「後藤靖香 暗号模索」 第一生命南ギャラリー

第一生命南ギャラリー
「後藤靖香 暗号模索」 
3/23-4/23



第一生命南ギャラリーで開催中の後藤靖香展「暗号模索」へ行ってきました。

2011年のVOCA展での「あきらめて」の記憶も新しい後藤靖香ですが、今回は会場の第一生命ギャラリーの歴史に深く踏み込んだ作品を展示しています。

そのキーワードはタイトルにもある「暗号」、そしてそれを「地下室で解読する男たち」です。

何やら謎めいた「暗号模索」という言葉は今ひとつ良くわからないかもしれません。

実はこれはギャラリーのある第一生命館にて、かつて旧陸軍の専門家集団が、アメリカの暗号を解読する作業を行っていたという歴史的事実に則っています。

後藤はそうした人々を調査した上、そのイメージからなる平面の大作を、いつもながらに太い墨の線によるルポタージュともアニメーション風とも言える表現で描きました。

ともかく二段掛けの大きな支持体はおろか、それこそ壁からはちきれんばかりに飛び出してくる人物の迫力に圧倒されるのではないでしょうか。

まさにその二段に描かれた人物こそ、暗号を解くのに汗をかく者に他なりませんが、上下段で別の作業をしているにも関わらず、それこそ鏡面世界の如く、ともに向き合って一つの全体を構築している点もまた見逃せません。

解読作業は「極端に地味で単純な作業の積み重ね」であり、また「成果も徒労に終わることがほとんど」(ともに会場解説シートより引用)とのことですが、そうした先の見えない、言わば得体の知れないものと戦っている作業の重みは、絵画からもひしひしと感じ取れました。

ちなみに当時の資料が敗戦後、殆ど闇に葬られてしまったため、作業に従事した人々の調査は難航したそうです。

会場では調査結果を後藤自身が手書きでまとめたシートを配布しています。そちらもお見逃しなきようご注意下さい。

これほど歴史まで切り込んで取材した、場所性の強い作品もそうないかもしれません。展示は一転勝負ですが、大変に見応えがありました。


後藤靖香「あきらめて」 顔料ペン、墨、カンバス(2011年VOCA展受賞作。本展非出品。参考図版。)

平日昼間のみのオープンですが、有楽町界隈にお越しの際は立ち寄ってみては如何でしょうか。

4月23日までの開催です。これはおすすめします。

「後藤靖香 暗号模索」 第一生命南ギャラリー
会期:3月23日(金)~4月23日(月)
休館:土・日・祝日
時間:12:00~17:00
住所:千代田区有楽町1-13-1 DNタワー21 第一生命本館1階
交通:JR線有楽町駅中央西口より徒歩2分。東京メトロ日比谷線・千代田線、都営三田線日比谷駅B1、B2出口より徒歩1分。東京メトロ有楽町線有楽町駅徒歩1分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )