都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「桜・さくら・SAKURA 2012」 山種美術館
山種美術館
「桜・さくら・SAKURA 2012」
3/31-5/20

山種美術館で開催中の「桜・さくら・SAKURA 2012」へ行ってきました。
三番町時代、千鳥ヶ淵そばの旧山種美術館では恒例企画だったさくら展ですが、移転リニューアル後、初めて広尾へとやってきました。
言うまでもなくテーマは簡単明瞭、日本画におけるさくらに他なりません。実際のさくらも枝垂れにソメイヨシノに山桜と、様々な表情を楽しめますが、絵画においてもまた同様、まさにお花見気分で味わうことが出来ました。
展示冒頭を飾るのは、数あるさくらの日本画の中でも人気のある土牛の「醍醐」です。

奥村土牛「醍醐」1972年 山種美術館
明るいピンク色のさくらが画面いっぱい、それこそ溢れんばかりに咲き誇っていますが、その華やかなさくら色にはちょっとした仕掛けがあります。
というのも土牛は胡粉とともに、虫の体液を綿に浸した『えんじわた』と呼ばれる特殊な顔料を用いているそうです。そうすることではんなりとした独特の質感を生み出すことが出来るとのことでした。
また絵具といえば魁夷の「春静」にも工夫があります。山のうちやや陰った部分は、絵具をフライパンで焼いて黒を表したのだそうです。深みのある色味がまさかそうした技術で出来ているとは知りませんでした。

右:橋本明治「朝陽桜」1970年 山種美術館
デコラティブな様相が一際目を引きます。橋本明治の「朝陽桜」の花びらは工芸的味わいと言えるのではないでしょうか。なおこの作品とほぼ同じ作品が皇居に飾られているそうですが、それと同じものを描いて欲しいと山崎種二が直接、橋本へ依頼したことから、こうして美術館に収蔵されることになったそうです。まさに爛漫、堂々としたさくらでした。

右:松岡映丘「春光春衣」1917年 山種美術館
色艶に眩しいのが松岡映丘の「春光春衣」です。吹き付ける風によって舞うさくらの花びらの表現は躍動感に満ちあふれています。それに上部に散る金箔も効果的ではないでしょうか。また斜め上からのぞき込むという、復古大和絵ならぬ絵巻物風の構図も印象に残りました。

川合玉堂「春風春水」1940年 山種美術館 他
玉堂の掛軸画が6点ほどまとめて出ています。見渡す限りのソメイヨシノも素晴らしいかもしれませんが、こうした山間や農村に数本だけ咲くさくらも一興ではないでしょうか。
拡張された広尾の展示スペースです。三番町時代ではかなわなかった作品も出ています。

冨田溪仙「嵐山の春」1919年 山種美術館
その一つが冨田溪仙の屏風、「嵐山の春」です。一時、修復も兼ねていたということで、三番町の前、茅場町時代以来、約15年ぶりの公開となりました。
順路に沿っての第二室では、大好きな速水御舟の「春の宵」と「夜桜」に強く惹かれます。
実は私が初めて山種美術館へ行ったのが2005年の「さくら展」であり、それが切っ掛けで日本画を鑑賞するようになりましたが、その時に出会ったのがこの「夜桜」でした。

左:速水御舟「春の宵」1934年、右:速水御舟「夜桜」1928年 山種美術館
また「春の宵」は私の最も好きな御舟作かもしれません。散り際の美学云々という言葉もありますが、この作品を前にすると、いつもその儚さに言葉を失ってしまいます。思わずぐっとこみ上げるものを感じました。
なお今回はお馴染みの美術ブログ「青い日記帳」主催による特別鑑賞会に参加しました。通常の閉館後、100名ほどでの借り切り観覧、しかも山崎館長のトーク付きという贅沢な企画です。

さくら展ミュージアムグッズ
青い日記帳のTakさん、また山種美術館のスタッフの方々、そして山崎館長に改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
関東のさくらは早くも散ってしまいましたが、山種美術館では5月下旬前まで『見頃』です。

*地元名所のしだれ桜。樹齢400年とも言われるそうです。満開時に見に行きました。
4年ぶりのリバイバルさくら展、お見逃しなきようご注意下さい。
5月20日まで開催されています。
「桜・さくら・SAKURA 2012」 山種美術館
会期:3月31日(土)~5月20日(日)
休館:月曜日(但し4/30、5/1は開館)
時間:10:00~17:00
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。
注)写真は「青い日記帳 特別鑑賞会」時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「桜・さくら・SAKURA 2012」
3/31-5/20

山種美術館で開催中の「桜・さくら・SAKURA 2012」へ行ってきました。
三番町時代、千鳥ヶ淵そばの旧山種美術館では恒例企画だったさくら展ですが、移転リニューアル後、初めて広尾へとやってきました。
言うまでもなくテーマは簡単明瞭、日本画におけるさくらに他なりません。実際のさくらも枝垂れにソメイヨシノに山桜と、様々な表情を楽しめますが、絵画においてもまた同様、まさにお花見気分で味わうことが出来ました。
展示冒頭を飾るのは、数あるさくらの日本画の中でも人気のある土牛の「醍醐」です。

奥村土牛「醍醐」1972年 山種美術館
明るいピンク色のさくらが画面いっぱい、それこそ溢れんばかりに咲き誇っていますが、その華やかなさくら色にはちょっとした仕掛けがあります。
というのも土牛は胡粉とともに、虫の体液を綿に浸した『えんじわた』と呼ばれる特殊な顔料を用いているそうです。そうすることではんなりとした独特の質感を生み出すことが出来るとのことでした。
また絵具といえば魁夷の「春静」にも工夫があります。山のうちやや陰った部分は、絵具をフライパンで焼いて黒を表したのだそうです。深みのある色味がまさかそうした技術で出来ているとは知りませんでした。

右:橋本明治「朝陽桜」1970年 山種美術館
デコラティブな様相が一際目を引きます。橋本明治の「朝陽桜」の花びらは工芸的味わいと言えるのではないでしょうか。なおこの作品とほぼ同じ作品が皇居に飾られているそうですが、それと同じものを描いて欲しいと山崎種二が直接、橋本へ依頼したことから、こうして美術館に収蔵されることになったそうです。まさに爛漫、堂々としたさくらでした。

右:松岡映丘「春光春衣」1917年 山種美術館
色艶に眩しいのが松岡映丘の「春光春衣」です。吹き付ける風によって舞うさくらの花びらの表現は躍動感に満ちあふれています。それに上部に散る金箔も効果的ではないでしょうか。また斜め上からのぞき込むという、復古大和絵ならぬ絵巻物風の構図も印象に残りました。

川合玉堂「春風春水」1940年 山種美術館 他
玉堂の掛軸画が6点ほどまとめて出ています。見渡す限りのソメイヨシノも素晴らしいかもしれませんが、こうした山間や農村に数本だけ咲くさくらも一興ではないでしょうか。
拡張された広尾の展示スペースです。三番町時代ではかなわなかった作品も出ています。

冨田溪仙「嵐山の春」1919年 山種美術館
その一つが冨田溪仙の屏風、「嵐山の春」です。一時、修復も兼ねていたということで、三番町の前、茅場町時代以来、約15年ぶりの公開となりました。
順路に沿っての第二室では、大好きな速水御舟の「春の宵」と「夜桜」に強く惹かれます。
実は私が初めて山種美術館へ行ったのが2005年の「さくら展」であり、それが切っ掛けで日本画を鑑賞するようになりましたが、その時に出会ったのがこの「夜桜」でした。

左:速水御舟「春の宵」1934年、右:速水御舟「夜桜」1928年 山種美術館
また「春の宵」は私の最も好きな御舟作かもしれません。散り際の美学云々という言葉もありますが、この作品を前にすると、いつもその儚さに言葉を失ってしまいます。思わずぐっとこみ上げるものを感じました。
なお今回はお馴染みの美術ブログ「青い日記帳」主催による特別鑑賞会に参加しました。通常の閉館後、100名ほどでの借り切り観覧、しかも山崎館長のトーク付きという贅沢な企画です。

さくら展ミュージアムグッズ
青い日記帳のTakさん、また山種美術館のスタッフの方々、そして山崎館長に改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
関東のさくらは早くも散ってしまいましたが、山種美術館では5月下旬前まで『見頃』です。

*地元名所のしだれ桜。樹齢400年とも言われるそうです。満開時に見に行きました。
4年ぶりのリバイバルさくら展、お見逃しなきようご注意下さい。
5月20日まで開催されています。
「桜・さくら・SAKURA 2012」 山種美術館
会期:3月31日(土)~5月20日(日)
休館:月曜日(但し4/30、5/1は開館)
時間:10:00~17:00
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。
注)写真は「青い日記帳 特別鑑賞会」時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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