展覧会情報等を引き出すことも可能です。また立派なチラシ置き場も新設されました。
ラウンジの奥の交流棟に出来たのは図書室ならぬ美術情報室です。過去展覧会のカタログの他、美術書などが揃いました。座席数は計14席です。ここでゆっくり読書というのも良いかもしれません。
さて大きな変化と言えばもう一つ、全面刷新された飲食スペースを忘れてはなりません。旧都美館ではレストランが一つあるに過ぎませんでしたが、リニューアル後は計3つのレストラン・カフェが誕生しました。
レストランは2つ、新たに美術館のグランドレストランとして生まれたのは「IVORY(アイボリー)」です。
ご覧の通りのハイグレードな内装です。(ランチコースは2500円から5000円まで。他アラカルトもあり。)営業時間は美術館に準じて平日は午後5時まで(金曜は夜8時まで)ということですが、貸し切りパーティなどにも対応可能とのことです。半個室スペースもありました。(着席84席、立食100名。)
もう一つのレストラン、中央棟の増築部分、つまり2階に出来たのが「MUSEUM TERRACE(ミュージアムテラス)」です。こちらは「アイボリー」よりもカジュアルな仕様となっています。
またテラスからは見晴らしの良い公園内の景色を見ることが出来ます。アートラウンジしかり、企画展示室の休憩スペースしかり、全体としてガラス窓を用い、外の景色を取り込んだ設計になっているように思いました。
カフェは1階のアートラウンジ横の「M cafeエム・カフェ」です。座席数は60席、コーヒー(430円~)やサンドイッチやパフェなどのデザート、いわゆる軽食類が充実していました。こちらは展覧会後にでも気軽に利用出来そうです。
最後に大きく変化したのは北側からのアプローチです。これまでは正門と東門のみで、北側から入れませんでしたが、リニューアル後は北側にもエントランスが出来ました。
これで芸大方向から北門をくぐり都美館内を通って上野公園、もしくはその逆の通行が可能です。上野公園内の新たな動線が誕生したと言えるかもしれません。
一見、外観は殆ど変わりませんが、中はかなり変化しています。躯体を残してのこれほど大規模な改修は珍しいとのことですが、工事に携わった前川建築事務所の所長の橋本氏によれば「国内の70年代の建築物の改修工事の模範的例になるのではないか。」とのことでした。
震災の影響により、一時は2ヶ月ほど工事の進行が遅れたこともあったそうです。工事には相当の苦労があったとのお話もありました。
【東京都美術館、リニューアル後の特別展スケジュール】
マウリッツハイス美術館展 6/30~9/17
メトロポリタン美術館展 10/6~2013/1/4
エル・グレコ展 2013/1/19~4/7
既に4月1日にリニューアルオープン済みです。特別展は準備の都合もあり7月からのマウリッツハイス展ですが、公募展は既に始まっています。
上野へお出かけの際にはまず一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
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